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2.俺の名前

 朝特有の、静謐で薄暗い中も優しく周囲を照らす朝日に、男は心地よく目を覚まし独り言ちた。



「あふぁ~・・・みにゃ」

(んん~~!よく寝た~

 腹もいっぱい、眠気もなし!

 少し気になる感触があるがまぁ…

 そして、近くには美人で優しいマイマザーが居られる!

 目覚めとしては良いほうだ!

 …しかしあのイケメン、もしかしなくても父親だったりするのか?)



 男の声に反応してか、一人の気配が近づき語り掛けた。



コツコツコツ


「*ら?**ッド、***めた**?

 **た**か*****よ?」クスリッ


「みゃっ!?」ビクッ

(えっ!?)


「*め**。*ック**せ***た*た**?」


コンコンッ ガチャッ


「フ*ー*、フ*ッド***は***?」


(噂をすればなんとやら、早速登場かい。

 ってそれよりもさっきから…)


「*ラッド、*****きた***よ。

 **た**と***が*た*よ」


コツコツコツッ


「フラッド、と*さ***?」


「あうぅ?うぁっぉ?」

(んん?フラッド?今、確かにそう言ったよな?)


「「*ォ!」」


「「*う()お**(あ*た)の**はフラッド()!」」


「んみゃっ!にゃへへへへ~!」

(やっぱりそうだ!なんて言っているかがわかってきたんだ!)





 この時を境に俺は、急速に言葉を覚えていった。

 その結果わかったことが何点かある。

 まずは、俺の今世での名前だ。〖フラッド〗ーこれが俺の名前だ。英語の〖flat〗(フラット)に発音やイントネーションが似ていることから、体のどこかしらが平らだからこんな名前なのでは?と考えてしまったが…まぁ、おそらく違うだろう。

 次は、あの二人の名前と俺を含めた関係性だ。

 俺が母親だと結論付けた彼女の名前は、〖フラーナ〗。花を連想させるその名前は、草原の様な清々しい若葉色の髪と青空の様に澄んだ碧い瞳をもち、雨上がりの百合の如く透き通るような白い肌の彼女にはピッタリだと感じた。

 また語り掛けてくる際に、自分のことを「お母さん」と言っていることから俺の結論に間違いはなかったことが証明された。

 あの父親と目されるイケメンの名前は、〖ガラッド〗。どこぞの厳格な騎士の様な名前とは裏腹に、本人はフラーナと同じ白い肌にチョコレートを軽く炙った様なこげ茶色の髪と海の底のような濃い碧い瞳をもつ優男なのだ。見た目と名前のギャップに少々面食らったのを覚えている。

 彼も母さん同様、語りかけてくる際に自分のことを「お父さん」と言っていることから、父親であることがわかった。

 そして、俺はこの二人の間の長男であると推測される。

 二人の会話に「初めての~」という言葉があることや、兄弟を示唆する言動がないことからそう推測した。まぁ、居たとしても特に問題はないだろう。

 俺が男かどうかの判断材料は言わずともわかるだろう?



「う゛うぅ~スンスン・・・あニャー!」

(ん゛ん~…喜びが勝って今の今まで忘れていたが、もう我慢できん!

 母さん、お願いしますッ!)


「あらっ?どうしたの?お腹がすいたの?」 ヨシヨシ


「うにゃ~!みにゃ~!あう゛ぅ゛」

(違うんだ母さん、腹が減ったんじゃない。

 もう一つのほうなんだ……うぅ

 ――俺は赤ん坊なのだから仕方がないことだ

 ・・・仕方がない・・こと・なんだ…)


「もしかして・・・」 プツッ プツッ

「ガラッド、新しいおしめ持ってきてくれる?」


「わかった」 バタンッ


「すぐ交換するからもう少しだけ待っててね?」


「あうぅ~…」

(うぅ…やっぱり恥ずかしい・・・

 父さん、母さん申し訳ない)


ガチャッ


「フラーナ、持ってきたよ」


「ありがとう。早速で悪いけど敷物を換えてもらえる?

 その間にフラッドのこと綺麗にするから」


「わかった。フラッドのことは任せるよ?

 どうにも私は赤ん坊の世話は苦手みたいだからね。

 君がいてくれて感謝しているよ、ありがとう」


「もう…突然どうしたの?

 子供の世話は妻である私の務めなんだから気にしないの!

 それに、私もあなたには感謝してるのよ?

 いつも力仕事ばかりお願いしちゃってるから…ありがとう」


「そんな!

 それこそ夫である私の務めなのだから、

 感謝されるようなものではないよ。

 でも、その気持ちは嬉しい・・・愛してるよフラーナ」



 突如として始まった両親のイチャつきに呆然としながらも、フラッドは内心で問いかける



(あの~・・・俺のこと忘れてない?)


「――私もよ、ガラッド 愛してる」



 そんなフラッドの内心を他所に、愛を語り顔を近づける二人に痺れを切らし声を挙げた。



「あバァッ!」

(お゛いッ!子供そっちのけで二人だけの空間作ってんじゃねぇ!)


「「ハッ!」」


「ごめんね?すぐ綺麗にしてあげるからもう少し待っててね?

 ほら、あなたも早く交換して!」ワタワタ


「あ、ああ。わかってるよ」


「ハブッ!」

(頼むぞ?まったく)


 俺の両親の夫婦仲は少々良すぎるようだ。悪いよりかは良いのだが、周りが見えなくなるのは少し考えものだ。

――はぁ……今後が少し不安なんだけど…


お読みいただきありがとうございます

前話に比べると少なく感じるかと思いますがご容赦のほど願います。

誤字・脱字等、ご指摘いただいたものに関しては極力修正していく予定ですのでよろしくお願いします。

次話は1/13投稿予定です。

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