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ようやく湯〜ゲルンに戻った一行は、ロビーに一人佇むポッテヌを発見した。
「ポッテヌさん!!」
ブランの声に振り向いたポッテヌは、皆の姿を見ると顔をほころばせた。
「おお、戻ってきたか!!おや、もしかするとそちらは…」
「あんたのことだから察しがついてるかもしれないが、ロジ・マジだよ」
アリッサがぶっきらぼうに伝説の魔導師を紹介する。
「なるほどなるほど。確かにあの木像にそっくりですなぁ」
ポッテヌは、大いに感じいった様子で、ロジ・マジに挨拶をした。
「ポッテヌ、現状は一体どうなってんだい??」
そんな挨拶はどうでもいいとばかりに、アリッサがポッテヌに聞く。
「うむ。まだ結界は破られておらんのだが、建物の周囲におびただしい数の氷狼が現れてな。ガラス越しにこちらを威嚇してくるので、とにかく混乱を避けるために、全員を二階に上げたところだ」
「それであんたはここで見張りをしてたってわけかい」
「うむ。まあ、見張った所で皆が来る前に結界が破られればどうしようもなかったのだがな」
しかし、元行商人の老人に見張りをさせるとは、キャトやフリントのような若者は何をしていたのだと、ブランは腹立ちを覚えた。
「あ、ポッテヌさん。これ、ありがとうございました」
結局使わず終いであった「素人の盾」をブランが返そうとすると、ポッテヌは手を振ってそれを制した。
「いやいや、まだ持っておきなさい。私には他にもいくつか身を守る術があるから」
「でもー」
ブランが遠慮をしようとしたその時である。
ドカァァァン!!!!
アリッサの残した結界もろとも、ロビーのすべてのガラスが吹き飛んだ!!




