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「去年の温泉の時、ドロシーさん、出発当日の朝に熱が出ちゃって、しかたなく留守番になったのよ」


「ああ、確かにそうだった」


フリントが思い出したように声を上げる。


「だからさ、アリッサさんとしても今年こそは一緒にって気持ちがあったと思うのね」


「……………」


思えば、自分はアリッサが行事に「きちんと」参加する事ばかりを考えて、彼女の気持ちを受け止める努力を全くしてなかったなと、ブランは恥じ入るような気持ちになった。


「まあでも、アリッサさん、ニーゲルンには行くと思うから大丈夫よ」


メディナは、確信を持った口調でその理由を話し始めた。


「ドロシーさんの話だと、彼女の部屋に行った時、旅行の準備がしてあったって。まあ、ああ見えてからっとしたとこのある人だし、自分なりに割り切って腹をくくったんじゃないかしら」


そこまで言うとメディナは、何か考えをまとめる様子で一瞬間をとり、再び言葉を続けた。


「ブランにあたったのは、まあ……『抗議の意志表面』みたいなものなんじゃないかしら。それを、自分の気持ちがわかってもらえそうな人…つまりはブラン、あんたにしただけで、本当は最初っからあきらめはついてたのかもねぇ」


「でも僕は、アリッサさんのそんな気持ちに全く気づけませんでした」


ブランがうつむき気味にボソリと口を開く。


「そりゃさ、最初は仕方ないよ。みんなそうやって現場で悩んで覚えていくことだからね」


「そうだぞ、ブラン」


いつの間にかフリントは、メディナに便乗して励ます側にまわっていた。


「さてと、あたしはそろそろ帰るとするか。仮眠とる時はちゃんと毛布かけて寝るんだよ。じゃないと、疲れがとれないからね」


メディナがいかにも母親然としたアドバイスを残し事務室を後にすると


「さてと…じゃあ俺、先に仮眠もらうな」


どよんとしているブランといるのが気まずい様子のフリントも立ち上がり、そそくさと退出してしまった。


一人残されたブランは、それまでおざなりにしてきた分を取り戻すかのように、メディナの言葉をかみしめ、アリッサへの思いを巡らしていたのだった。


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