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10.新しい友達ができたんだが・・・

間に合いました!


十話投稿になります。

今後とも精進していく所存でありますので何卒宜しくお願い致します。


 木々の間から、観察対象に気づかれないようにヒソヒソと話す囁き声が漏れ聞こえる。



「おい、アイツの周り(アゲハ)だらけぞ?」


「気持ち悪くないのかなぁ~?」


「気持ち悪いかどうかは人によると思うよ?」


「俺だったら絶対にヤダね」


「私もぉ~」


「僕はアレぐらいなら平気かな?

 ゲロホーローチよりかマシだからね」


「当たり前だよぉ~

 アレ(ゲロホーローチ)は大の冒険者でもダメな人が居るんだからぁ~」


「とりあえず近づいてみようぜ!」


「「うん!」」



 そう言うと三人は瞑想するフラッドに近づく。

 もはや周りに聞こえないように会話をしても聞こえるほどの距離に近づいたが、自身にアゲハがとまっていても気づかない程に集中しているフラッドはもちろんそのことにも気づかない。

 自分たちが近づいても全く気付く様子のないフラッドに、何か思いついたのかリーダー格の少年は他の二人を手招きし、耳元でコソコソと話し始めた。



「――って感じでやってみようぜ」


「ザック、それはダメだと思う」



 眼鏡の少年にザックと呼ばれた少年は、今しがた思いついた目の前で目をつぶる少年への悪戯に難色を示され不服そうに眉根を寄せる。

 ザックが何かを言おうとした直前、傍らにいた少女が意見する。



「私は~いいと思う~

 だって面白そうだしぃ~何かあってもこの子はケガとかしないからぁ~」


「ローナもそう思うだろ!

 だからやろうぜ!なぁ?

 そもそもエルロスは真面目過ぎんだよ!」


「そ~そ~エルロスは真面目過ぎぃ~」



 ローナと呼ばれた少女の賛同を得たことにより、悪戯の賛否から難色を示した自分への非難に話が変わり始めた為、エルロスと呼ばれた少年はしぶしぶといった様子で賛同するのであった。



「なっ!?・・・わかったよ。

 ただ、僕は注意したからね?」



 エルロスの賛同を得て、満足そうに笑むザックは嬉々として行動し始める。

 彼らが行おうとしているのは、瞑想しているフラッドを周囲から集めた葉や枝で覆い隠そうといったものであった。

 覆ううちに目を覚ませばその時の反応を、完全に覆いきった場合は気づいた時の反応を楽しもうという意図からくるものだ。

 三人は家族ぐるみの付き合いで、フラッドと同じくピクニックに来ていたが、食事を終え暇を持て余した彼らはしばらく駆けっこや鬼ごっこなどして遊んでいた。

 しかしそれにも飽き、何か面白いものはないかと森に入ったところ、木漏れ日のなか目を瞑る少年、瞑想中のフラッドを見つけたのである。

 最初はその神秘的な雰囲気に息をのみ、眺めていた三人だったが、アゲハ(レストンアゲハ)がとまっても気付かないフラッドの様子に興味(悪戯心)が湧いた三人はこうして悪戯を敢行するのだった。

 つまるところ彼ら三人は暇だったのである。



「にしてもコイツ全然気付かないよなー

 俺だったらここまでされれば起きるぜ?」



 そう言いながらせっせと枝葉で覆っていくザック。



「そ~だねぇ~

 ここ暖かくて眠くなるのわかるけど~

 こんなことされたら~普通~起きるよねぇ~?」


「んー、熟睡してるのかもね?

 うたた寝ならすぐ起きるはずだし」



 フラッドの瞑想を睡眠と勘違いしている三人は、各々何故目を覚まさないのか予想し合う。

 そうこうしているうちに、フラッドは枝葉に完全に埋もれてしまった。



「結局コイツ起きなかったな。」


「そ~だね~

 チクチクしないのかな~?」


「もしかして、うたた寝じゃなくて気を失っているとか?」


「座ったまま気を失うとかないだろ?」


「それを言ったら座ったまま寝るのも…いや何でもない」



 三人がガヤガヤと話す中、フラッドは瞑想から覚める。


「んー・・・もがっ!?」

(んー。長いこと瞑想しちまった・・・ってんだこれ!?

 なんで俺、枝塗れになってんの!?)



 瞑想を止めたら、いつの間にか枝葉塗れになっており、驚愕するフラッド。

 フラッドが覚醒したのに気付いた三人、特にザックは、枝葉の山からフラッドが出てくるのをニマニマとした笑みで待ち構えた。



ガサガサ


「プ八ッ!いったい何があったのやら・・・」


「よう。やっと起きたみたいだな」



 枝葉の山から抜け出すと共に声を掛けられたフラッドは、ニヤニヤとした笑みを浮かべるザック含める三人を目にする。



「ふふふ~髪の毛も~服も~葉っぱだらけ~」


「あーその、ごめん」



 自分の姿を見て笑うローナと、気まずそうに謝るエルロス、そして彼らの袖や手に付着した枝葉を見て何となく状況を把握したフラッドは三人に問いかける。



「これをやったのは君たち?」


「そうだぜ!

 どうだ?目が覚めたら葉っぱの山に埋もれてた気分は?」


「埋めるの~楽しかったよね~」


 自分を埋めた犯人は解っても、その動機が分からないフラッドは素直に質問する。



「君たちがやったんだね?気分?最悪に決まってるよね?

 僕は君たちのこと知らないんだけど、何か嫌なことでもしたかな?」

(こいつ等が犯人ね。はてさて動機は何なんだか)



 その質問に対してザックはあっけらかんと言い放つ。



「ん?別にお前は何もしてないぞ?

 ただアゲハ(レストンアゲハ)とかとまっても全然起きないから悪戯してみただけだ。」


「やってるとき~全然気付かないんだもんねぇ~」


「・・・ヤックデカ〇チャー」

(このクソガキ共、悪戯で人埋めるとか恐ろしすぎるわ!

 いや、ポーラも泥団子だか食わせようとしてきたし・・・

 子供って怖いな)


「一応僕は止めたんだよ?」


(止めようとしたとしても、一緒になって埋めてんだから同罪だってことわかってんのかねコイツ?)


 あまりにもあんまりな三人の返答に、仕返しをしてやろうとフラッドは魔句を小さく唱えた。



「クリエイトウォーター フリーズウォーター」



 フラッドはバレないように三人の足元に薄っすらと水を生成すると、立て続けにそれを凍らせた。

 フラッドが反応しないことを、泣きそうになっていると勘違いしたザック達は、泣かれる前にと謝罪と仲直りをしようとする。



「悪かったな。俺たちは別にお前のことをいじめたかったとかじゃないんだ。

 だから、その――っ!?」



 自分たちの足元が凍っているのを知らない三人は、フラッドに近づこうとその足を前へ出す。

 湿り気を帯びた靴で氷の上を歩けば滑る。

 その一般常識とも言える物理法則に従い、三人は綺麗に尻もちをついた。



「うおっ!?」「うわっ!?」「ひゃ~!?」


「いつっっ…

 氷?なんで氷があんだよ・・・

 なあ?もしかしてお前の仕業か?」



 転ばされた可能性を考えフラッドを睨みつけるザック。

 そんなザックの視線など意にも介さず、フラッドは返答する。



「そうだけど、それがなにか?

 人のことを勝手に埋めといて、はいそうですか、で済むと思ってたの?

 もしそう思っていたなら君らの頭の中は、大層綺麗なお花畑が広がっているんだろうね?」



 フラッドに煽られ、より一層睨みつけるザックだったが、暫くするとその表情が嘘だったかのように笑いながら立ち上がる。



「はははっ!これでお相子だなっ!

 俺はザックってんだ!よろしくなっ!」


「君、頭おかしいの?

 普通この流れだと喧嘩とかになるでしょ?

 それがなんでよろしくなのかな?」


「まあ、そう言うなって。最初に謝ったろ?

 それにさっきのでお相子だ。

 あとは、仲直りからの遊びだろ?」


「いや、意味わからないよそれ」


「まあまあまあまあ・・・っな?」


「その、ごめんね?僕たちもやり過ぎたと思ってる。

 あっ、僕はエルロスって言うんだ」


「うぅ~ お気に入りのワンピースに泥着いちゃった~

 お母さんに怒られるぅ~」


「この娘はローナって言うんだ。

 その、こんなこと言ってるけど君に謝りたいって言う気持ちはあるんだよ・・・・・・たぶん」


「なっ?だから仲直りしようぜ!

 そして一緒に遊ぼうぜ!」


「はぁ・・・」

(なんなんだコイツ等。あれか?少年漫画によくある昨日の敵は今日の友、的な思考回路してんのか?

 戦っちゃいないけど・・・)



 相手の感情など露ほども考えない言動に、毒気を抜かれたフラッドは、そう時間も掛けず三人の申し出を受け入れた。


「わかったよ。仲直りね?」


「そう来なくちゃなっ!んじゃ握手だ握手!

 親父が言うには仲直りしたときは握手するのが普通みたいだしな!」


(だからどこの少年漫画だよ!)



 内心でザックの言葉にツッコミを入れながら仲直りの握手をした。

 


「んじゃ、仲直りもしたわけだし、もう一回自己紹介しとくか!

 お前のことも知りたいからな!」


 そう言ってまず名乗りを上げたのは、ザック。

 彼は紅色の髪と瞳を持つ、THEガキ大将な見た目の快活な少年で、その快活さは日に焼けた肌と顔や腕などにある擦り傷や切り傷などからも伺える。

 次に名乗りを上げたのは、ローナ。

 彼女は肩口で切り揃えられた薄い桃色の髪に梔子色(くちなしいろ)の瞳を持つ、エリーゼとは違った意味で掴みどころのない少女である。

 言動からフワフワした服装が似合いそうと思わせるほどに、本人もどこかフワフワとしている。

 最後に名乗りを上げたのは、エルロス。

 彼は、どこぞの特異点で人理修正を手伝う童話作家のような、正しく文芸少年といった碧髪メガネの少年だ。

 言動も見た目通り真面目で、他二人の様子から一番苦労していそうだと誰もが思うことだろう。

 また、三人はフラッドの二歳上であることも分かった。



「フラッドか!いい名前だな!」


「いい名前って、ザック君何も考えてないだろ?」


「俺のことは呼び捨てでいいぞ!君とか付けられると鳥肌が立って仕方がないからな!」


「僕のこともエルロスって呼んでくれていいからね?」


「私はぁ~ローナお姉ちゃんがいいなぁ~」


「ローナのことも普通にローナでいいと思うぞ?」


「むうぅ~ザックひどい~まぁいいけどね~」



 ローナとザックのやり取りに呆れながらも改めて友誼を結ぶと三人は笑顔で返すのだった。


「はぁ・・・それじゃ、改めてよろしくザック、エルロス、ローナ」


「おう!よろしくな!」「よろしく」「よろしく~」


 自己紹介もひと段落して落ち着きを取り戻したころ、ザックは思い出したようにこれからについて話し始める。



「んじゃ、これから遊ぶかっ!」


「遊ぶって、何して遊ぶの?

 僕みたいに、また誰かを埋めるとか言わないよね?」


「僕もやらないほうが良いと思うよ?」


「私は~なんでもいいよぉ~?」


「ん?埋めねぇよ!

 あれはフラッドが気付かないからどこまでやったら気づくかでやっただけでもう飽きた、それにそもそもやる相手もいないしな!」


「飽きたって・・・やられた僕としては堪ったもんじゃな

 いけどね?」


「そしたら、何をやるの?」



 エルロスが尋ねると、ザックは当たり前の事を聞かれたようなキョトンとした顔で答えた。



「ん?何ってそりぁ――」


お読みいただきありがとうございます。


今話でこの作品は十話目となりました!

読んでもらえてる事実だけでも意欲が増す思いですが、ブクマ等をしていただいている方もチラホラと居り感動しております。

前書きでも触れている通り、今後とも精進していく所存でありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

また、前話のような投稿ミスにも注意していきますのでそれらも含めてよろしくお願いいたします。


次話は3/3を予定しております

改めまして、誤字脱字ご報告いただいたものは極力修正していきますのでそちらもよろしくお願いいたします。


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