60
ミミが開いた青い扉の裏側には、やはり赤い扉と同じ様に文字が刻まれていた。
下に降りたフェルナンドがそれを読み上げると、一同の顔には驚きが走った。
そこには、以下のような一文が刻まれていたのだ。
『青き鍵、第二の鍵。始まりの湯の底を開くもの。ユガルタ深くへと続く扉を守る鍵』
「……………」
ユガルタの迷宮……その入口付近を調査した学者達の説によれば、建造されてから千年は経過しているという。
温泉魔導師ロジ・マジによって、雪妖ヴィシュメイガが、迷宮の最下層に封印されたという言い伝えが、三百年前の話である。
それ以前のユガルタがどのような場所であったか、今や知るものは誰もいない。
正確に言えば、長命な大魔導師の中には、把握しているものがいるのかもしれないが、そのような者達は、もはやあまり現世との接点を持ってはいないだろう。
先出の学者たちからは、何かの墓所ではないのか、いや魔界の入口があるのではないか、など諸説が飛び交っていたが、いかんせん、迷宮の中に入れない以上、どれも決め手に欠ける空論にすぎなかった。
「何はともあれ、さすがにこの先は危険そうですよね…」
ブランの言葉に、答えられる者はいない。
「とりあえず、一度ロビーにー」
ポッテヌが言いかけたその時である!!
「た、た、た、助けてください!!」
黒い礼服を着た中年男性が、ブラン達のいる部屋に転がりこんできた!!
「ミックさん!!」
ちょうど、梯子を登り浴槽から顔を出したミミが声を上げる。
その男が、先ほど湯〜ゲルンに逃げ込んだ時、ニコライの周りにいた使用人の一人であることを、ブランは思い出した。
男は、恐怖に満ちた表情のまま、一番近くにいたポッテヌにとりすがった。
「ロ、ロビーに魔物がっ!!旦那様がぁ!!」




