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息抜きシリーズ

その異世界転移はおかしいだろ パート3

作者: Tiroro

OLトモカの受難。その3.

 あたしはOL、お茶くみに定評のあるトモカ。

 そういえば最近変な夢見なくなったなぁ。

 あのパイナップル頭のインチキダンサー。見なきゃ見ないで寂しいもんだね。


 今日も今日とてネット小説を漁る。

 嫌なことがあったときは現実逃避に限るね。


 おお、あるわあるわ、あたしの大好物の悪役令嬢モノがたっぷり!

 どれから読もうかなぁ……あ、こっちの新作もいいなぁ。


 悪役令嬢と言えばやっぱり断罪イベントだよね!

 主人公だったはずのヒロインの見当はずれの断罪イベントを覆すときなんか、ほんともうスカッとするよ!


 あたしがもし悪役令嬢になったら、ヒロインなんてちょっちょいのちょいで泣かしてやるわ。


 そんなことを考えながら寝た晩のこと──────。


………………

…………

……


 うん……確かに悪役だねこれは。

 それについて否定する気はないよ、うん……。


 でもさあ……。

 でもさでもさでもさあ!


「「「押忍、姐さん!」」」

「なんで、スケ番なんだよおおおおおぉぉぉぉおおおおおっっ!!!!」


「姐さんご乱心!?」

「姐さんじゃねえよおおおおぉぉぉ!! トモカだよぉぉぉおおおお!!!!」


 異世界でもなんでもないじゃん!

 なにこれ? タイムスリップしたの? 昭和?


 よく見ると、なにやら透けてステータスらしきものやスキルが表示されている。

 ……ああ、そっか! これ、番長モノのゲームの世界なんだ!


「って!! なんでこんな世紀末みたいな世界なんだよ!! 令嬢にしろってんだろぉおおおおおっっっ!!!!」

「姐さん、大きな組のご令嬢ですぜ!」

「そういう意味じゃねえよぉぉおおおお!! ……あー、叫び疲れるわホント……」


 あたしの手に装備されているバールのようなもの。

 どうやら、これがあたしの武器らしい。


衛苦主狩罵亞(エクスカリバー)です」

「読めるかぁっっ!!」


 なんでそこだけファンタジーな名前つけてんだよ!

 頼むから、普通のファンタジー世界の令嬢にしてくれよ!


 いつもいつも、あたしが転移する異世界はこんなんばっかだ!

 もっと、こう王子様との素敵な出会いを育みたいんだよ、あたしは!


「姐さん、見てください! 屍羅義玖(しらぎく)の奴ら、徒党を組んで来やがりましたぜ!」


 取り巻きのヤンキー女が叫ぶ。

 口に装備したマスクには大きく×マークが。

 なんかのクイズの問題でお手付きでもしたのかこいつ。


「ワタクシは伽紗倫(きゃさりん)! この高校のスケ番で裏番でもあるトモカを討ち取りに参った!」


 あたしスケ番だけじゃなくてそんな重要ポジションだったの!?

 あと、なんで時代劇っぽい言い方してるんだ、この人!?


「姐さん、やるしかないですぜ!」

「売られた喧嘩を買うのはウチらのなんか、そういうなんかなんです!」

「そうなの!? そういうアレなのね!?」


 仕方ない……この手に持ったバールのようなもので伽紗倫とやらをヤるしかない。


「待ちたまえ、君達!」


 殺伐とした現場に轟く声。

 そこには白馬……じゃなかった、白い自転車に乗った変な男がいた。

 おそらくは学校指定であろうヘルメットもかぶっている。


「僕の名は米蹴(マイコー)。可憐な乙女達が僕を巡って争っていると聞いて馳せ参じた次第です」

「あなたなど知りませんわ!」

「あー、同じく」


 米蹴は泣きながら帰って行った。

 何しに来たんだ、あいつ。


「さあ、邪魔者は消えたわ! 存分に死合いましょう!」

「ちょ、ちょっと待って! なんでアタシら戦わないといけないの!?」


 伽紗倫は得物である釘付きバットを構えて言った。


「雌雄を決するためです!」

「あたしなら負けでいいから、その使い方を間違ってるバットをしまって!」

「「「姐さん!?」」」


 なんか子分っぽい人達があたしを驚いた表情で見つめてくる。

 いやいや、そんな顔したって、あたしアレだからね? ただのOLだからね?


「いつからそんな根性無しになったんだYO!!」

「はぅあっ!!!?」


 思わず変な声が出てしまった。

 この声は……このどことなく無駄にイケボなこの声は……!


「パイナポー!?」

「リズムを刻めYO!」


 声に釣られて実況をみてみたら、理想と現実のギャップを知らされた時のような何とも言えない表情でパイナポーを見る。

 ……完全に場違いだこれ。


「いいか、トモカ! 喧嘩もリズムが大事なんだZE!!」

「そもそもあたし喧嘩はしないYO!?」

「あなたが喧嘩しなくても、私は戦います! お命頂戴ござる!!」


 伽紗倫がバットを振りかぶって攻撃してきた!

 やばい! よけきれない!!


 ────ドゴォォォオン!!


 大きな音がして目を開けると、そこにはパイナポーがいた。


「パイナポー、大丈夫!?」

「グラサンが無ければ即死DATTA……」


 そうは言ってるけど怖かったんだ。

 自慢のヘタがしおれてる。


「あなた……なぜこの女をかばうの?」

「俺は伽紗倫に暴力を振ってほしくなかっただけDA」

「パイナポー……いえ、慕武(ぼぶ)……」


 なんか見つめあう二人。ああ、うん。いつものパターンだね。


「しおれたヘタは、また立ち上がる……だから、お前も上司に怒られたくらいでしおれてるんじゃないZE」

「そうよ、トモカ。あなたはまだ頑張れる」

「へ……?」


 まぶしい光に包まれる二人。

 てゆうか、なんであたしが上司に怒られたこと知ってるの?


「パイナポー、あんた……」

「時間だZE、次回こそは乙女ゲーに転移できるといいNA」

「あんたってもしかして……」

「まあ、変な世界になるのは俺のせいだがNA」

「やっぱお前のせいかぁぁぁあああああっ!!」



………………

…………

……



 そして、ジリリリとなる目覚まし。

 ああ、最悪だ。また変な夢見ちゃったYO……。



 『しおれたヘタは、また立ち上がる』────ね。

 会社へ行くのは鬱だけど、もう少し頑張ってみますか。

読んでいただいてありがとうございました。

ルビ疲れた……。

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