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声をかけられて驚いた。
そしてその声をかけてきた人物の顔を見てまた驚いた。
その顔を知っていた。でも私に声をかけてくることなど今までなかった。
その女の子は、私と同期で入った子だった。
そして私がコネで入ったといわれているから近づいてくる事などなかった子だった。
そんな子がどうしてと思ったのが私の正直な感想だった。
「えーっと……ラーニャさんだっけ?」
「はい、そうです。私の名前、知っていたんですね……」
「一応、同期の名前は把握していますよ」
幾ら交流がないとはいえ、同期である。魔法師団の同期なんてそこまで大人数が居るわけでもないし、そのくらい把握している。
「えーと、ラーニャさんはどうして私に声をかけてきたのですか」
正直それが分からない。
私に何か文句を言いたくて声をかけてきたのか、とも思うけれどそういう風な敵意は正直見られない。人間観察をずっとしてきた私だからその位はわかる。ならば、どうしてだろうか。
今まで私に声をかけてくることなんてなかったのに。
「えっと、その……ノーヴィスさんはコネでこの魔法師団に入ったといわれていますが」
「ええ、不本意ながらそうですね」
うん、本当不本意だけどね。コネで入団なんて私していないもん。
「正直そうは思えなかったので、気になっていて」
「わかってくれたのですか!!」
「……は、はい」
私が急に声をかけたからか、ラーニャさんが驚いたような顔をしているが、そんなの構いなしに私は声を上げる。
だって嬉しいもん。私の事わかってくれる人が出来たんだって思うと、嬉しすぎて仕方ないよ。
私だってこのまま誤解されっぱなしというのは、不満だったのだもん。私はコネで入団したわけでは全然ないのに、コネで入団したって言われ続けてボッチ生活強いられるなんてなんていう悲しい事!
「私はコネでなんて入団してません! これもヴァルが私に能力があるからとかいって入団させたせいなんですよ! そもそも私の目標は表舞台に立つ事ではなく、のんびりと後ろの方から活躍する人たちを観察したり、美しいものを見続けたいのです! それだけだったのに、そもそも入る気もなかったのに!!」
本当、それだよ! 私そもそも魔法師団に入る気なかったんだよ! 入る事受け入れて入ってみれば、ボッチ生活突入とか、この悲しい事実ね。
「入るのは結局私が納得したから仕方がないとしてさ! でもあのヴァルのせいでまさかの嫉妬とコネ疑惑でボッチとか思わなかったのですよ!!」
「あんた、図書館では静かにしないかい!!」
「すみません!」
思わず叫んでいたら司書のおばさんに怒られた。
でも誰かに伝えたかった。この気持ち! ついに話せる人がきたかと興奮する私の気持ちを誰かわかってくれないだろうか。
ちなみにラーニャさんは凄いぽかんとしているよ。
ラーニャさん、眼鏡かけていてちょっと地味に見えるけど結構可愛いよね。こういう可愛い眼鏡っ娘が私に話しかけてくれるなんて私は嬉しいよ。
「え、ええと」
「はい」
「……ノーヴィスさんは入りたくなかったの?」
「はい。元々のんびり、魔法師団とかに入らず生きるつもりだったので。そもそも派手で目立つ仕事とかする気なかったので」
「サラガント様に無理やり入れられたの?」
「……そうですね。結局納得はしましたが、私には能力があるからって入るようにと言われたので」
うん、納得はしたよ。入る事は。ボッチ生活の納得は全然してなかったけど。
「ノーヴィスさんの、能力って? 私が聞いた限りは、その……本人に言う事ではないだろうけど大したことないって」
「ああ……その、私人間観察とかが趣味なので、隠密系の魔法が得意なのです。攻撃系の魔法とかは本当得意じゃないのですよ」
「……そうなのですか?」
「はい! 私よくヴァルの所まで隠密系の魔法使ってうろうろしながら向かったりしてますけど、誰にも気づかれてないですし、大得意です!」
「えええ? そんなことを?」
「はい。そういうことは大得意なので!」
本当にね、私はここが乙女ゲームの世界だって知った時に観察したいって思ったもの。だから沢山隠密系のこそこそして、観察できる魔法だけ磨き続けた。その結果、学園で一反乱あった時にどうにでも出来たのだけど。あの時は隠密系の魔法勉強してて良かったと本当に思ったの。
「そ、そうなのですか。なら、私たちは誤解をしていたのですね。すみません」
「ラーニャさんは謝らなくていいですよ! ヴァルが悪いので!」
「……あの、今まで話しかけていなかったのですが、これからは話しかけてもいいですか?」
「もちろん! 私はボッチ生活に疲弊していたので、とても嬉しいです。でも、大丈夫ですか? ラーニャさんはこうして私の誤解わかってくれましたけど、他の人たちは私の事誤解してるままでしょう? なら私に話しかけるとラーニャさんまで……」
「いえ、誤解だったのですから、私はノーヴィスさんと仲良くしたいと思いましたから、話しかけます。私は大丈夫です。そして、頑張って誤解解きます!!」
自分は大丈夫だから、話しかけるといってもらって私は凄く感激した。
というか、
「ラーニャさん、超天使」
そんな感想を抱いたぐらいだ。
「へ?」
「自分は大丈夫だからってそういってくれるなんて凄く天使。ラーニャさん、ありがとう。天使のラーニャさんのおかげで私はボッチを脱却できるし、ラーニャさんに何かあるなら絶対助ける」
「え、ええ」
「私の事はヴィーと呼んでください。敬語もいりません」
「う、うん。ヴィー、ちゃんも敬語いらないよ。私の事はすきに呼んでくれればいいから」
「じゃあ、ラーちゃんとよぶね、よろしく!!」
そして、私はようやくボッチ生活から脱却できたのであった。
ラーちゃん、天使!!