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15.いい匂いがしたから行ってみたんだが・・・

土曜日に仕事が入ったため遅くなりました。すみません。

急ぎで仕上げたのでおかしなところがあるかと思いますがご容赦ください。


 フラッド達が服の購入を諦めてから十数分、二人はメイン通りの広場に居た。

 日はすでに真上差し掛かっており、サンサンと照り付けていた。

 時間としてはちょうど昼頃であるため、辺りは昼食を求めて行きかう人々とそれを呼び込む呼子の声で賑わっていた。

 そんな雑踏の中を幽鬼のようにヨロヨロと歩く二人は、活気あふれる周囲と相まって非常に近寄りがたい存在となっていた。



「服があんなに高いなんて・・・」



 服飾店での出来事を思い出したのか、ため息交じりにぼやくポーラに、フラッドは意外そうに声を掛ける。



「ポーラちゃん王都でそのワンピース買ってもらったって

 言ってたから、値段とか知っているものだと思ってたよ」


「うぅ・・・これ、欲しいって言ったら爺じが買ってくれたから、値段とかは・・・」


「そうだったんだ」



 その後の沈黙にどうにも嫌な、居心地の悪い感覚を覚える二人だったが、それも周囲から漂ってくる香りに霧散する。



「なんかいい匂いするね?お腹すいてきちゃった」


「確かにいい匂いだね。

 どこのお店から匂ってるのかな?」



 その香りは醤油を焦がしたような香ばしい食欲のそそる匂いで、午前中歩き続けた二人の腹は思わずその香りにぐぐぐぅと空腹を主張する。



「時間も丁度いいし、試しにこの匂いを出してるお店でご飯食べよっか」


「うん!」



 そう言うと、二人は辺りに漂う香りを追いながら歩き始める。

 香りを追い始めてしばらく、次第に焦がし醤油の様な匂いに脂独特の甘みのある匂いが混ざり始め、ついに特に濃い匂いの場所にたどり着く。

 そこは街のどこにでもあるような見た目の店で、看板には『肉火のシュティーア』と記載されていた。

 シュティーアはかなり繁盛しているのか、店外からでもガヤガヤとくぐもった喧騒が漏れ聞こえ、その入り口が開閉する度に先ほどから漂っている匂いよりも濃い匂いが運ばれてくる。

 中から漏れ聞こえる喧騒から、満席を予想し諦めようという気持ちと運ばれてくる匂いに待ってでも食べたいという気持ちとのあいだで葛藤するフラッドは、入店するべきか他の店に行くか逡巡した結果、ポーラの返答で決めようと思いどうするか尋ねる。



「中、混んでそうだけど、どうする?」


「そうだねーでも大丈夫だよ!

 入ってみよ?

 ずっと匂い嗅いでたから、すっごいお腹空いちゃった!」



 先程から嗅ぎ続けた匂いで空腹感が増したことをはにかみながら零したポーラは、フラッドの手を握り、急かすように店へと入っていく。


 店に入ると、今まで建物と言う障害物でくぐもって聞こえていた喧騒は大きく耳朶をうち、それらを生み出す利用客は濃厚な肉の香りをまき散らしながらジュウジュウとプレートで焼かれる肉厚のステーキに舌鼓を打っていた。



「すごい分厚いね?あんなに食べられるかな?」


「僕は無理だと思うから小さいのでも頼もうかな?」

(めっちゃ分厚いな!何百gあんだアレ?

 い〇なりステーキで800g食べたことあるが、それ以上だぞ!?)


「フラッド君で食べられないなら私も食べられないねっ!」



 利用客らが食べる肉の厚さに驚愕しながら店内を見回すと、給仕と思われる女性が近づいてくる。



「いらっしゃい!君たち二人だけかな?

 もし二人だけなら丁度空いたから案内するよ?

 そうじゃないと――」


「はい!私たちだけです!」


「――そかそか、それじゃ案内するから付いてきて」



 彼女に付いていくと窓際の席に案内される。

 懐からメニューを出し、本日のおすすめを話すと注文が決まったら呼んでねと言葉を残し、忙しそうにほかの席へと向かっていった。



「これ、なんて書いてあるかわからないよ~」



 話すことはできても、まだ読むことはできないポーラはオロオロとした表情でフラッドへ助けを求める。



(俺も全部読めるわけじゃないけど、文字の連なりからなんとかどんな料理かはわかるな。

 ・・・しかし、意外と安いな)

「うーん。

 お姉さんの言ってたオススメは、みんなが食べているやつだけど1650ロートするね。

 この肉片盛り合わせ焼きは450ロートだし、いいと思うよ?」


「本当?じゃあ私それにする!フラッド君は何にするの?」


「僕は~・・・ウーバンウィードの塩炒めでいいかな」


「えっ!?そんなのでいいの?」


「う、うん」

(露天商でブローチ買ったから、150ロートしか残ってないんだよなぁ

 必然的に120ロートと一番安いコイツしか食えないわけで・・・金が欲しい」


「わかった!それじゃ注文しよ!」



 すみませーんとポーラが周りに負けじと声を張ると、先ほど案内してくれた女性が注文を取りにやってくる。



「はーい。決まったかな?」


「えと、肉片・・・なんだっけ?」


「肉片盛り合わせ焼きとウーバンウィードの塩炒めだよ」


「はいはい、肉片盛りとウーバン塩炒めね!

 合計で570ロートね」



 差し出された手の意味が解らず、ポカンとした顔を浮かべるフラッドを他所にポーラは450ロートを取り出す。

 そこで漸く意味を理解したフラッドは、慌てて120ロートを取り出す。



(この世界、先払いなのね)


「はい丁度お預かり。

 すぐ持ってくるから待っててね!」



 女性が厨房に内容を伝えてから数分と経たずに運ばれてきたトレーには、予想以上に多く盛られた肉片というには少々大きい肉たちと、脂でテカテカとした光沢を帯びた豆苗ともやしが混ざったような植物が載っていた。



「ハイお待ち!肉片盛りとウーバン塩炒めね!

 食べ終わったらまとめて机の上に置いといてね」



 そう言うと足早に次の客へと向かって行った。



「ふぁぁぁ!大きいよ!多いよ!」


「確かに大きいし多いね。

 まあ、驚いててもしょうがないし食べよ?」


「「いただきます」」



 二人は合掌するとそれぞれが頼んだものを口に運ぶ。

 ポーラは肉を口に入れると、何かに驚いたように目を見開くとその後満足そうに目を細めしばし咀嚼した後に嚥下する。

 フラッドは、その青臭そうな見た目から一瞬間を置き、決意したようにウーバンウィードを口にすると、ポーラと同じように目を見開き何事もなかったかのように嚥下した。



(思ってたより青臭くないな。

 むしろこの独特の薄っすらとした苦みと塩味がマッチして割りと美味い!

 ビールが欲しい!完全につまみだなこれ)


ほれ(これ)ふふぉいおいひい(すごいおいしい)!」


「ポーラちゃん、食べながらだとなんて言っているか解らないよ」


「んくっ。これね、凄い美味しいよ!

 お肉柔らかいし、噛む度にね、ジュワーってなるの!」


「へぇ・・・」ゴクッ



 幸せそうにポーラが語る肉の感想に、思わず生唾を飲むフラッドは、そのことがバレないようにぞんざいな返事をしながらウーバンウィードを食べるが、どうしてもチラチラと肉を見てしまう。

 フラッドの視線に気付いたポーラはキョトンとした顔をすると、やさしい笑みを浮かべた。



「フラッド君、お肉食べたい?」


「い、いや~別にそんなことは~」

(なっバレていただと!?ここは何とか誤魔化さねば)


「私、全部食べられないから少し食べていいよ」


「いや、無理しなくていいよ!

 ポーラちゃんが全部食べていいから」

(それは俺のプライドが許さない!なんとしても――)


「・・・でも、フラッド君さっきからお肉見てたよね?

 それに食べられないのはホントだよ?」


(見てるのバレてたか・・・)

「・・・食べたいとは思うけど、なんか、その、

 僕だけもらうのは申し訳ないというか・・・」


「それじゃ、お肉あげる代わりにフラッド君の食べてるやつ頂戴っ!」


「それなら・・・」


「決まりっ!はい、あーーん」



 話が決まった途端に肉を差し出すポーラに、一瞬思考が停止したフラッドは再起動するや否やそれを阻止しようとする。



「自分で食べるから大丈夫だよ。

 それに恥ずかしいし」


「私は恥ずかしくないから大丈夫!

 ほら、あーーん」


「いや、だから――」


「あーーーん!」


「うぅ・・・あーん」



 ポーラの勢いに負け、恥ずかしそうに差し出された肉を咀嚼したフラッドだったが、次の瞬間には肉の旨さに羞恥心は掻き消える。



(うまっ!なにこれうまっ!まるで肉汁の宝石箱や!)


「どう?おいしいよね!」


「すごく美味しいよ!」


「でしょ!次はフラッド君の番ね!」



 そう言うとポーラは大きく口を開く。



「え?」


「ん?早く~あーーー」


「えっ・・・あーん」


「あむっ・・・むぐむぐ・・うえぇ

 これ、美味しくない」



 よっぽど口に合わなかったのか、フラッドに食べさせてもらったことの喜びよりもウーバンウィードの苦みに顔を顰めたポーラは口直しに肉を食べる。

 その後、もう一度フラッドに肉を食べさせていると、周りの客に囃し立てられ、それに気分を良くしたポーラは何度もフラッドに肉を食べさせた。

 フラッドも最初は羞恥心から少しの抵抗をしていたが、与えられる肉の旨さと、なによりポーラの嬉しそうなそれでいてどこか恥ずかしそうな笑顔に魅了され、抵抗もなく食べるようになった。


 バカップルの様な食事をすませた二人は、店を出るとメイン通りの広場まで戻っていた。

 次は何処へ行こうかと相談をしていると突然後ろから声がかかった。



「おっ?フラッドじゃねぇか!」



お読みいただきありがとうございます。

前書きでも触れておりますとおり、昨日(3/30)に急遽仕事が入った関係で投稿が遅れました。

いつも土曜日に添削やらなにやらをやっているので、今回かなり急ぎで仕上げました。

結果として、いつも以上に表現等がおかしい箇所があるかと思いますがご容赦ください。

また、投稿が遅れたことお詫び申し上げます。


誤字・脱字等、ご指摘いただいたものに関しては極力修正していく予定ですので併せてよろしくお願いします。


次話は4/7を予定しておりますが、今回のようになる可能性がありますのでご理解のほどよろしくお願いします。遅くとも4/8には投稿します。


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