11.冒険者ごっこをやってみたんだが・・・
少し遅くなりましたすみません。
今回文章量が多めです
また、チェックが出来ていないので誤字脱字などが多いかと思いますがご容赦ください
「ん?何ってそりゃ冒険者ごっこに決まってんだろ?」
ザックがこれしかないという顔で言った冒険者ごっこ。
これは、子供たちが一度は行う定番ごっこ遊びの一つで、自分たちを冒険者と見立てて街や森などを探索したりするものである。
もう一つの定番である勇者ごっことの違いは必ず悪役に回る者が出るか出ないかと、主役が居るか居ないかである。
もちろん冒険者ごっこでも魔物役をやる時があるが、勇者ごっこと違い必ずではないため、グループ内のヒエラルキーが定まっていない場合や、純粋に敵役をやりたくない時などは冒険者ごっこが選ばれるのである。最近では冒険者のほうが身近に感じられるといったことから選ばれることも多い。
今回の場合は後者であると言える。
今までごっこ遊びと言えばままごとしかやっていないフラッドは想像はつけど実際どういったものなのか判断がつかずザックに尋ねる。
「当たり前のように冒険者ごっこって言ったけど、なんでそれを選んだんだい?
正直やったことがないからわからないんだけど」
「なっ!?おまえ冒険者ごっこやったことないのか?
マジで?」
フラッドの予想外の質問に驚愕して聞き返すザック。
そんなザックに、フラッドは遊び事情を話していく。
「――と言うわけで、冒険者ごっこなんてやったことがないんだ」
「ママゴトしかやったことないのかー」
「おままごとだってぇ~男の子なのにぃ~」 クスクス
ローナの人を小馬鹿にした言い方に苛立ちを覚えたフラッドは、それを隠すこともなく返す。
「別に僕がやりたくてやった訳じゃないのは説明したよね?」
「それでもぉ~おままごとだよぉ~?」
(子供の戯言だと解っちゃいるが腹が立つな)
「喧嘩を売ってるなら喜んで買うけど?」
「や~ん こわい~」
再度険悪な雰囲気になるのを恐れ、咄嗟に仲裁に入るエルロス。
「ローナ、とにかく謝って!
フラッドも落ち着いて!イライラするのは解るけど彼女はほら、少しアレだからっ!」
(フラッドも意外と喧嘩っ早いな~)
しかし、彼の言葉がローナの癪に障り、矛先はエルロスへと変わる。
「エルロス~?アレッて~何ぃ~?
いつも~エルロスは~私がおかしいみたいに~言うけど~いい加減~わたしも怒るよぉ~?」
「いや~アレって言うのは・・・こう・・素直過ぎる?みたいなことで、決してローナがおかしいとかって意味ではないからね?」
「むぅ~また~そんなこと言って~有耶無耶にしようと~する~。
エルロスは~いつも~そういう事するから~ズルい~
フラッドは~私が~おかしいと思う~?」
(いやいや、その間延びしたしゃびり方とかおかしいだろ。
面倒くさそうだし適当にはぐらかすか)
「おかしいと言われればおかしい気もするけど?
少なくともさっきは喧嘩売られてる気しかしなかったよ」
「うぅ~ごめん~」
はぐらかすついでに先の件に触れてみると、ローナはあっさりと謝罪した。
エルロスとローナのやり取りの時点で冷静になっていたフラッドは、それを受けて矛を収めるのだった。
三人の様子から解決したと判断したザックは、早速冒険者ごっこの説明をしようと口を開く。
「おっ?なんか解決したみたいだし説明すんぞ」
「おっ?っじゃないよ。急に他人事みたいな反応して」
「まあまあ、とりあえず聞けって」
「・・・何となく君たちがどんな人だかわかってきたよ」
ザックの物言いに呆れながら説明を聞くフラッド。
「――ってな遊びな訳よ」
「大体は解ったけど、なんでこれやろうと思ったのか聞いてないんだけど」
「んあ?理由?
んなのお前が魔句使ってたからに決まってんだろ。
魔句使えば冒険者っぽさ出るだろ?」
「僕たちが滑った氷って、フラッドの魔句だったのか!?
ザック、気付いていたなら教えてよ!」
「普通に考えてこの季節に氷なんて魔句以外ないだろ?」
「確かに・・・ザックでも解るのに・・・はぁ」
「おいっ!なんだよその溜息は!」
自分の使った魔句について勝手に盛り上がる二人を他所に、フラッドはザックの予想外の状況把握能力に舌を巻いていた。
(アイツ馬鹿そうに見えるだけで実はそうじゃないのか)
「とりあえずやるかー」
「ちょっと待って。もしかして遊びで魔句使うとか言わないよね?」
「ん?使うだろ。
だから冒険者ごっこにしたんだし」
「魔句は遊びで使うもんじゃないって母さんに言われてるんだけど」
「俺たちコケさせるのに使ってんだから今更だろ」
「フラッド諦めるしかないよ」
「エルロスの~言う通り~諦めて~遊ぶ~」
エルロスとローナに諦めるように言われながら四人は遊び始める。
今回は探索系の様で、ザックを筆頭にローナ、フラッド、エルロスの順に縦列で森の奥へと進んでいく。
行く手を阻む枝葉をザックは手にした手ごろな棒で払いのけながら何か面白いものはないかと周囲へ目を走らせる。
もちろん魔物などは居らず、レストンアゲハや毒々しい斑点のある赤いショウリョウバッタ、こぶし大の大きさのダンゴムシなどの虫が精々だった。
そのほとんどがフラッドにとって未知の生き物だったが、他の三人からしたら有り触れたものなのか、気にも留めない。
時たま、ザックの指示で水たまりや露を凍らせていたが、皆次第にそれにも飽きてきていた。
そうして、しばらく歩いているとザックから注目するように声がかかった。
「おい!見てみろよ!」
ザックの指さすほうへと視線を向けると、そこには小さな洞窟があった。
他より少し土が迫り上がっているところに、子供が入れるぐらいの穴が開いていた。
奥深く掘られているのか、外からは洞窟の全容が確認できない。
そんな洞窟を見つけたザックはキラキラと期待に満ちた瞳で三人を見回しながら提案した。
「なぁ、こんなか入ってみようぜ!」
「ザック、それは危ないと思うよ。
それにまあまあ奥まで来たしそろそろ戻らない?」
「私も~フラッドに~賛成ぃ~」
「僕も賛成だね。戻るのが遅くなると父さんたちを心配させちゃうし、もし中に入って魔物とか危険な動物が居たら大変だよ?」
自分を除く全員が探索に反対したことが予想外だったのか、ザックは驚愕しながらも説得に入った。
「なっ!?
せっかく見つけたんだから入ろうぜ?
フラッドのところはわからねぇけど、おっちゃんたちは割と平気だろ。
それにもしなんか出てきても問題ないぜ、俺にはこの棒があるし、フラッドは魔句が使えんだぞ?
だから行こうぜ?」
(魔句が使えるっつったって魔物やらなにやらは相手取れんぞ!?
しかもなんであんな棒で自信満々になれる!?)
「ダメだ。魔句が使えると言っても攻撃はできないから入る理由にはならないし、そもそも僕はケガをしたくない」
「お前ビビってんだろ?
お前弱そうだもんな!ぼくちゃん怖いよぉ~ってか!」
「ザックそれ以上は――」
「あわわわ~」
ザックのフラッドへの煽りに顔を青くするエルロスとローナ。
そんな二人など眼中にないのかザックは煽り続ける。
「魔物とか出てきたらチビっちまうんだろ?
ママ~怖いよ~助けてーってな」
(言わせておけばコイツーッ。煽られてんのわかってても、もう我慢ならん!)
「喧嘩なら喜んで買うよ?
よく吠える犬程弱いって言うし、実は弱いんじゃない?」
「はっ!どうせ魔物が怖いから喧嘩って言ってんだろ?
俺になら勝てるかもーって」
「怪我したくないだけで魔物が怖いわけではないんだけど。
それに魔物が出るって決まったわけでもないのに魔物、魔物って、君は魔物が好きなのかなー?」
売り言葉に買い言葉で続く口論の中、ザックはニヤリとした笑みを浮かべた。
「魔物が怖くないってんなら行こうぜ?
怖けりゃそこに居ろよ」
(やっちまった!これじゃあ行かざるを得ないじゃねぇか)
「ああ、行ってあげるよ」
「うし!決まりだな。そんじゃ二人も来いよ?」
「えぇ~」
「結局入らなきゃいけないのか」
ザックを筆頭に一人ずつ入っていくと、そこは入り口に比べて広い空間が続いていた。ただ、広いと言っても子供が二人並んで歩ける程度である。
当然手に持っている棒などを振り回すとなると縦列にならざるを得ない。
結果四人は森の探索と同じように縦列で奥へと進み始める。
デコボコとした不均一の空間からここが何者かによって掘り進められた事が窺える。
進むにつれて何かの体毛が散らばるようになってきたが、暗い中進む彼らはそのことに気付かない。
そして洞穴の最奥へと到着する。
そこには額から15センチほどの玉子色の角を生やした、茶色いネザーランドドワーフのような兎がこちらを窺っていた。
兎は四人に警戒しているのか、所々土で汚れた角を四人へ向けながら、後ろ足でスタンピングをしている。
(兎?なんか角生えてんだけど?
あれか?定番どころで言うホーンラビット的なやつか?)
「ねえエルロス、あの兎なんて名前なの?」
兎がそれなりの脅威なのかエルロスは青い顔でその名を告げる。
「ッ!・・・あ、あれはホーンラビットだよ」
(まんまやん!てかめっちゃ足ドンしてるけどどういう意味だ?
兎なんか飼ったことないからわからんぞ?)
「あの足ドンはどんな意味があるの?」
「そんなの僕に聞かれてもわからないよ。
とにかく早くここから出なきゃ!」
「ホーンラビットか、上等!
やるぞ!」
「ザック!馬鹿言ってないでさっさとここから出るよ!
フラッドはローナのことをお願い!」
ホーンラビットの強さは解らないが、エルロス焦り様から何となく察したフラッドは、兎の見た目に心掴まれ先ほどからだらしない顔で立ちすくむローナの手を引き、来た道を戻り始める。
遅れてザックを羽交い絞めにしたエルロスが合流する。
出口まであとわずかといったところで後ろから迫る気配に視線を向けると、そこには角を突き出しながらこちらに突進するホーンラビットが居た。
(あれは不味いだろ!下手したら角が突き刺さって・・・)
「エルロス・ローナ走るよっ!
後ろからアイツが走ってきてる!」
追い立てられるように走った四人が脱出し、入口から離れるのと、ホーンラビットが勢いよく飛び出すのは同時だった。
(もう少し遅かったら誰かの背中にあの角がズブリってか)
「危なかった…どうやら逃がしてはくれないみたいだね」
フラッドが安堵の声をあげた矢先、ホーンラビットはギラギラと敵意の籠った瞳で四人を見据えた。
「やっと戦えるぜ!」
「なんでそんなに嬉しそうなの!これじゃあ遊びじゃなくて本当の冒険者の仕事だよ!」
「かわいい~」
自分の求めた刺激に戦意を募らせるザックとそれに呆れるエルロス。ローナに関しては未だに兎の姿に魅了されている。
(子供だけで勝てるわけないよな~
エルロスの口ぶりからしてコイツ魔物だろうし。
上手くいって撃退か?)
「ザック、僕が注意を引くからその隙に棒で頭か角を叩いてくれる?
エルロスはローナを守ってくれると助かる」
「「わかった」」
(しかしどうやって注意を引くか・・・
石でも投げるか?届かなかったら意味ないしなー
そういえば――)
赤子の時に一度だけ見たフラーナの使った魔句を思い出し、ダメ元で行使する
「クリエイトファイア マニュピレイトフェノメノン」
(たしか母さんの指の動きに合わせて動いたから…)
中空に生成された種火と言うには少し大きい火は、フラッドの指の動きに合わせてホーンラビットの周囲を回り、最後にその目へ襲い掛かる。
ジュゥッと片目を焼かれた痛みにホーンラビットが怯んだ瞬間、駆け出したザックは全体重とその勢いを乗せた一撃を角へと叩き込む。
ミシッという音と共にザックのもつ棒とホーンラビットの角が中ほどから折れた。
自分の武器たる角が折れたことで不利を悟ったのか、兎らしからぬグルルゥといった声で威嚇し、茂みへと逃げて行った。
「ちっ逃げられた」
「ふぅ・・・上手く撃退できたね。
あの角が折れるって、ザックって意外と力あるんだね」
「まあな!俺は今まで喧嘩で負けたことがないくらいには
強いからな!
フラッドも起居魔句で兎の目を焼くとか凄いな!」
(起居魔句?)
「うん?ダメ元で使ってみたらできただけだよ」
「二人とも日も落ちてきたし早く戻ろう?
ローナも落ち込んでないで」
「兎さん~行っちゃった~」
ホーンラビットとの争いから幾ばくか、四人は親たちの居る原っぱまで戻ってきた。
周囲は薄っすらと茜色に染まりつつあり、帰路に就く利用者がチラホラと見受けられる。
その中にザック達の両親の姿があった。
「「「ザック~、ローナ~、エルロス~何処だ~?」」」
「「「(お)父さん!(お)母さん!」」」
両親らに合流したザック達は今日の出来事と共に新しくできた友人、フラッドのことを紹介するのだった。
その話を聞いた親たちは各々の子らを叱ると共にフラッドへ謝罪し、早く親もとへ戻るよう促した。
昼食を食べた場所へ急いで戻ると、そこには未だ終わることのない桃色空間が維持されていた。
「戻ったよ~心配させてg――」
「この景色を見ると君との出会いを思い出すよ」
「私もよ。あの時は風の冷たい秋の終わりだったわね」
(まだ続いてたのか!お熱いことで)
「はぁ・・・んんッ!」
「「ハッ!?」」
「フラッドか。どうしたんだ?」
「そろそろ日も暮れるし帰ろう?」
「あら?もうそんな時間!急いで帰らないとね」
(もうそんな時間って、景色云々言ってたやん)
我に返ったガラッド達と急いで支度を済ますと帰路に就くのだった。
道中、昼の出来事を語り二人を驚かせるという場面はあったものの問題なく家へ着く。
その晩、のどが渇き水を飲みにキッチンへと向かう最中、ガラッド達の部屋からギシギシと音が聞こえてきた。
不審に思い扉に近づくと、なんとも艶めかしい声が漏れ聞こえてきた。
「―――アッ―――――ッン―――」
(あー・・・絶賛お楽しみ中かー
昼にあんだけイチャついてればスイッチも入るだろうな
これは近々弟か妹ができそうだ)
両親の情事は聞かなかったことにし、未来の弟か妹に思いを馳せながら水を飲み、床に就くのだった
お読みいただきありがとうございます。
誤字・脱字等、ご指摘いただいたものに関しては極力修正していく予定ですのでよろしくお願いします。
次話は3/10を予定しています