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20 友人が増えたんだが・・・

本話で20話になります!

これも今まで読んでくださった皆様方があってのことだと思っています!

稚拙な文章ではありますが、今後とも続けていきますのでどうぞよろしくお願いいたします。



「待って!!」



 その一言に足を止めたフラッドは、一拍間を置くと期待半分疑い半分といった表情で振り返る。



「なにかな?

 その、これ以上君にしてあげられることはないと思うんだけど?

 もしかして、友達になってくれるとか?」

(これが物語とかならこのまま友達になって、未来のハーレム要員ゲットってところだけど、現実はそううまくいかないだろうな~)


「うっ・・・えっと、その・・・ありがとう。

 僕の名前はイオっていうんだ」


「イオちゃんね。

 さっきも言ったけど僕はフラッド、名前を教えてくれたってことは友達になってくれるってことで良いのかな?」

(これは来たぞ!僕っ子猫耳美少女!上手くやるんだ俺!)


「うん・・・ちゃん?」



 名前を教えてくれたことで、友達になってくれると判断したフラッドはこの先のことを妄想しており、イオの肯定の後に続く呟きに気付かない。



「でも、なんで怪我、治してくれたの?」



 自身が拒絶したにも関わらず怪我を治される。

 そんなことをされれば誰しもが思うその疑問を、今まで虐げられてきた弊害か癖のようにフラッドの顔色を窺いながら訪ねるイオに、フラッドは正直に答えたほうが良いのだろうかと困った顔浮かべる。



(ここは下心を赤裸々に話した方がイオちゃんも納得してくれるか?綺麗事並べても疑惑しか持たれんだろうし…)

「嫌がられたとはいえ、助けた相手が傷だらけなのは嫌って言うのがあるけど、ここで怪我治したら少しは信じて友達になってくれるかもって思ったんだ。

 …こんな美少女とは是非お近づきになりたいから」 ボソッ


「・・・」



 考えた末に建前と本音を話すフラッドに対し、開いた口が塞がらないといった様相で固まるイオは先ほどのフラッドと同じように最後の呟きに気付かない。

 しかし、後ろで話を聞いていた内の一人、ポーラは耳聡くそれを拾い、後ろから刺さんと言わんばかりの表情でフラッドを睨みつけていた。



「で、でも獣人である僕にわざわざ魔句を使うだなんて…

 普通ならさっきの奴らみたいに虐めるか、他の人たちみたいに居ないみたいな扱いをするもんだよ!」



 イオの言うこの世界では当たり前と言える獣人と人間の関係について、年長組であるザック達はバツの悪そうな顔を浮かべるが、両親がそういったことに頓着しないため同じく気にしていないポーラと同じような両親と前世の記憶を持つフラッドはそれがどうしたといった体で話を聞く。



「別に他人がどうこう何て関係ないと思うけど?

 僕が助けたいって思ったら、助ける。

 それだけだよ。

 第一、僕もイオちゃんみたいにかわいい子じゃなかったら此処までしないよ。

 それに、魔句だって使えるから使っただけで、特別なもんじゃないでしょ?」

(イオちゃんみたいな美少女じゃなきゃ、衛兵呼んで終わりだったろうしな)



 当たり前の事のように言い放つフラッドに対し、イオは珍しい生き物でも見つけたかのような顔でポカンとし、ポーラを除く三人も信じられないものを見たかのように目を見開く。

 ポーラはポーラでフラッドの放ったかわいいという言葉に反応し、再度睨みながらも同感と言った様子で頻りに頷く。



「・・・君は変わった人だね」


「確かにフラッドは変わった人だね。

 獣人に対してもそうだけど、魔句についても使える人って少ないんだよ?それを使えるからって・・・」



 ここで今まで空気だった一人、エルロスがフラッドの考え方について語ると、フラッドは獣人については良いとして、魔句についてはそんなに珍しいものなのか?と考える。



「獣人に対してはまあ、接し方とか考え方とか異質だとは自覚しているけど、魔句については普通だろ?

 僕の父さんも母さんも普通に使ってるし、それこそポーラのお母さんだって使ってるよ?」


「フラッドの親御さんは凄いんだね。

 普通はそうポンポンと使えないものだよ?

 もしかして、フラッドもポーラちゃんもいいとこの生まれだったりするのかな?」



 自分の知る魔句師は貴族や名家、有力な家柄の者が多いという常識からそう訊ねるエルロスだが、その常識を知らないフラッドは何故そのようなことを尋ねられたのかと疑問に思いつつも家族のことを思い浮かべる。



「いいとこかどうかは解らないけど、少なくとも家は姓もない平民の家庭だよ?

 父さんは領主様に仕えてるって言ってたけど、文官か何かだと思う」


「領主様に仕えてるのか・・・」



 それっきり何かを考え始めたのかだんまりしたエルロスをそのままに、フラッドはイオに向き直すと右手を差し出す。



「エルロスも黙っちゃったし・・・

 これからよろしくね、イオちゃん」


「あっ!うん、よろしく」



 差し出された右手に我に返ったイオは、咄嗟に返事をすると握手を交わす。

 そして、フラッドがそろそろ手を解こうとしたとき、イオが少し不満そうに口を開く。



「その、イオちゃんって言うのやめてくれるかな?」


「え?どうして?」

(これはしょっぱなからやらかしたやつか?)


「可愛いとかちゃんとか言われるのあまり嬉しくないから」


「なら、何て呼べばいいかな?」


「普通にイオでいいよ」


(呼び捨てOKいただきました!)

「それじゃ、改めてよろしくイオ」



 そう言いフラッドが笑顔を浮かべると、こういうことに慣れていないのかぎこちない笑顔を浮かべながら頷くイオ。

 ようやく話がまとまったといった段階でそれまで空気だった者たちが動き出す。



「もう~終わった~?」


「う――」


「んじゃ、汚れちまったし水浴びに行こうぜ!

 このまま帰ったら母ちゃんに怒られる!」



 喧嘩に因る、服や体の汚れを怒られると思い水浴びに誘うザックと眠そうなローナに呆れてしまうフラッド。

 握手を済ませた途端に行われたやり取りにどうしていいかたじろぐイオを見て、フラッドはそれぞれの紹介がまだだったことを思い出す。



「そういえば、皆の紹介がまだだったね。

 この五月蠅いのが――」


「おっ?自己紹介か?

 俺はザックな!」


「ザック!・・・はぁ、とりあえずコイツがザックね。

 それでホワホワしてる女の子がローナで、もう一人が

 うぉッ…ポーラさんや、なんでそんなにこっちを睨んでいるのかな?」

(怖いわ!一瞬般若か何かかと思ったぞ!)


「わからないならいい!フラッド君のバカ!」


「なんでいきなり罵倒されたんだろ?

 ゴホンッ――気を取り直してこの娘がポーラ。

 そしてさっき会話に入ってからだんまりしてるのがエルロス」


「よ、よろしく」



 若干名(ザックとポーラ)の勢いに気圧され、イオがおっかなびっくり挨拶をし、紹介が終わったのを確認するとザックは水浴びに行くぞと催促した。

お読みいただきありがとうございます

誤字・脱字等、ご指摘いただいたものに関しては極力修正していく予定ですのでよろしくお願いします。


次話は5/12を予定しています。

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