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「あれっ、寒くない…??」
湯〜ゲルンの外、吹雪荒れ狂う中に飛び出したブランは、とっさに目をつぶったが、吹きつける雪の冷たい感覚に襲われることはなかった。
「結界だ。しかもあったかい…」
三人それぞれの周りには、球状の結界が張られており雪を防いでいた。
結界内に湯気が漂っている所を見ると、それはロジ・マジによるものであるようだ。
数分もすると、3つの結界は空中で静止した後に、地上に降りた。
「ここは一体??」
結界の外は、数歩先も見えないほどの吹雪である。
「さ、雪妖が追ってくる前に結界を広げておくかのぅ」
ロジ・マジが杖を振ると、驚くべきことに3つの結界は、重なり膨らんでいき、ついには周辺一帯をすっぽりと包み、雪を止ませてしまった。
「あ!!ここは…」
雪が止んだ景色を見て、ようやくブランは、そこが「ロジ・マジのほこら」の近くである事に気づいた。
切り株はすべて雪に埋まり、森の木々もアリッサの背丈くらいまでは、雪につかっている。
ロジ・マジの結界は、森全体に及んでいるようで、さすがに大魔導師というだけの事はある。
「この結界は、雪と寒さを防ぐためだけのもんじゃ。すぐに奴はここにくるぞ」
ロジ・マジがそのようにつぶやいた、まさにその時である。
ヒュゥゥ……
結界内の気温が一気に下がった。
一同が上空を見あげると、そこにはヴィシュメイガが冷たくたたずんでいた。




