表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/82

22.一年たったんだが・・・

お待たせいたしました!

お待たせした割に短いものとなってしまいましたが22話になります。


 イオの真実を知ってから早一年、初夏ゆえに徐々に強さを増していく日差しの中、何時ものように庭で日課の筋トレをこなすフラッド。



「ふっ!ふっ!30!!・・・ふぁ~」

(ここらでやめとくか~)



 順番として最後に来る背筋を済ませたフラッドは、その過程で汗でべたつく身体を洗うため井戸水を汲む。



「ぷはぁっ!くぅぅ~きもちいぃ~」



 勢いよく頭から被った水はフラッドの身体、薄っすらと割れた腹筋や胸筋、肩甲骨周りの筋肉の凹凸に沿って汗と共に流れ落ちる。

 日々の鍛錬の賜物か、フラッドのソレは同年代の他の子どもと比べ随分と逞しく引き締まったものとなっていたが、その代償とでもいうのか身長の伸びはあまり芳しいものとは言えなかった。

 水を浴び、べたつきから解放された爽快感に浸るフラッドへ、敷地の内と外とを分ける境界である柵越しに声がかかる。



「おはよ~!今日の筋トレはもう終わったの?」



 フラッドは何時ものように自分にかけられた声に、声の主に確証を持ちながら返事をしようと視線を向けると、そこには儚さを伴う華奢な容姿はそのままに、幼児から少女へと順調に成長しているポーラの姿があった。



「おはようポーラちゃん。

 ちょうど今終わって、水浴びをしてるところ。

 すぐに着替えてくるから、ちょっと待っててくれるかな」


「わかった、待ってるね。

 そんなに急がなくてもいいよ?

 ・・・でも、その、なるべく早く来てくれると嬉しいな」



 自分が来たと知るや否や、待たせないよう「すぐ」と答え急いで着替えに戻ろうとするフラッドに、嬉しさに急がなくてもよいと笑顔で伝えるポーラだが、その言葉とは裏腹に、一瞬でも多く一緒に居たいという気持ち故に、矛盾するとは知りながらも急かしてしまう。

 その表情は照れに要るものなのか、恥ずかしそうに頬を仄かな赤色に染めながらのものだった。



「・・・・・」

(いつ見ても可愛えぇ!マジ天使だうちの幼馴染は!)



 思わずポーラに見惚れてしまうフラッドだったが、ポーラがジッと黙ったまま見つめるフラッドに怪訝な顔をすると、我に返り慌てたように家に戻る。



「ハッ!じゃあ、着替えてくるね」

(いかんいかん、サッサと着替えんと!)



 慌てて家に戻るフラッドの背に、ポーラは笑みを零した。




 フラッドが着替えに戻ってから数分、言ったことを守るのと、この一年の間でポーラへの好きと言う感情が確かなものとなったこともあり、フラッドはすぐに戻ってきた。

 自身の思い人が約束通りすぐに戻ってきたことでポーラの口元は再度綻ぶ。



「待たせちゃってごめんね」


「ううん。すぐに戻ってきてくれたから大丈夫」


「そっか、じゃあザック達のところに行こう!」



 そんな彼女の表情にまた見惚れそうになるのをグッと堪え、そのことに気付かれないようにいつもの場所へ行こうと促したフラッドは、彼女の手を取りその場所へ向かう。

 ここ最近、行うようになったその行為に、慣れてきたとはいえ嬉しさを隠せないポーラは頬を朱に染めながら、引かれるままについていく。



「そういえば、今日からザック達は冒険者見習いになったんだっけ?」


「・・・、そうだね。

 三人とも夢に近づけたって喜んでたもん!

 でも、皆で遊べる時間減っちゃうよね?」



 六歳になり、ザック達が冒険者の下積み期間に当たる冒険者見習いになった話題を振ってきたフラッドに、ポーラは記憶を辿るのに少し間を置きつつも、それを思い出し話題を繋げていく。


 フラッドの言った冒険者見習いとは、冒険者になろうとギルドの門扉を叩いた6歳から10歳までの子供たちに与えられる名称で、主に探し物やお使い等の危険性の少ない簡単な依頼のみ受注できる。

 これは、冒険者に憧れた子供たちが無駄に命を散らさないための措置であると共に、数多寄せられた依頼を確実に消化するためと言ったギルドの思惑もあった。

 何故6歳から10歳までかと言うと、それ未満だとそもそも依頼完遂能力がないと判断されていること、10歳を超えると膂力などの身体・意思・判断能力が一般的な依頼をこなすにあたって必要とされる最低水準を満たす程度には付いてくるからである。

 その為、正式に冒険者になるのは11歳からであり、それまでの冒険者見習いは厳密には冒険者ではなく子供のお手伝いなのだが、ただの手伝いだというと無茶無謀を行うものが出るため、その期間内の者を暫定的に冒険者見習いと呼称することとなり、それと共に仮のギルドカードが手渡される。

 冒険者見習いの者が11歳を迎えた際は、今一度確認が行われそれに同意することで正式な冒険者となる。

 この際、見習い期間の依頼達成数によっては冒険者に与えられるランクが初期のFではなくEで始められる場合もあるため、ある意味で見習いとは正しい表現とも言える。

 また、この見習い制度は冒険者ギルドだけではなく、その他の商業ギルドや鍛冶ギルドなどさまざまなギルドで採用されている。


 そんな冒険者見習いとなったザック達の話をしていた二人に人混みから声がかかる。



「フラッド~!っとポーラちゃん、おはよう!」



 そう言って人混みから飛び出してきたのは、黒猫の獣人であるイオだった。

 一年たった今でも変わらず体の線は細く、とても男の子な体ではないが、その身長はフラッドよりも頭一つ分大きくなっていた。



「おはよう、イオ。

 その身長少し分けてくれないかな?」


「イオ君おはよう」


「背なんかまだまだ伸びるんだから大丈夫だよ。

 むしろフラッドと同じ視点で居られないのが残n・・・

 あの、ポーラちゃん?怖いから睨むのをやめて欲しいんだけど」



 イオの口から出た、乙女な発言にポーラが親の仇でも見たかのような形相でイオを睨みつけると、それに気づいたイオは青い顔をしながらポーラにやめるよう懇願する。

 そんな二人の様子を見て、それまでイオの言葉に神妙な顔をしていたフラッドが困った顔でポーラを注意すると、案の定彼女からは阿修羅ではないが、いじけたように頬を膨らませた顔で罵詈雑言が飛んできた。

 フラッドがイオと協力して彼女の機嫌を直した頃には、既に冒険者ギルドに到着していた。



「おせぇぞ!

 よし、全員揃ったし早速探しに行くぞ」



 ギルドに到着すると同時に三人を出迎えたその声は、やる気にメラメラと瞳を燃やすザックだった。

 彼もこの一年で成長しており、ガキ大将然と言った容姿は更に逞しいものとなっており、その身長も相応に伸びていた。



「ザック、なんの説明もなしにいきなり探しに行くって言っても、フラッド達は解らないと思うんだけど?

 ・・・と言っても無駄なんだろうけど」



 と言ったエルロスも、声と見た目のギャップに誰しも一度は驚いた某サーヴァントな見た目はそのままに身長が伸びたものだった。

 エルロスは、ハァと軽くため息をつくと自分たちの受注した依頼内容について説明し始める。



「まずはおはよう。

 早速で悪いんだけど、このバカ(ザック)の言った探し物について説明するね?

 まず、場所についてなんだけど――」



 エルロスの説明が始まったタイミングでふと今まで隣に居たポーラと、ザック達と一緒にローナが居ないことに気付いたフラッドが周りを見回すと建物の影になっている場所で、二人はなにやら話しているのを見つける。



(あいつら何やってんだ?

 ローナはともかく、ポーラは聞かないと解らんだろ。

 ってうぉい!?)



 フラッドが呆れ交じりに二人の様子を眺めていると、ポーラはその年齢にしては発育の良すぎるほどに成長したローナの胸を般若の様相で揉みしだき始めた。

 一瞬状況が分からず、口を開け目を見開いていたフラッドだったが、ポーラの手の動きに合わせて変幻自在に形を変えるローナの胸と、最初は困った顔を浮かべていたのが、何かを堪えるように口をつぐみ頬を上気させるローナの表情に、フラッドのソレは抑えようのない猛りを覚え硬くなる。

 自分が説明しているのに、よそ見をして中腰になるフラッドにエルロスは一言物申す。



「フラッド?ちゃんと聞いてるかい?

 それになんでそんな変な体勢に・・・ッ!?」



 エルロスの言葉が途中で切れたことに疑問を感じたザックとイオは、二人が見つめるその先へと目を向けると、同様に絶句し中腰になる。

 ローナの胸はそれほどの脅威であったのだ。



「ふんっ!」


「もぉ~ポーラ~いきなりなにするの~なんだか変な感じだよ~」



 どこか満足したような様子なポーラと、ポーラに胸を揉みしだかれ未だ呼吸が荒いローナが男衆の元へ戻ると、そこにはやけに白々しい空気を漂わせた男たちが目を泳がせながら胡坐をかいていた。



「みんな~どうして座ってるの~?」



「「「「・・・」」」」

((((どうしたもこうも、お前の胸が凶悪すぎるんだよ!))))



 座り込む男たちに疑問をぶつけるローナに対し、フラッド達は皆同様のツッコミを胸の中で零す。

 ただ一人その理由を理解したポーラはローナに鋭い一瞥を送ると、フラッド達を冷ややかな目で見た。



「え、えと二人も戻ったみたいだし説明を続けるね?」


「「「おう」」」


「座ってると~汚れちゃうから~立ったほうが良いよ~?」


「「「「それはできない(できねぇ)!」」」」



 自分たちが見ていたことと、それによって何が起きているかを知られたくない男たちの声は綺麗にそろっていた。

 そのことでポーラの視線がより強くなったのは言うまでもない。


 お読みいただきありがとうございます。

 前話の後書きで告知させていただいていたとは言え、所用で投稿が遅くなり申し訳ございません!

 次話以降に関しては今回の様に所用が入らない限りはいつものように週一のペースで投稿させていただきますのであしからず。

 これまた同様に誤字脱字等ご指摘いただいたものの修正も行っていきますので引き続きよろしくお願いいたします。


 さて次話の投稿日ですが6/2を予定しております。

 万が一、急用や急病などで投稿が遅れる場合は活動報告より告知をさせていただきますのでご理解のほどよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ