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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

あの子のふとももはエリクサー

勇者な自分は聖女なこの子に落された

作者: くうや
掲載日:2017/02/06

いちゃいちゃ回。

俺は高校二年の一般男子・新藤晴一しんどうはるひと

魔王討伐の為に召喚され、聖霊エリの力を持ったエリスと共に魔王を倒し以下略。


「……なんじゃコレ」


どうもおはようございます皆様、どうお過ごしでしょうか。

本日もいつもの様に朝日を目覚ましに起床し、

元気にニョッキリ体操をする我が息子をなだめるべく起き上がったのですが……


「息子が居ないんですケド。家出してるんですケド」


そこはまぁ良い。

良くは無いケド、とりま置いといて。

髪も肩元まで伸びてるけど置いといて、とりま置いといて。

発した声がどっかの萌え声っぽい高い声なのは置いといて、とりま置いといて。

問題はそこより我が視界にずっと映り込んでる半球状の物体だ。

ふよふよしてて、ぽよんぽよんしてるん。

おもむろに興味本位で触れてみれば……まじ柔い。

マシュマロかよ。

誰だよ俺の胸に巨大マシュマロくっ付けたヤツぁ。

こんな悪戯すんのは国王かアイサだな?

そうに違いない間違いない。

「夢の中でもケーキを食べたいのじゃ!」とかほざいて、

人のベッドをケーキまみれにしやがったあいつらならやりかねん。

絶対そうに違いない。


「ハルヒトさーん。もう朝ですよー? 起きて下さ―――」


俺より早く起床していたエリスがぐーたら寝ている俺を起こしに来てくれる。

そしてエリスはベッドの上で呆然とする俺を見て固まり、

その光景はさながら水面下の金魚みたいだ。


「ハ、ハルヒト……さん? その、姿……」


エリスは困惑しながらそう言葉を発する。

俺も寝惚けた頭と意味不明な現状に脳みそが追い付かず、返事が出来ない。


「勇者、勇者ぁあああ大変なのじゃ~! 北の魔王がぁあー!」


「おいいいいこのタイミングでそう言う話持ってくんなってアホかぁあ!」


しかしそんな俺の寝惚け頭を面倒事混じりの一言が横殴る。


「そうは言ってもおぬししか頼めるのおらんしぃ。

 ってどうして勇者におっぱいが……まぁそれは良いとしてぇ」


「人が困惑してる問題を短く終えるなよ! てか良くねーよ!」


「それより大変なのじゃ~!

 北の地へ調査に行ったカーラがうっかり魔王に憑りつかれたんじゃよぉ!」


「おい、色々突っ込みどころ満載だがとりあえずカーラって……

 俺をこの世界に呼んだ異世界召喚師か? 

 って行かないからな! つーか俺の状態見て? 女体化してるから無理!」


「どーせ行く事なるんじゃからぁ~早く聞いて?」


「むしろその前に俺の話を聞いてくれませんかねっ!?」


早朝から埃と共に厄介事が部屋へ転がり込む。

そして国王はいつもの調子で椅子に座ってくつろぎ始め、

俺の主張は右から左に流される。

ああ……4代目エリスのお気に入り椅子がまた悲鳴上げてんじゃん。

お願いだからそれに座るのはやめて。また壊れる。


「で、さっきの話じゃがのう~。

 北の魔王とは東西南北を支配する中でも最強と呼ばれておる存在なんじゃ~」


「すいません国王サマ。お断りと言う方向は?」


「他の勇者おらんから無理じゃのぉ~。

 なし崩しで行く事になるんじゃし一緒一緒」


「くっ……何も言い返せねぇ。

 わーったよ行きゃ良いんだろ行きゃぁ!」


「しかし気を付けるんじゃぞぉ。

 北の魔王は全てを切り裂く能力を持つ魔王の中でも最強と呼ばれておる。

 恐らく今までの魔王達とは比べ物にならん程に強敵じゃろう。

 心して挑むのじゃ……」




□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □




そして俺達はすぐに北の地に渡り、魔王の居城へ向かった。


「くっくっく……よく来たな勇者よ!

 我こそが北の地を治めし魔王、凍てつく刃の異名を持つ者!

 さぁ今こそ剣で全てを語り合おうぞ! 来るがよい!」


太もも聖水エリス付与剣斬りカリバーァアアアアア!


「グワアアアアアア!」




□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □




魔王討伐と異世界召喚師カーラの救出を無事に終え、俺達は王都へ戻った。


「勇者待って、色々待って。早すぎるから。

 1日で討伐とか日帰りツアーみたいにマッハされてもめっちゃ困るんじゃが。

 最強の魔王とか心せよとか念押しして送り出したワシの立場無いんじゃが」


そして魔王を倒したが依然として俺が抱える大問題は解決していなかった。

唐突の謎の女体化……。

国王に相談してもわからず、

エロエットに相談しようにも仕事でどっか行ってて宛てにならず、

ダメ元でウチの最弱ロリ魔王に相談をしてみた。


「パパさまの中に西の魔王の魔力が残っておるのう。

 戦いの際に何か魔術をかけられ、それが女体化させる物だったようじゃな。 

 今まではママさまと一緒に居る事で発動前の状態で止まっておった。

 しかし魔王のわらわが来た事でその均衡が崩れ、発動したんじゃな!」


「お前のせいかぁああああああああああい!!」


「あじゃー!?」


「ハ、ハルヒトさん! アイサちゃんをいじめちゃダメですっ!」


原因とも言える話をされて思わず取り乱してアイサにアイアンクローをかます。

あのホモ魔王め。

居なくなって今も尚、俺を苦しめるか。


「ママさまーママさまー。パパさまが酷いのじゃー。すんすんっ」


「……ブリっ子してんじゃねぇよロリ魔王。

 ってぇ事は俺ってばずっと女のままなのか?

 どうにか戻る方法は無いのかよ」


「無理に戻す方法もあるが悪化しかねん故、オススメはせんのじゃ。

 まぁ言うても3週間ほどで戻るじゃろうて心配はいらん」


3週間って約1ヶ月じゃんけ。

これはさっさと北の魔王を倒しておいて正解だったかもしれないな。

そして元に戻るまでは部屋に引き籠るのが一番と見た。

幸い、東西南北を支配すると言う魔王は全部何とかした。

暫くは国王から無茶も来ない筈だろうし、大人しくしてよう。


「そうなのですか……約3週間、なのですね」


「みたいだなぁ。治まるまで部屋に引き籠ってるか―――」


「じゃあこうしては居られませんねハルヒトさん!」


籠城を決め込めるべく、ベッドの中に潜っているとそんな言葉が。

顔を出せば口元で手を合わせたエリスさんが天使スマイルを浮かべ、

こちらを見やる。


「折角の機会です! 

 可愛いお洋服いっぱい探しに行きましょう! 街へお出かけしましょう!」


我が天使マイエンジェルは俺の考えとは裏腹な悪魔的提案を笑顔と共に向けてきた。




□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □




そして昼下がり、エリスと共に城下町へ行く事になって服屋を回る羽目に。

正直、ちょっと服合せすれば終わりとか甘く見ていた……。


「あのエリスさん……その、流石に下着はですね?

 持ってきたスカートの時点で色々不安と言いますか、スースーしまして……」


「スカートは自分が穿いてる物と同じ丈ですしスースーするのは慣れます♪

 大丈夫ですよ!」


「いや、そう言う話じゃ無くてですねぇ……」


現在6件目のお店で服選びの最中に御座います。

訴えの声を上げてもこの調子で聞いて頂けない。

それどころかこの服はあの服はと新しく選んじゃって手に負えない。

どうすっかなぁ……止めるに止めれないし、

服選びをしながらはしゃいでるエリスがこれまでに無いほどに可愛いんだ。

いつもの自分なら、

『可愛いエリス見れてんだからオールオッケー♪』で終わる。

が、今はそうも言えないのだ。


と言うのも通り過ぎる客と言う客が必ずこちらを見て通り過ぎて行くのだ。

恐らくエリスを見たついでに一緒に居る俺を見やってるだけなのだろう。

しかしその何の変哲もない視線すら今の自分には怖い。

色々な物があいまって見られるのはめっちゃ恥ずかしいのだ。

そして極め付けはこのランジェリーコーナーである。

……いくら体が女だからと言っても流石に下着コーナーは拷問ですよ先生。

エリスは慣れてるから良いだろうが、俺は昨日まで男だったんですよ?

並べられている下着を見るだけでもハズいのに、

「これ、絶対似合いますよ♪」とか広げられても返答出来ません。


あと出掛ける為、適当に合わせた下着や服がところどころ窮屈で辛い。

胸とか結構パッツンパッツンで息苦しいのですぐにブラジャーを外したい。

なのでマッハで部屋に戻って叫びながら胸の圧迫から解放されたい。

ですからこの場から早々に退散したいです。

逃げ出したいです。早く帰りたいです。


「いらっしゃいませー。

 下着選びにお悩みの様ですねお客様」


しかしそんな願いも許されない様で、店員さんがにこやかにこちらへ。


「この服に合うのを探してるんですけれど、ナカナカ決まらなくて」


「なるほどですねー。

 確かにこう言った色合いだと濃い色じゃ透けちゃいますから迷いますねぇ。

 そうなると白が良いですけれど手入れが大変だったりしますし―――

 うん? お客様、少々失礼しますね」


「え、ハイ自分っすか!? 何でしょーか……あひゃいぃっ!!」


「やっぱり! 

 お客様、ブラのサイズが合っていませんね!

 これじゃ折角の大きなおっぱいが大変な事になってしまいます。

 お客様、今胸苦しくありませんか?

 よろしかったらお選びの下着からサイズ合わせ致しますよ」


「え、サイズ!? いや、そう言うのは結構で―――」


「え!?

 ハルヒトさんごめんなさいそこまでちゃんと考えてなかったです……。

 すみません是非お願い致しますっ!」


俺の主張はエリスさんに遮られる。

そして店員のお姉さんに連行され、抵抗する間もなく試着室へ。


「では失礼しますねー」


え、待って。

何でお姉さんも一緒に入ってくるの?

どうして俺の服を脱がして来るの!?

何でブラまで外してくんの!?


『サイズが違う上にトップとアンダーも合っていませんねぇ。

 じゃあ測りますよー腕を上げて下さいねー。胸隠しちゃダメですよー?』


『あひゃぁ!? ちょ、変なトコ触らな……ひゃー!』


『あらあら。Dかなーと思ってましたけどEはありますね。

 形も綺麗ですし、ちゃんとしたブラ付けないと大変な事なりますよー?

 で、付ける時ですがこうやって横のお肉もキチンと前にやって下さいね』


『あひゃい!?』


『くすぐったいでしょうけど我慢して下さいねー?

 で、ここをこうしてから……ホックを止めてぇ。

 こうやって、ハイ出来上がりです。ホラ、先程と見違えるようでしょう?』


『ひゃ、ひゃい』


『あとは付ける時の体勢ですが―――』


数分後、お姉さんによるブラ講座を終え試着室を出る。

お姉さんに上半身見られたとか触られたとか揉まれたとかまぁ色々あるが、

何と言うか大事な何かを沢山奪われてしまった喪失感がヤバイ。

待っていたエリスが荷物を抱えたまま赤くなり、少々前屈みになってたのは……

気のせいだろう。うん。


女の子の買い物って長いってマジなんだな……疲れる。

そして会計後に店員のお姉さんから水着コンテストなる物のチラシを貰った。

お姉さんから「結構イイトコ行くと思いますよ?」なんて言われたが、

実際自分は男なだけにその評価を前に嬉しい様な恥ずかしい様なと複雑であった。


さてこれで終わりだやっと帰れるかと思えばそんな訳も無く、

その後も色々な店を回って部屋に戻る頃には日がとっぷり沈んでいた。




□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □




―――あれから数日が経った。

女体化を理由に俺は部屋へ引き籠り、缶詰生活を送っている。


「エ、エリスさぁ~ん?

 流石にこのフリフリは自分にはどうかなって思うんす」


「そんな事無いですよ! 絶対似合いますってー。

 黒髪ですからドレスの真っ赤もきっと合いますし、

 フリルの白も対比色で映えますよ!」


必死に拒否の声を上げるもエリスは手にしたドレスを向けてくる。

……このどっかのドールが着てそうなドレスを着れと?

いやいやいやいや。

確かに今の俺は体が女。出るとこ出て、スタイルは良いかも知らん。

しかしどう言っても顔は俺だ。

目付きが良くない事で定評のある隣の新藤さんちのせがれだ。

そんな俺がこんなドレス着て見ろよ。

その絵面にお隣のおばちゃん全員爆笑しながら卒倒するわ。

まぁつっても異世界に居るので会う事も見せる事も無いが……。

とりあえず、それくらい似合わないって話だ。


「大丈夫です。絶対似合いますよハルちゃん・・・・・


が、そんな俺の意思とは反してエリスは今一度そんな言葉を向けてくる。

そしてその中の一言は得も言われぬ違和感と何かを伴って俺の中をすり抜けた。


「い、いや、似合わないって。

 体は女だつっても顔は俺だぞ? 駄目だって……」


「そんな事無いですよ?

 ハルちゃん可愛いですし、絶対似合います。

 試しにちょっとだけ着てみましょう。ね?」


エリスの言葉は宥める様な、言い聞かせる様な柔らかさを含む。

そして今一度「ハルちゃん」と呼ばれ、不快とは違った何かが心の中で湧く。

いやハルちゃんて……。

そんな風に呼ばれたの記憶すらおぼろげな子供の時以来だ。

それゆえか気恥ずかしさも入り混じり、余計に抵抗が生まれる。


「……駄目ですか?」


「そ、そうじゃない!

 そうじゃなくて変だったらヤダなってだけでうん、駄目とかじゃないってか」


少ししょんぼりした様子のエリスを前に思わずそんな言葉を言ってしまう。

……これはあかん。

確かに嫌ではあるが、この子が元気なくなる方がもっと嫌だ。

どうせ元に戻るまでは部屋から出るつもりはないし、

最近じゃアイサも国王とつるんで部屋に居ない事が多い。

そうだな、エリスの前だけで着れば良い話だ。うん。


「ただ恥ずかしいからさ。

 まぁちょっとだけなら、うん。良いって言うか……」


その言葉にエリスは満面の笑みを浮かべ、喜びを露わにする。

やっぱこの子が喜んでくれる方が良いや。

恥ずかしいけど少しの間だけだし、体は女だから気にする事は無い。

そんな言葉を繰り返しては自分を納得させ、沸いた何かを落ち着かせる。


「それじゃそれじゃあ折角だしメイクもしちゃいましょう!

 そうすればもっともっと可愛くなりますよ!」


更にテンションの上がったエリスはそんな提案と共に化粧道具を用意する。

寝る時とかに何度か見かけた事のある物で、この子が普段使っている物だ。

……そう言えばこうやってキチンと見るのは初めてだな。

そんな考えに更けていると懐かしい匂いがふわりと鼻を掠める。

どっかで嗅いだ事ある様な……ああ、母親の匂いだ。

親の寝室の鏡台に漂っていた独特の匂いと似てるんだコレ。

何だか凄く昔の事みたいに懐かしいな……ってそうじゃない。

ちょっと待って。

服を着るのに化粧までする必要ないんじゃなかろうか。

そこまで本格的にしなくても……。


「エ、エリス。流石にそこまでしなくて良いんじゃ」


「駄目ですよ。折角お洋服着るんですから、ね?」


エリスはそう諭しながら鼻の頭へちょんと触れると子供を諭すように。

自分は抗う事も出来ず手を引かれると椅子へ着席させられる。

そして髪を梳かれて軽くルージュだけを引かれ、鏡を向けられた。


「ね。大事でしょう?」


何て事だろうか。

鏡に映った顔は自分の物だと言うのにまるで別物の様であった。

いつも機嫌の悪い猫の尻尾みたいなはねっ返りの髪は、

手入れをされた猫の様に艶やかさを放ちながら美しく流線を描く。

控え目な色を乗せた自分の唇は小粒のダイヤを乗せた様に煌めき、花びらの様。

これ、俺なの……?

しかし部分的に女性っぽさが前面に出ているせいでアンバランスさも覚える。

未完成品、とでも言おうか。

気付けば『きちんとしたらどうなるんだろう?』なんて心情が顔を覗かせる。

そしてそれを察したかみたいなタイミングでエリスは俺の肩へ手を乗せ、

後ろから身を寄せてくる。


「折角女の子なんですからもっと可愛くなりましょう? ハルちゃん」


小さく囁かれたその言葉は耳元で甘く名を口にされた以上の何かを伴い、

腰から背をゆっくりなぞる。

それは頭の中で並べ立てていた物を溶かし、考える事を奪う。

ああそっか……自分、今は女の子だから別に化粧しても良いのか……。

気付けばそんな言葉が溶けた中から顔を出し、

自分はエリスの言われるまま身を任せていた。




□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □




「そうかー。パパさまはずっと引き籠りぱなしなのかー」


「ごめんねアイサちゃん。元に戻るまでもう少し待ってね」


「わかったのじゃー。

 国王とプリンプールで遊んでくるから大丈夫なのじゃー!」


部屋の外で会話が終わると元気な足音が去って行く。

仮にも義娘と言う立場のアイサを放置中なのはいくらか心が痛んだが、

数百年も生きてるなんて話を思い出す。

待て。

よくよく考えたらBBAババアもイイトコじゃん。

面倒見るとか立場逆だろ。

介護ならまだしも。

なら放置でも問題無いなうん。

―――そんな事を考えているとエリスが部屋へ戻ってくる。


「ごめん、本当なら俺が話する内容だったんだろうけど」


「いえいえ! 大丈夫ですよ。

 国王様もご理解して下さっていますし、本当はいけないんでしょうけれど、

 そのご厚意に甘えてしまいましょう」


エリスはそう口にすると苦笑を浮かべながら部屋の中を一望する。

……現在、部屋の中は街で購入しまくった服が山の様に並べられている。

今この場には軽く100以上の洋服があると思う。

ベッドと鏡台とドアに続く場所だけ辛うじてスペースを残し、

劇の衣裳部屋かどっかの洋服屋かと錯覚するくらいに服だらけである。

一応購入の際にエリスを止めたのだが、

『着れるのは今だけなんです!』と暴走して気付けばこんな有り様だ。


「流石にこの状態で中に入れる訳にもいかないしな……」


「だ、大丈夫ですよ!

 体が戻ったらちゃんと仕舞いますから!

 今だけだから大丈夫なんです、良いんです!」


赤面しながらパタパタと手を動かし、エリスはやらかした事を必死に誤魔化す。

これだけの服を一体どこに仕舞うと言うのだろうか……?

今度からかう時にでも聞いてみよう。


「では今日はこれを着てみませんか?」


そして今日も今日とてエリスさんによる着せ替えのお時間となる。

エリスはショッピングで服を選ぶ様におもむろに服を手に取り、

俺に着せたい物を選ぶ。

エリスが選んだ服を着て、

髪の手入れや化粧をして、

またエリスが選んだ服を着て。

ここ数日こんな感じで1日を潰している。


まぁ悪くは無いのだが、何かちょっとした仕返しでもしたいなーなんて。

気付けばそんな悪戯心がおもむろに顔を出し、

俺はこの前ワザと買った小さいサイズの白ブラウスと紺のスカートを手に取る。

これは俺のサイズじゃ小さく、入らない。

しかしエリスは入るサイズの物だ。


「それも良いけど間違って買ったダブりのこれはどうかな。

 こっち俺着て、エリスがサイズちっさい方着ればおそろ出来るよ?」


「……ふぇ?

 い、いや! どうして自分ですかっ!?

 てかそれはハルちゃんの為に買った物であって、

 そもそもサイズが合わないですよ……ほら、おっきいですし!」


「大丈夫だよ。

 だってエリスのサイズに合わせて買ったんだよコレ」


「え? だってこないだ間違ったって言って、

 その後にわざわざ同じ物を買いに―――」


確認する様にそう口にするエリスに向けて俺は軽く笑い、

悪戯をしでかした子供の様に舌を出して見せる。


するとぽかんと口を開けて放心したかと思えば見る見る顔が赤く染まる。

そしてやっと意図を把握したようで手に持った服で赤い顔を隠す。


「ばか! ハルヒトさんのばか!

 どうしてそう言う事するんですか!」


僅かに顔を上げ、エリスはジロリと視線を向けてくる。

だって俺が服を選んでもどう言う訳か凄く嫌がるし、

そうなるとこう言う方法しかないじゃん。

それに―――


「エリスと一緒に着たいと思ったんだけど、ダメだった?」


「そう言う聞き方はズルいです……断れないじゃない、ですか」


顔を隠していた服をおずおずと下ろし、フイっと顔を逸らしてそう答える。

ゴメンと何度か謝るが拗ねた調子で頬を膨らませ、

まともに受け答えしてくれない。

けれど俺が渡した服はしっかり受け取り、

それを手にそそくさに部屋の隅へ隠れると数分も経たない内に姿を現わす。

流石だがエリスさん着替えるの早すぎじゃないっすかね……。


「つ、次はハルヒトさんですよっ!」


「そんなに怒らなくても……」


「そうじゃないんです、服を脱いじゃうと女の子じゃ無くなっちゃうので……

 それに恥ずかしいんです! もう変な事言わせないで下さいっ!」


キッと一睨みしながらそんな言葉を向けられる。

ああ、そう言う事なのか。

そこまで考えてなかったゴメン……と謝るも今の俺はそれどころじゃなかった。

白のブラウスと紺のスカートを穿いたエリスを前に思わず頬が緩む。

自分の好きな相手が望んだ格好をしてくれた。

これ以上の嬉しい事があろう事か。


「ちょっとハルヒトさん聞いてますかっ! 

 そ、そんなに見ないで下さい早く着替えて下さいっ!」


白のフリル付きのブラウスに紺のスカート……ジャンパースカートだっけ?

俺の世界だと『童貞を殺す服ドウテイスレイヤー』等と呼ばれる組み合わせだ。

エリスなら似合うだろうなーと睨んでいたが案の上であった。

そんな至福に満たされていると早く着替えて下さいと叩かれまくり、

エリスに手伝って貰って同じ服に着替えた。

まぁ終始俺がニヤけ顔だったのは言うまでもない……。



□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □




「やっぱりこれは胸がある人がする格好です」


「そう? エリス似合ってると思うんだけど……」


互いに着替え終わり、化粧などを終えるとエリスはむくれた顔でそんな一言を。

ベッドの上で2人して座ってくつろいでいるが……何とも。


「そんな事無いですよ」


相変わらずそっぽを向いたままで、どう言う訳か顔を合わせてくれない。

さっきの会話を思い出す限り、

目の前で着替えさせる様な無茶を言ったのがまずかったみたいで。

うーん。

どうしたらわからん。

わからんので、強硬手段に移りたいと思います。


「わっ、わ!? ハ、ハルヒトさん!?」


「あーひっさびさだな。エリスの膝枕」


ゴロンと横になり、久し振りの感触に安堵する。

そう言えば東の魔王以降、俺のレベルが上がりすぎて、

エリスの太ももで回復する機会が減ったんだよな……。

で、アイサが来た事でプライベートで膝枕して貰う事も減ってたんだった。

そう考えるとほんと久し振りだ。


「もうっ……。折角セットした髪がぐちゃぐちゃですよ」


「だってこうやって2人きりなの、久し振りだし。

 膝枕も最近してないなーって気付いたら思わず」


俺がはにかむと仕方ない人ですねと観念した様子でエリスは頭へ触れてくる。

最近甘えてなかったし、たまには許される筈さ。うん。


「やっぱエリスその服似合ってる。可愛いよ」


「……自分より可愛いハルちゃんに言われてもですね。胸もあるし」


「か、可愛いのはその、俺が女になってるのとエリスの化粧のお陰だろ?

 てか胸は違うだろ胸は!」


「それ抜きで考えても、ですよ」


思わず反論するもエリスさんは頑固として譲らず。

と言え俺もそこに関しては譲れないが……逆に考えればそう言う訳か。

自分が好きな相手だから一番可愛いと。

そう言う訳ね。

まぁエリスにそう言われて悪い気がしない自分も居るし、

正直に言えばそんな風に見られどこか嬉しい自分も居ると言う何とも変な心情。

そしてそんな感情は思わず変な言葉を零させる。


「じゃ、じゃあさエリスから見てどれくらい可愛いの?」


気付けば興味からそんな事を言ってしまう。

上から覗き込んでいるエリスは俺の問いにきょとんとした顔で固まったままだ。

その沈黙は俺の頭を冷やさせるには充分で、

我に返った自分は言った言葉の内容に対して一気に恥ずかしくなる。


「ご、ごめ! 今の無し! 忘れてっ!」


何言っちゃってんのよ俺。

思わず撤回しようと慌てると頬をそっと触れられる。


「どれくらいかって言うと、ですね…………」


エリスが問いに答えつつ微笑んだと思ったのも束の間、視界が暗転する。

―――いや、厳密には視界が遮られ見えなくなった。

と同時に知っている柔らかさとは違う熱さを伴った柔らかさが唇の上に触れる。

かかる吐息はエリスの感情を伝える様で、

香るエリスの匂いはいつもより甘さが濃く。

そして何が起こったかと確認する間もなく触れ合う時間が終わったかと思えば、

赤らみながら笑顔を見せるエリスの顔が視界に映る。


「こ、これじゃ足りない、くらいです」


エリスは小さく舌を出しながらそう言ってくる。

それと同時に何をされたかやっとわかった俺の顔は熱を持つ。

いあ、え、今のってまさか、いやいやいあいや……。

でも柔らかかったし、うん!?

ちょっとこう言う時どう反応したら?

いやまぁしたいと思ってたよ?

むしろ一緒に温泉入った時にしようとしたし、

アイサの邪魔が無かったら絶対してたし。

でもこう言うのって普通男の俺からするべきじゃ?

って俺今女だし、エリスは実際男だからってそうじゃなくて。


「あれ……ハルヒトさん」


「ハイなんでしょう! やっぱ俺からすべきでしたよね!

 セカンドシーズンは是非俺からと行きたいと思いまして!?

 ―――あ、あれ、どうかした?」


「あの、その胸がと言いますか」


そう言って向けられる視線の先をおもむろに触れる。

するとここ数日あった高い双丘はなだらかな平地と化していた。


「む、胸!? てか声も戻ってる!?」


飛び起きて体を確かめてみれば俺の身体は女体化が解け、男に戻っていた。

おかえり息子。

てか何で戻ったの?

アイサの話じゃ3週間近くは女のままって話だったハズだ。

まだ10日くらいしか経ってないぞ。

まさかエリスのチューでホモ魔王の魔術が解けたとか?

なんて考えてたらエリスの太ももに目が行き、そう言う事かと理解する。

要するに聖霊エリの力が籠ってる太ももで膝枕したから解除されたって話か。


「折角可愛かったのに、ちょっと勿体無かったです」


そしてウチのお姫様は残念そうにそんな事を小さく呟く。

まぁ気持ちはわからなくもないがそれ以前に……


「とりあえずこの服、全部どうすんべ」


「問題無いですよ。

 詰めたりして修正しやすい物を出来るだけ選んで買ってますから」


「……そっか。後から自分で着れる様に考えてたんだな」


「いえ違いますよ?」


向い合せに座るエリスは首を傾げるとふふっと笑う。

いやまさかと脳裏に過るのも束の間、

エリスは俺の唇へ人差し指を宛ててくる。


「ハルヒトさんが着るんですよ?」


「待った待った!? 

 てか俺、男だからね!? 女体化解けたからね!?」


「大丈夫ですよ。

 またお化粧して、髪も手入れして、色々すれば女の子になれますから」


「いやそう言う事じゃ無くて、その……

 女の格好してたのは体が女だったからだし、言うて俺だぞ」


「それを言ったら自分も性別で言えば男です。

 けれどこうやってスカートを穿いてる時は……女の子になれるんです。

 だからハルヒトさんも、女の子になれるんですよ?」


エリスはスカートを軽くパタパタさせながらそんな言葉を。

チラチラと見える足は色白で、そのラインは確かに少女そのものだ。

……しかしそれは幼少の頃からそう言う教育を受けてたからだし、

エリスの中身が女の子だからな訳で。

 

「大丈夫ですよ。

 また可愛くなれますから、ね?」


返答に困る俺の手へそっと触れながら笑顔と共に向けられる言葉。

それは俺の中にある恥ずかしさと言う殻に仕舞い込んだ物へ手を添えると、

その殻を容易く融かしていく。

俺は中で僅かに生まれてたその感情を隠す様に思わずエリスから視線を逸らす。

だがそれすらも理解した様子でエリスは触れた手に少し力を籠め、

もう一度小さく「ね?」と、問いかけてくる。


ああそっか。

この子の心は女の子その物かもしれない。

けれど体は男であるから同時に男の事もわかるのだ。

女の子でありながら男の感情も解る。

故に俺が覚えた物ですら気付いたのだろう。


「まぁ、服も勿体無いし……エリスの前でだけなら、うん」


俺の中に沸いた感情の蓋を開けたのはエリスであり、

それが生まれたのもエリスが喜ぶならと言ったのが理由だ。

好きな相手が喜ぶ事をしたい。

ただそんな簡単な内容で、


「はい。また可愛くなりましょうね。ハルちゃん」


こうやって嬉しそうな笑顔の為に答えたいと思ってしまう。

そんな単純な理由だ。

こんな事を思う様になったのはいつから何だろうなんて遡ってみたけど、

一目見た時からこの子しか見えてなかった。

魔王ラスボスを倒す為に喚ばれた勇者な自分は、聖女なこの子に落された。

……しかしこれじゃどっちがラスボスだかわかんないな。

おもむろにスカートを弄っているとそんな言葉がふと浮かんでいた。

途中で水着コンテストに参加して、その最中に北の魔王が復活してひっちゃかめっちゃかなギャグで終わらせる方も考えたのですが、今後の展開を踏まえて当初に決めてた話に戻しました。

やっとチューしたと言うか何と言うか。


ディープなチューになりそうでしたが止めました。ハイ。

早く結婚しろよこいつら。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒロインが男の娘なら主人公を女にすればいいじゃない! って発想ですねすげぇな。 冒頭のインパクトでは二話を超えましたね。 何でも切り裂ける能力って超便利そう、と思ったら瞬殺された魔王様は哀…
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