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1/19 四話目
「ヴァアアアアルルルルルル!!」
「ヴィーか」
私は、実家からの手紙をもらってすぐにヴァルの元へと突撃した。
だって仕方ないじゃん!! ヴァルがなんとかしてくれるというから私は任せたのに、私とヴァルが婚約って何!? 意味が分からなすぎるよ!!
そんなわけで大声をあげて私はヴァルの執務室へ突撃した。他の魔法師団の団員がいたけれど知るか! ってことで突撃してしまった。その人は私に驚いたような顔をして、「失礼します」とそこから去っていった。
ヴァルは私の様子を見て、笑っている。——って、私がこんなに意味が分からなくなってるのに何でヴァルは笑ってるの!!
「ヴィー、実家から手紙でも来たか?」
「そうだよ!! ねぇ、ヴァル、どういうこと!! 何で私とヴァルの婚約が成立しているの!! 意味不明だよ!! しかも、ヴァルってモテモテでしょ!! 流石乙女ゲームの攻略対象と言えるだけ、異性にめっちゃキャーキャー言われているタイプじゃん。めっちゃ美形だし!! なんでそんなヴァルと私が婚約者!?」
「乙女げぇむ??」
「うっ!! ヴァル、それはスルーして!!」
……乙女ゲームのことヴァルは知らないのに思わず混乱して叫んでしまった。ちょっと落ち着かなければ。
「まぁ、確かに俺には縁談は沢山来てるが」
「だよね、知ってた!! ヴァルはモテモテだもん!!」
うん、私の幼馴染はモテモテだと知っている。昔から異性に好かれていたし。ヴァルって面倒見いいし、余計にモテてた。
「ヴィーが縁談がこれ以上来るのは嫌だと言っただろう。だからだ。俺と婚約していればヴィーには縁談は来ないだろう」
「それは確かに!! いや、でも駄目でしょ!! そんな理由で婚約するとか!! ヴァルだって好きな子とか、気になった子とかいるかもしれないのに。そんな理由で婚約するとか、どんだけヴァルは私に甘いの!!」
本当に、私が心配だからってそんな風にそんな優しさで婚約なんて結んじゃ駄目だと思う。確かに私には縁談とか来ないようになるから、その点はとても助かるけど!! でもヴァルがそれじゃあ好きな人と結婚出来ないじゃん!!
まだ婚約成立したてなら私に非があるって理由にして、婚約解消できるんじゃないか。そっちの方がヴァルが幸せになれると思う。というか、何でミミィさんとか私の両親たちとか止めないの!!
「それは心配しなくていい」
「は? 何で? これじゃあヴァルが好きな子と婚約出来ないじゃん!!」
「ヴィーは俺との婚約嫌か?」
「え」
ヴァルに問いかけられて考える。ヴァルとの婚約を。ヴァルとずっと一緒にいるという未来を。
いや、それは別に嫌な気持ちはない。というか、今までもヴァルは私の傍にいたから、ヴァルと一緒にいるのは心地よいし、生活はしやすいし。
うん、私からしてみれば子の婚約は縁談が舞い込んでこなくなるし、ヴァルと居るのは楽だしラッキーって感じだ。
「私は別にいいよ!! でもヴァルのことだよ。私のことじゃなくてヴァルのこと。ヴァルが結婚できなくなったりするかもじゃん!!」
「ヴィーがいいならいいんだよ。俺は望んで婚約を結んだから。それにこのままヴィーと俺で結婚すればだろ?」
「はい? 私は別にいいけど、だから、ヴァルが……」
「だから俺もいいって言ってるだろ。ヴィーは本当に鈍感だよな」
「はい?」
「俺はちゃんと自分で望んで婚約を結んだと言っただろう。俺は結婚するならヴィーがいい」
「……は?」
固まる私。ヴァルは今何と言った? 結婚するなら私がいい? ヴァルがそう言ったのか!?
「俺はちゃんとヴィーの事が好きだよ、結婚したいぐらいには」
「ええええ!? ヴァルが??」
「そう。だから俺のことは気にしなくていい。ヴィーは俺と婚約するのは嫌じゃないんだろ?」
「う、うん」
「それで、俺もヴィーと結婚したいと思っている。この婚約に何の問題もないだろ?」
「う、うん? 考えてみればそうかも?」
「だろ? もしヴィーが途中で嫌になったなら婚約解消することだってできる。それにこうして婚約をしたら他の縁談は来ないだろ?」
「え、うん。まぁ、それなら――」
「よし、それでいいな。で、用事はそれだけか?」
「う、うん」
「じゃあ、俺は仕事があるから」
「あ、ごめん!! 仕事中に。私、帰るね」
「ああ」
そんな会話をして、私はヴァルの執務室を後にするのだった。
あとから結局婚約がそのままになったこと、ヴァルに告白まがいのことをされたこと、そのままヴァルに混乱したまま説得されたことに気づいた。
「はっ、私、婚約解消しにいったのに!! なんだかんだ、ヴァルの婚約者のまま!? しかも告白まがいのことされた!? え!? いや、でも、まぁ、いいか?」
と結局、気づいたものの、今後私かヴァルに好きな相手が出来たり、婚約解消したくなれば婚約解消すればいいかと、そのままにすることになった。




