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14. 街を散策していたんだが・・・

 前話で評価されたことを記載した為か、早速もう一件評価をいただきました!

 まったくもってうれしい限りです!ありがとうございます!

 それでは本編をお楽しみいただければと思います。

 

 ポーラの機嫌を取ろうとエスコートを始めて最初にたどり着いたのは大きな服飾店であった。

 ぱっと見から儲かっているのがわかるほど大きいその店は、一見高級品のみを取り扱っているような豪華絢爛な店構えをしているが、出入りする利用客の容姿が貴族のような煌びやかな様相の者や、継ぎ接ぎなどの修繕痕の多いお世辞にも裕福とは言えない者等多岐にわたることことから、そうではないことが窺える。



「ポーラちゃんあそこの服屋さん行ってみない?」


「・・・」



 未だ機嫌の悪いポーラは、フラッドの提案を無視しながらも素直に手を引かれていく。

 店に入り最初に目に入ったものは、木であしらえられたトルソーのようなものに着せられた、色とりどりの華やかなドレスや寒色と無彩色の組み合わせで織りなされた落ち着きのあるダブレットやサーコートなどであった。

 恐らく、これらは貴族や大商人などの富裕層を対象に展示されていると共に、自分の店はここまでの物が作れるといった意思表示であろう。

 実際に、裕福そうな身なりの女性が展示されている紅緋色のドレスを見て近くの店員になにやら話をしている姿や、案黒色の生地で淵が白磁色のサーコートを見て、いつかこれを買えるようになってみせると呟く男性など客の関心を引くと言う目的を果たしている。

 店の中ほどへ目を向けると、一般階層向けのチュニックやブリオー、カートル、ローブなどが並んでいた。

 奥は最初に見た物ほどではないが、それなりに高そうな衣類が並んでいた。

 二階へ続く階段を貴族や大商人といった様相の者たちが往来していることから、二階は店頭に並んでいない上級階層向けの高級品が並んでいると想像できる。

 入店して簡単に見回しおおよその場所を把握したフラッドは、店頭に並ぶ豪華なドレスに見惚れるポーラの手を引きながら一般階層向けのエリアへと歩を進める。

 一般階層向けの子供服売り場に着いたフラッド達は早速とばかりに物色し始める。


 そのどれもが大人向けの物をダウンサイジングしたもので、大きな違いはない。

 違いがあるとすれば、女児用の服で可愛らしい動物の柄の物があるぐらいである。

 もともとポーラの機嫌を直すために来店したフラッドは、自分の着るものなど端から考えておらず、ただただポーラの気に入りそう且つ似合いそうなものを探し始める。


 探し始めてから10分ほど経ち、フラッドが何点か見繕いポーラへ声を掛けようと振り向くと同時に、ポーラは声をあげる。



「フラッド君。これとこれ、どっちが似合うかな?」



 そう言うと彼女は、アネモネの様な花の刺繍の入った緋色のブリオーと特に刺繍のない紺碧色のブリオーを翳す。



(これはアレだな?

 女性特有の自分の中ではもう決まっているけど、相手にも同じものを選んでほしい時のアレだな。

 この場合、右左で言って、反応が芳しくなかったら相手から見てとか答える奴だ!

 とりあえず左の赤っぽいのにしとくか)

「左の方が似合うんじゃないかな?」


「やっぱり?それじゃぁこれにする!」


「ふぅ・・・」

(一発成功で良かったわぁ)



 運よく正解を引けたフラッドが安堵から小さくため息をつくと、自分が見繕った衣類もどうかと持ち掛ける。



「その、僕もポーラちゃんに似合うかと思って何着か選んでみたんだけど、どうかな?」



 そう言いながらポーラの前に何着か広げてみせると、彼女は嬉しそうな表情を浮かべると、並べられた衣服を見定め始めた。

 フラッドが並べたのは三着で、それぞれ漆黒色、空色、クリーム色のチュニックワンピースで、露天商とのやり取りからどれも、子猫の刺繍が入っている。

 前世でモノクロや儚い印象のものには淡い色合いのものを組み合わせるのが好きだったフラッドの嗜好そのままの色であるが、形状に関しては母親譲りのシャープなつり目や三歳児にしてはスマートな体型をしていることから、リボンやフリルなどの装飾がほとんどない清楚なものを選んでいる。

 それらを吟味すること10分ほど。

 ようやく決まったのか、ポーラは大きく頷くとともに一着を選び取る。



「この中だったら、これが一番かな」



 選ばれたのは漆黒色のチュニックワンピースであった。

 なぜこの服を選んだのかを何ともなしに話すポーラによると、胸元に施された子猫の刺繍が顔だけでなく全身であること、それが絹で編まれているのか光沢を帯びていること等が要因であるらしい。

 気に入った服をもう一着見つけることが出来たことと、それが意中の相手が選んだものと言うのが相まって、ポーラはかなり上機嫌になっていた。

軽い足取りで試着室だと思われる箱型の部屋があるところへと進んでいくポーラを見て、簡単なファッションショーが始まりそうだと内心ワクワクしながらフラッドは付いていく。



「試着するんでしょ?

 そしたら僕はここらへんで待ってるよ」



 試着が終わるまでの間、試着室前の空きスペースで待つことを伝えるフラッドに、ポーラは予想外の返事をする。



「フラッド君も一緒に入ろうよ!

 そうすれば、すぐに見れるよ?」



 少女ゆえの純真さか、はたまたお節介焼き(エリーゼ)の入れ知恵なのか、ポーラはフラッドにそう返すとそのまま彼の手を引こうと近づいてくる。



「えっ!?

 いやいや、それはダメだと思うよ?

 その~何というか~」

(ポーラと一緒に試着室に入るだと!?

 つまりあれか?生着替えを間近で見れると!?

 って何を考えてんだ俺はっ!

 ポーラは三歳児、つまりそれを見れる期待するとかロリコンじゃねぇか!

 俺はロリコンではn・・・いや、ロリコンだったな。

 でもだからこそ、それはダメだと俺の中の何かが訴えている!

 いや~そりゃもちろん、ポーラ可愛いし、偶にされる行動にドキッとすることはよくあるし、()()したり、されたい。

 そんな幼馴染の着替えを生で見ようものなら、俺の和紙よりも薄いと思われる理性が耐えられないのは明らかだ!

 ここはどうにか抑えて過ぎ去るのを――)



 話している途中から急に熟考により沈黙したフラッドを不審に思い、ポーラは彼の名を呼ぶ。



「フラッド君?」


「えっ!いや、だからその・・・ポーラちゃんは女の子で、僕は男の子だから・・・ね?

 それに、乱りに肌とか下着とか見せるものじゃないと思うんだ。

 ポーラちゃんも僕に見られるの嫌でしょ?」


「ほかの人に見られるのはヤダけど、フラッド君になら平気だよ?

 だから入ろ?」


「だけど・・・」

(うおぉぉ…これは幼馴染だから見られても平気か好きだから平気のパターンだ!

 個人的には後者が良い!

 ってそうじゃない!何とかしなくては・・・)


「フラッド君は私の事嫌い?」



 フラッドが様々な理由を付けて断ろうとしていることを、自身が嫌いだと判断したのだろう、目を潤ませながら上目遣いで訪ねるポーラにフラッドは更に動揺する。



(ここでそんな殺し文句言われたら行かざるを得ないだろ…

 てか、このアングル超可愛いな・・・萌え死にそう)

「嫌いなわけないだろ!」


「ホントっ?

 じゃあ行こっ!」



 フラッドの返事を了承と得たのかポーラは嬉々とした表情で試着室へと進んでいく。

 試着室は予想通り狭く、並んで動くと肩が触れるほどであった。

 そんな中ポーラは気にしたそぶりもなく着ているものを脱ぎ始める。

 カサカサという衣擦れ音に遅れて、白いワンピースが床に落ちる。

 視線の先に展開される傷一つない玉のような肌と、少々サイズの小さい白いドロワーズにフラッドは頬を上気させながらくぎ付けとなる。

 その熱のこもった視線にポーラは悪戯な笑みを浮かべ囁く。



「フラッド君のエッチ」



 ポーラの艶やかな囁きにドギマギしながらフラッドは背を向ける。



(エッチって!

 なんだよお前から誘っといて・・・

 見ちまうだろ!

 あんなスベスベしてそうな綺麗な肌とか、裾口が少し食い込んだ柔らかそうな太ももとか!見ない奴なんているかってんだ!)




 フラッドが言い訳まがいの思考に没頭している内に、着替え終わったのかポーラが肩を叩く。



「フラッド君終わったよ。

 えへへ…似合ってるかな?」



 振り向いた先には、自身が選んだ緋色のブリオーではなく、フラッドの選んだ漆黒色のチュニックワンピースに身を包んだポーラが居た。

 彼女は少し恥ずかしそうに後ろ手を組みながらもじもじとしており、フラッドの感想を期待半分不安半分といった様子で待っていた。



(やべぇ可愛い!尊死ぬ!

 しかも俺が選んだ奴から着てくれるとか男心がわかってやがる。

 これもあの人(エリーゼ)の入れ知恵か、はたまたそういう才能があるのか?)



 目の前に佇む理想の少女に生唾を飲み込み沈黙するフラッドに、不安を煽られたのかポーラは表情を暗くする。



「・・・似合わないよね?」


(やべっ

 あまりにも理想の幼女なもんだから見惚れちまった)

「そんなことないっ!すごい似合ってるよ!」


「でもフラッド君黙ってたし・・・」


「違うよ!ただ見惚れてただけで・・・

 むしろ可愛すぎてお嫁さんに欲しいくr…っ!」

(俺は何を口走ってんだ!

 試着室の中で告白とか頭おかしいだろっ!

 てかまだ告白するには早い)


「っ!?ホントっ!嬉しい!」



 フラッドの零した告白に、花が咲いたような笑顔を浮かべるとその場で一回転して再度笑う。

 その度に求めるように視線を受けたフラッドは、今度は本音を零すまいと思いながら、感想を述べていく。

 ひとしきり満足したのかポーラはチュニックワンピースを脱ぎだすと、次の服へと着替え始めた。


 その後、同じようなやり取りをして二人は試着室を出る。

 ポーラは褒められたことやポツリと零れた告白から満面の笑みを浮かべているのに対し、フラッドは着替えを見た興奮と自身の零した言葉による羞恥心から、鼻の下を伸ばしながらも疲れたような目というなんとも微妙な表情をしていた。



「でも、フラッド君はエッチだね?

 私の着替えすごい見てたもん!」


「・・・お願いだから許して」


「ふふっ それじゃあこれ買ってくるね?

 そういえばコレ、幾らするんだろう?」



 試着した衣類を買おうと思い、ふと値段を確認していなかったことに気づいたポーラは、それらが陳列されていた棚へ目を向けると目の前で希望を奪われたような表情を浮かべる。



「・・・4800ロート・・・買えないよぉ」



 フラッドの前世の様な機械や工場による大量生産ではなくすべてがハンドメイドであるため、この世界の衣類はかなり高額なものであった。大人用と比べて子供用のものは安い傾向にあるが、それでも子供の小遣いで簡単に買えるものではなかった。

 その為、基本的には古着を買うのが主流となっていた。

 そんな状況の中、二人が探し手にした衣類たちは新品であったため、猶更金額が高いものとなっていた。

 後は買うだけという状況で叩きつけられた現実(金額)に、先ほどまでのウキウキとした楽しい雰囲気は霧散し、今ではどんよりとした悲愴な雰囲気に包まれていた。

 その後手にした衣類を棚に戻し、古着や端布などを見て回ったが、目ぼしいものも見つからず、二人は何をすることもなく店を後にするほかなかった。


 お読みいただきありがとうございます 

 くどいようで申し訳ありませんが前書きでも触れておりますように、早速評価二件目をいただきました!

 ありがとうございます!

 まだまだ大変未熟ではございますが、皆さまが楽しめるよう努力していく所存でありますので改めてよろしくお願いします。

また、誤字・脱字等、ご指摘いただいたものに関しては極力修正していく予定ですので併せてよろしくお願いします。


次話の投稿は3/31を予定しておりますが前話で述べております通り、仕事が繁忙期なので遅れる可能性がありますがそのときは何卒ご容赦頂ければ幸いです。

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