21.現実を突きつけられたんだが・・・
今回いつもに比べるとかなり長文になっています。
グダグダとしたところが多いかと思われますが、何卒ご容赦ください。
日課の瞑想と筋トレを終え、筋トレとここ最近の陽気からかいた汗を庭に併設されている井戸から汲んだ水で汗を流すフラッド。
本来ならベタベタとした感触から解放されると共に、火照った体が冷める独特の感覚から爽快感を感じるところであるが、フラッドの口からは小さくないため息が漏れていた。
「はぁぁ~」
このため息は三日前にイオと出会ったその後の水浴びが原因だった。
◇
五人から六人に増えた面々はザックに引きずられるように水浴びのできる場所へと歩を進めていた。
この世界では未だ公衆浴場というものが存在せず、また体を洗うのに十分なほどの大量のお湯を沸かすにはとにかく金がかかる。
その為、それができるのは貴族や豪商、王族など、一部の資産家であって、一般の人々は川や井戸などから水を汲み、それを使って汚れを流す、余裕があれば桶一杯のお湯を沸かしそこに浸した布で体を拭くといったことが基本となっていた。
子供六人の小遣い程度ではお湯を買うことは出来ないための水浴びであった。
「ザック、水浴びするのはわかったけど、何処に向かってるんだ?」
「ん?そりゃ水浴びのできるところだろ」
「そうなんだけどさ、僕もポーラも基本的に家で水浴びしてるから、それ以外ってなると何処にあるのかわからないんだ」
普段、庭に簡易的な仕切り板を立てそこで水浴びをしているフラッドが行き先を尋ねると、ザック達三人衆に加えイオが信じられないものを見たかのように口をあんぐりと開け立ち止まる。
突然先頭が止まったため、危うくぶつかりそうになるのを踏みとどまるフラッドとポーラ。
急に止まるなと抗議しようとするも、ザック達の驚きと呆れがないまぜになった顔にそれもやめる。
「なんで、またそんな顔してるのかな?」
「ザックこれはあれだね」
「そうだな」
「ポーラも~だね~」
「フラッド君にポーラちゃんって・・・」
「いや、だからさ――」
「水浴び広場も知らねぇのかよ。
お前等、世間知らずってやつだろ?」
ザックが言い放った言葉にポカンとする二人。
しばらく間をおいて、何を指して世間知らずと言われたのかを理解した二人は反論しようと他の面々を見回すと、誰もがザックの言葉を肯定するように小さく頷いていたり、苦笑いを浮かべていたりした。
事実を言われたとはいえ、普段の言動がアレなザックに言われたことにショックを覚えた二人はついそれがポロッと口に出てしまう。
「「まさかザックに言われるとは」」
それを聞いたザックは、二人の自分に対する見方に憤りを覚える。
「お前らなぁ~、俺だって怒るぞ!
それに俺はこんななりでもバカじゃねぇつもりだ!」
「つもりって、とにかく落ち着いてザック」
「エルロスお前もか!まさかローナも・・・」
宥めようとしたエルロスだったが、直前の言葉で自分がターゲッティングされ、やってしまったと苦笑いを浮かべる。
一方飛び火したはずのローナは途中から話を聞いていなかったのか、野花に留まる蝶を眺めニコニコしており、今日知り合ったばかりでこれがいつものやり取りであることが分からないイオはオロオロとしていた。
それを目ざとく見つけたポーラがイオも困ってるし早く行こうとと告げると、ザックはそもそもお前らのせいだろと声高に叫んだ。
なんだかんだとしばらく歩くと、ようやく水浴び広場に到着する。
この町に水浴び広場と呼ばれる場所は二つあり、一つが第二平民街、もう一つは職人街に設けられている。
今回六人が来ているのは平民街の水浴び広場で、基本的には第一から第三に住まう平民が使っている。
この広場、水浴びと名がついている通り石造りの広場の近くに水が引いてあり、そこから汲んで体を洗えるようになっている。
引かれている水が飲料水などとして使われるメインの水路とは別に引いてあることから、上下水の管理はしっかりとしていることが窺える。
そういったことを気にせず使えるため老若男女、汚れの度合いを問わず多くの者が利用しているのだが、フラッドはある一点だけが気になってしまう。
それは、男女で分ける仕切りなどがない点である。
前世の記憶を持っていることや、今世でも水浴びの際は仕切り板を設置していたことから男女で分けるのは当たり前だと思っていたフラッドだったが、目の前にある広場にはそういったものが一切なく、年端も行かない子供からよぼよぼとした老人など周りの目を気にすることなく体を洗っている。
中には自前で用意したのか仕切り板を置いている者もいるがそれは少数である。
そんな状況を見て、フラッドは確認の意味を込めてザックへと問う。
「ねぇザック、ここで体洗うんだよね?
そのさ、仕切り板の貸し出しとかないのかな?」
「んあ?たりめぇよ。
仕切りに関しては欲しい奴は自分で持ってくんだよ。
なんだ?裸見られんの恥ずかしいのか?」
こちらを煽るようにニヤニヤとするザックにイラっとしたフラッドは軽く舌打ちをすると素直に答える。
「チッ。抵抗があるんだよ見られるのも見えるのも」
「ははっ!んなもん気にしなきゃいいじゃねぇか」
「気にしなきゃってなぁ・・・仮にできたとしても、ローナやポーラ、それにイオも見られるの嫌だろ?」
「どうなんだ?」
フラッドとザックの問いに、ローナとイオは気にした風もなく答える。
「わたしは~気にしないよ~。
でも~じ~っと見るのは~ダメだよ~?」
「僕も平気だよ」
それに対してポーラは恥ずかしそうにもじもじしながらフラッドの方を見る。
「わたしはフラッド君にならいっぱい見られても平気だよ?
ザック君たちは・・・ね?」
言外に含まれた意味に顔を青くしながら高速で頷くザックとエルロスであったが、何故かイオまで同様に頷いていた。
「でもフラッド、僕にだけ聞いてこないってことは、僕はザックと同じで気にしない人だと思われてるってことかな?」
「ん?だってエルロス、男だよね?」
「いやそうだけど、ザックと同じ扱いって…心外だよ」
「俺の方が心外だ!」
ザックのツッコミに笑うフラッド達だったが、イオは少し困った顔で呟く。
「男って・・・」
水浴びをするため着替える6人だが、フラッドは自身の理性を抑えるため、ザックとエルロスと何故かイオはポーラに睨まれないため女性陣の方に背を向けていた。
一糸まとわぬ状態になって、自分とザックの傷を治していないことを思い出したフラッドはザックを呼ぶと魔句を唱えた。
「ザック!そういえば傷とか治してなかったから治すね」
「別に直さなくてもいいと思うけどな~」
「傷口が膿んだりしたら大変だからフラッドに治してもらいなよ」
「エルロスも気にし過ぎだぞ?
こんなんいつもと同じだろ」
「魔力も余裕あるし受けてよ。
それにお母さんに怒られるの嫌なんだろ?」
「そうだった!このままじゃ母ちゃんにぶん殴られる!
フラッド頼むわ!」
「はいはい、ケア ダメージ」
フラッドが母親に叱られることを想像して顔を青くするザックに魔句を唱えると、イオの時同様擦り傷や痣などがじわじわと治っていく。
「おしっ!これで母ちゃんに怒られずに済む!」
「魔句っていつ見てもすごいね。
イオの時もそうだけど、ザックの傷も治るんだから。
これはフラッドの腕がいいのもあるのかな?」
傷が消えたことに喜ぶザックを見て、成功したと安堵したフラッドはエルロスの称賛を照れくさく感じながら続けて自分にも魔句を掛ける。
つつがなく傷を治したフラッドは服を洗うつもりが服を使って大量の水をエルロスにかけて遊んでいるザック達の元へ行くと体を洗い始める。
ある程度汚れを落としたフラッドは何気なく周りを見回すと、水遊びに興じる子供たちや体を拭きながら談笑する老人を除き仕切りがないながらも男女で洗う場所が分かれていることに気付く。
(仕切りがないからアレかなとは思っていたけど、皆意識的に分けてるんだな)
特に定められたわけではないのに、別れている状況にこれが暗黙の了解と言うものだなと思うフラッドだったが、ある一点で目が留まる。
その先には10代後半ぐらいの女性が居た。
彼女もこの広場で水浴びをしている者の一人に過ぎないのだが、彼女のスタイルは他の有象無象とは異なっていた。
それはEカップぐらいありそうなほどの大きな胸と括れた腰、それに対抗するかのようにムッチリと肉付きの良い尻。
そんな彼女の容姿を見たフラッドのソレはタガが外れたようにギンギンと痛いぐらいにいきり立ってしまう。
もしこんな状態を誰かに見られでもしたらと、咄嗟に手で隠すフラッドだったが、視線を感じたのであろうその原因となった彼女が一連の流れを見ていた。
彼女は特に怒った様子もなく、艶のあるからかうような笑顔を向けると、着替えの為か川から上がっていった。
見られたという羞恥心と良いものが見れたという興奮から、顔を茹蛸のように真っ赤にしながらも、その鼻の下は盛大に伸びていた。
(あのお姉さんめっちゃエロかった!未だに治まらない!
あの胸なんだよ!凶器以外の何物でもないぞ!
他の男連中も絶対盗み見てる!
落ち着け俺!沈まれリビドー!)
どうにかして、それを治めようとするフラッドだったがその思いは後ろから勢いよくかけられた水と共に叶うのだった。
「ぶべっ!?」
いきなりかけられた水に何事かと振り向くと、そこには鬼や悪魔でも裸足で逃げ出しそうな顔をしたポーラがこちらを見据えていた。
「フラッド君?」
「はい!」
「ナニを見てたのかな?」
「えっとですね、その・・・景色が綺麗だなぁとおもいまして・・・」チラ
「フラッド君のバカッ!変態!」
一部始終を目撃し、既に堪忍袋の緒が切れていたポーラであったが、フラッドが言い淀んだことで更に油が注がれたのか、爆発するようにフラッドを罵倒する。
その声の大きさに今まで遊んでいた四人や周りの人々がその手を止めて注目してくる。
そして、状況を理解するとニヤニヤとした笑みを浮かべるたり興味をなくし作業に戻ったり、忌々しそうに睨みつけたりとそれぞれの反応をする。
それまで遊んでいた四人は近づくと、ザックとエルロスは
フラッドの肩に手を置いて
「「やらかしたな」」
と告げた。
ポーラの様相を見た時点でフラッドのソレは治まっていたが、怒ったポーラに対する恐怖と、この現場を多くの人間に見られた羞恥心に交互に顔を青ざめたり真っ赤にしたりとそのことに気付かない。
フラッドの懸命な謝罪とローナの宥めによってどうにか落ち着いたポーラに安堵の息をもらす五人。
安堵したことで、それまで頭に入ってこなかったポーラやローナ、イオの一糸まとわぬ姿にまた情欲というなの衝動が込み上げてくるフラッド。
イオは尻尾を使って局部を隠しており、それが逆に見えそうで見えないというもどかしさに興奮を誘っていた。
(さっきのお姉さんならまだわかるが、これでなるのはマズい!
いくら俺がロリコンだったという事実を知ったとはいえ、こいつ等で元気になってたらなんかダメだろ)
目の前に並ぶ少女否、幼女たちの裸に悶々とするフラッドを他所に、ザックは器用に局部を隠すイオに対して突飛な行動に出る。
「なんだ?イオも見られんのが恥ずかしいのかよ!」
「えっと、その、恥ずかしいわけじゃ…」
「なら尻尾どかせよ!それっ」
そう言うとザックは尻尾をどかそうとイオに飛び掛かる。
それを獣人ならではの運動神経で躱すとイオは猫の獣人だけあって警戒した猫のように毛を逆立てる。
「いきなり飛び掛かって、なにするつもりなの!」
「いや、恥ずかしくないのに隠すってことは変な形してんのかと思ってな」
「お前何してんの!?イオ嫌がってるぞ」
ザックの行動にすかさず注意をするフラッドにイオは神を見たかのような表情になる。
「フラッドは気になんねぇのか?」
「いや・・・」
(そりゃ気になるわ!こんな美少女のなんてみたいに決まってる!
だが、子供同士とは言え無理やり見んのはおかしいだろ!)
しかしフラッドが言葉を濁すと、残念な顔をするイオ。
そして、ポーラは何故か心配するような表情でフラッドを見ていた。
そうこうしていると、再びザックが飛び掛かり尻尾を掴もうとする。
それを宙がえりの要領で躱すイオをみて、見ていた四人はそんな動きが出来るなら虐められてた時も使えと、思ってしまった。
それを10回ほど繰り返していると、体力に限界が来たのかイオの動きが鈍くなる。
その隙を逃すまいと今まで以上に早く飛び掛かったザックは、イオの尻尾を掴むと勢いよくそれを払いのけた。
(見ちゃいけないとはわかってはいるけど、しょうがないよな?
見えちゃうんだから)
自分だ自分に言い訳をしながら、今まで尻尾で隠されていた部位へ期待と興奮の混ざった視線を向けると―――
そこには男の象徴ともいえる象が鎮座していた。
(ん?)
何かの見間違いかと思いもう一度注視するも現実は変わらず、ただただそこには象が鎮座している。
しいて違いを言うならば、子供にしては大きい、ただその一言である。
(何故だ!?何故貴様がそこに居る!
お前はそこに居ちゃならないだろ!
なんで、どうして・・・こんなまごうことなき美少女なのに男にしかついていないジョイスティックがついているんだ!
どこに需要が・・・そうか、コレが男の娘と言うやつか…てか今の俺よりもでかいんじゃないかアレ!?)
認めたくない現実に夢も希望も砕かれ、傷心するフラッドは、虚ろな瞳でイオのソレを見つめる。
どかした張本人はその大きさに驚き囃し立てる。
「なんだよ!めっちゃでかいじゃん!
隠してたから小さいの気にしてんのかと思ってたぜ。
これなら隠す必要ねぇじゃねぇか!
むしろ隠さないほうがいいだろ、父ちゃん言ってたぜ?
でかい方が女は喜ぶって!」
大きな声で自分の局部が大きいと言われ羞恥で顔を赤く染めるイオだったが、フラッドの視線が自分のソレへと注がれていることに気付き、まるで乙女もかくやと言わんばかりに恥じらう。
「フラッド、そんなに見ないで!は、恥ずかしぃ・・・」
半ば、現実逃避をしていたフラッドはその声で我に返るも、やはり知ってしまった事実に頭が行き、返答も暗いものとなる。
「あぁ・・・ごめん・・・」
(なんなんだよその反応は!
そんな意中の相手に裸を見られた女子みたいに・・・変な扉開いちまうだろ!?)
そんなフラッドの反応を自分のモノと比較して落ち込んでいると判断した面々はそれぞれに慰めの言葉を贈る。
「フラッド、俺たちはまだ子供なんだぜ?
大人になるころにはでかくなるから気にするなよ」
「ザックの言う通りだよ。今は小さいかもしれないけど、大人になればきっと、ね?」
(んな慰め要らねぇよ!まるで俺のサムが小さいみたいn…
もしかして小さいのか!?)
「いや、そういうことじゃ――」
まったくもって見当違いな慰めを受け、否定しようとしたフラッドだったが、言い切る前にポーラが慈愛に満ちた微笑みとともに語り掛ける。
「大丈夫、フラッド君のは大きいよ?
それに私はどんな大きさでも気にしないから」
そう優しく抱きしめられながら言われた言葉に、フラッドは男としての尊厳を完膚なきまでに叩き壊されたのだった。
「・・・ありがとうポーラちゃん」
(ははっ・・・俺のって小さいんだな・・・死にてぇ)
◇
と言った出来事から、フラッドは未だ立ち直れず暗い空気を纏っていた。
次の日にポーラと会った際、いつもの喜びと一緒に慰めるような優しさが笑顔に同居していたこともそれに拍車をかけることとなっていた。
「フラッド?いつまでも溜息ばっかりついてないで早く行ってきなさい?
ポーラちゃん待ってるわよ」
事情を知らないフラーナの催促に力なく返事をすると、フラッドはいつものように扉をくぐる。
「――わかったよ・・・行ってきます」
今話もお読みいただきありがとうございます!
前書きでも触れております通り今回長文&グダグダで申し訳ありません。
今後はなるべく簡潔にわかりやすく書けるよう努力いたしますので、温かく見守っていただければと・・・
誤字脱字等ご指摘いただいたものの修正も行っていきますので引き続きよろしくお願いいたします。
さて、次話についてですが、投稿者の諸事情により5/26を予定しています。
稚拙ながらも毎週読みに来ていただいている皆様には大変申し訳ありませんが、ご理解のほどよろしくお願いします。




