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12.幼馴染に休日の話をしたんだが・・・

花粉の厳しい季節がやってきました。

薬を飲んでも発生する鼻詰まりからここ最近頭が上手く回らなくて辟易しています。

今話も前話と同じく少し多めの文章量になっているかと思いますがよろしくお願いいたします。


 翌朝、昨晩の熱が冷めやらぬのか未だにイチャつくガラッド達を眺めながら朝食を済ませたフラッドは庭に出る。

 いつもなら、日課を通り越し趣味と言っても差し支えない魔力操作の練習をするのだが、今日は違った。

 麗らかな日和の中しばし立ち竦むフラッド。

 彼は昨日のホーンラビットとの闘いを思い出していた。



(あのときはあんまり焦りとか恐怖とか感じてなかったけど、今にして思えばかなりやばかったよな・・・)



 突然の遭遇であったこと、前世の記憶があったこと、実際に被害にあった者を見たことがなかったこと等、様々な要因から当時現実感が伴っていなかった為感じることのなかった感情が、今、一晩経ったことでフラッドに襲い掛かっていた。



(もし、あの時ザックの一撃で角が折れてなかったら・・・

 俺は腹を貫かれて良くて重傷、下手したら・・・ったく、ここはゲームでなくて現実だぞ。それに異世界物の主人公みたいにチート能力を持っているわけでもないのに俺は何をやってんだか)



 もしもを考え顔を青ざめながらも、ザックの一撃の強さに思考が移っていく。



(しかしザックの奴、一撃で隙間なく詰まっていた角を圧し折るとか、誇張かと思ってたけどホントに力あるんだな。

 俺もあれぐらいは動けるようにしなきゃならんな。

 とりあえず、筋トレでもしてみるか)



 思いついたら即実行ということで、早速腕立てを開始するフラッドであったが、それはものの数回で終わりを迎えた。

 前世では毎日行ってきた筋トレであるが、フラッドとして生を受けた今世では初めての行う筋トレである。

 結果として負荷に慣れていない腕の筋肉は5回ほどの屈伸運動で悲鳴をあげていた。



「はぁはぁはぁはぁ」

(きっつぅ・・・やばい腕プルプルする

 20回行けるかと思ったけどこれは無理!

 取り合えず5回ワンセットってことにしよう

 ・・・次やるか)



 次に行ったのは腹筋である。足を押さえるものが見つからず庭をあっちこっち回り、庭を囲む木柵に行きついた。

 念のため強度の確認を行ってから始めたが、3回目にしてフラッドの身体は小刻みに震え始めた。

 4回を終え5回目を行おうと上体を持ち上げようとするも、その体は一瞬地面から浮いたと思えば支えきれずに元の場所に戻る。

 フラッドは自分の決めた数はこなしたいという意地からそれを何度も繰り返す。

 20回目でようやく半ばまで上体があがり、もう一息と力を込めたその瞬間、ビクっと痙攣したかと思えば腹を押さえながらその場で悶え始めた。

 腹が攣ったのである。



「ん~~~~!?」ゴロゴロ

(痛ぇ!ヤバいヤバい攣った~)



 徐にうつ伏せると海老反りの体勢をとった。

 しばらくその体勢で止まっていたが、痛みが治まったのか脱力し地に伏した。

 その後落ち着き取り戻してから背筋を始めた。

 腹筋と同じく木柵を押さえに海老反りに上体を起こす。

 なぜか背筋だけは簡単に回数をこなせた為、調子に乗って倍以上の回数行い、案の定背中が攣り悶絶していた。



「痛つつ・・・」

(これで一巡できたから休憩がてら瞑想するか)



 前世でも行ってきた腕立て・腹筋・背筋の筋トレセットを終え次巡までの休憩として瞑想をする。

 この流れを4・5回繰り返した頃、庭の外から声がかかる。



「あ~フラッド君!そんなところで何してるの?」



 声の主はポーラであった。

 その存在に気づくと同時に、今日王都から帰ってくる予定であったのを思い出したフラッドは、筋トレで息を切らせながら返事をする。



(そういえば今日帰ってくるかもって母さんが言ってたな)

「――ハァハァ・・・おかえりポーラちゃん。

 王都はどうだった?」


「ただいま!すごかったよ!

 人もお店もいっぱいあって、馬車とか竜車って言うのとかいろいろあったの!」 


(竜車?馬車の竜版か?)

「へぇ~僕も行きたかったな~」


「ポーラ~ママたち先に家に戻ってるからね~」


「何を言ってるんだ!このままだとポーラがフラッドの坊主に・・・」


「は~い」


「ほら、ダリウス、変なこと言ってないで戻るわよ!」



 そう言うとエリーゼはフラッドに並々ならぬ視線を向け続けるダリウスを引きづりながら家へと戻っていく。

 フラッドは去り際にウインクされたことに、内心溜息をつきながらポーラとの会話を続ける。



「今度じいじ達に会うとき一緒に行こ?」


「それは遠慮しとくよ」


「遠慮?う~んわかんないけどわかった!

 それでフラッド君は何してたの?新しい遊び?」


「ええとね――」



 今まで自分が筋トレをしていたこと、そしてどんな筋トレをしていたかを話すとポーラは何かを思い出したような表情をすると口を開く。



「パパがやってるやつやってたんだ~

 でも、なんで?

 筋トレ?やったことあるけど全然面白くないじゃん」



 試しにやった時のことを思い出してか苦虫を嚙み潰したような顔をし、次には珍しい生き物でも見たかのような顔で尋ねられた。

 筋トレ自体は辛いものだから変な顔で見られるのも当たり前かと一人納得するフラッドは、ポーラが居ない間の出来事を話し始める。

 始めは面白そうに話を聞いていたが、話が進むにつれて顔を青くしたり、驚愕に染めたりと表情がコロコロと変わるポーラに、可愛いい子猫とじゃれている気分になったフラッドだが、終盤どこかイライラとした雰囲気を出し始めたポーラに冷や汗をかきはじめた。



(なんでこいつイライラしてんだ?

 なんか気に障ることでも言ったか?)

「――ってことがあったんだよ!

 あの時はすごく冷や冷やしたよ

 でも楽しかったなー」



 フラッドが語り終えると、ポーラは苛立ちを隠そうともせずに相槌を打つ。



「ふんっ!

 フラッド君はホーンラビットに刺されて死んじゃえば良かったのに!」


「ウェッ!?」



 突然の暴言に目が点になるフラッド。

 しばし呆然としながら罵倒された理由がわからずに尋ねると、ポーラは拗ねた様子で答える。



「私が王都で一人なのにフラッド君は()()()()()と楽しく遊んでるんだもん!ずるい!」


「なっ!?」

(俺が他の奴と遊んでたことに怒ってんのか!?

 子供かよ・・・って子供か)


「フラッド君にあげようとお土産買ってもらったけど

 もうあげないもんっ!」


「いや、楽しく遊んでたって言っても僕は成り行きで遊んだだけで別に・・・」


「楽しかったって言ったじゃんっ」



 ポーラの年相応な理由に困惑するフラッドだったが、感情は今の年齢に曳かれるのか、ポーラを子供と内心で軽んじながらも、苛立ち、売り言葉に買い言葉で言い返してしまう。



「そんなこと言ったら、ポーラちゃんだって馬車だ竜車だ

 楽しそうに話してただろ!

 それなのに他の子と遊んだだけで死んじゃえ何て言われるのはおかしいよっ!」


「うぅ~知らないもんっ!フラッド君ばっかりズルい!

 それにローナって娘とも仲良くしたんでしょ?」


「ローナ?

 なんでローナが出てくるのさ!関係ないだろ!」


「関係あるもん!フラッド君のバカッ!」



 どちらか一方が謝るか何かして、矛を収めれば済む話ではあるが、片や本物の三歳児、片や体に感情を引っ張られ感情的になる三歳児(仮)(転生者)

 この場に止める者()が居ない二人の諍いは、どちらかが泣き始めるまで続く。

 案の定、耐えかねたポーラが泣き始めるのだった。



「――ポーラちゃんのお土産なんか要らないよ!

 捨てるなりなんなりすればいいじゃないか」


「うぅ…スンッ・・グスッ・ウアアァーーン!」



 何時もであれば、このタイミングでフラーナかエリーゼの仲裁が入り事なきを得るのだが、今回はそう言ったこともなくポーラは泣き続ける。

 その姿を見てようやく冷静になったフラッドは、慰めようと声を掛けるも一蹴されてしまう。

 その後も諦めずに謝り続けるフラッドだがポーラは一向に泣き止まない。

 時間ばかりが過ぎる中、このタイミングで一番来てほしくない存在が現れた。



「ポーラ!どうしたんだ!?

 まさか・・・坊主てめぇッ!」


ゴッ


「あべしっ」



 その存在は泣きじゃくるポーラを見た瞬間、問答無用とフラッドを殴りつけた。

 その拳がフラッドの鳩尾に減り込むと、カハッと言う呼気と共にフラッドを1メートルほど吹き飛ばした。

 その威力はとても子供へ向けて放っていいものではなく、飛ばされたフラッドが吐瀉物を出しながら悶絶するほどである。

 突然の出来事に思わず泣き止むポーラだったが、飛ばされたフラッドの様子に声にならない声をあげると駆け寄り、また泣き始めるのだった。



「フラッド君!大丈夫?死なないで!」


「うぅ……オエェェ」

(あのオッサン、割と本気で殴りやがって、子供相手に放っていいレベルを大幅に超えてんぞコレ。

 内臓とか破裂してないだろうな?)


「ポーラ!坊主に近づくな!

 後はパパに任せろ!」



 フラッドを殴り飛ばした存在、それはポーラの父親であり大の親バカであるダリウスであった。

 ダリウスの一連の言動から、今までフラッドへ向かっていたポーラの不満や苛立ちは倍以上になってダリウスへと向けられた。



「グスッ…パパのバカッ!フラッド君が死んじゃう!

 パパ何て大っ嫌い!あっち行って!」


「なっ!?

 パパはポーラが虐められたと思って――」


「虐められてないもんっ!

 ・・・喧嘩しちゃっただけだもん

 なのにパパ、何も聞かないでフラッド君殴るんだもん!」



 娘に大嫌いと言われ絶望するダリウスを他所にポーラはフラッドに必死に呼びかける。

 


「フラッド君!フラッド君!死んじゃヤダよ!」


「うぅ…」

(あぁなんかボーとしてきた・・・

 ハハッ天使が迎えに来てらぁ)



 今まで痛みで維持していた意識も、それが和らぐにつれて次第に朦朧としていき、傍らに寄り添うポーラを天使と勘違いしながら手放すのだった。

 その後、騒ぎを聞きつけたフラーナとエリーゼ(母親たち)によりフラッドは家のベッドへ運ばれ、ダリウスはその二人から説教を受けるのだった。



「うぅ…」



 しばらくしてフラッドが目を覚ますと、見慣れた天井と目元を真っ赤に腫らしながら寝息を立てるポーラの姿があった。



(死にはしなかったか

 いつつっ殴られたとこめっちゃ痛いんだけど)



 鳩尾から伝わる鈍い痛みに顔を顰めながら辺りを見回すと、奥のほうで母親たちに叱られるダリウスの姿を見つける。



(いいぞ~母さんもおばさんもガンガン言ってくれや)


「うぅ~ん・・・っ!フラッド君!」


 しばらくその様子を眺めていると、ポーラが目を覚ましホッとしたように声をあげる。

 その声にお説教タイム中だった三人も気付き近づいてくる。

 三者とも形は違えど安堵した声をあげると、経緯を求めた。

 求められるまま意識を手放すまでの出来事を話すと、母親たちは困ったような顔を浮かべたと思えば般若のような相貌でダリウスへ拳を叩きつけた。

 その後、簡単な小言をもらいながら仲直りを済ますと今までピリピリと張りつめていた雰囲気は霧散した。

 また、ダメ元で今後の外出許可を求めると今回の要因の一つに外出の抑制があると思われることから許可が下りた。

 許可が下りたことに喜び、早速明日の予定を立て始める二人を申し訳なさと微笑ましさの同居した表情で見つめるフラーナとエリーゼ。

 そんな中、終始ポーラのことを気に掛けるダリウスを四人は白い目で眺めるのだった。






お読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字等、ご指摘いただいたものに関しては極力修正していく予定ですのでよろしくお願いします。


次話ですが、仕事の都合で投稿が遅れる可能性があります。

問題が起きなければ3/17 遅くとも3/18には投稿する予定です。

ご理解のほどよろしくお願いいたします。


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