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「『魔法師団に、ヴィーア・ノーヴィスあり』『そのもの、彗星のごとく名を響かせ――』」
「……ヴァル、何読んでるの?」
魔法師団で活躍をしてきた私。活躍するのが当たり前! ってなって視線が減るのではないかと期待していたのにも関わらず、まだまだ私は注目を浴び続けている。うぅ……私の予想では今頃、もう少し視線が落ち着いているつもりっだったのに!!
ラーちゃんにはそんな簡単に視線はなくならないよと困ったように言われちゃったけどね。
……そんなわけで人前に出ると目立って仕方がなくて、視線を向けられるだけで落ち着かないのでこそこそしながら生活してる。
で、ヴァルの執務室によく逃げてきてるんだけど……ヴァルは新聞を読んでいた。しかも笑いを耐えながら、私を見ていて……私のことが書かれているものを読んでるのだ!! まったく、私が逃げてきているというのに、何故ヴァルまでも私のことが書かれているものを読んでいるのか!!
思わずヴァルのことを睨みつけるが、ヴァルは堪えた様子が一切ない。寧ろ楽しそうにしている。私に睨まれても怖いないというのか……まぁ、ヴァルなら私が全力でとびかかってもきっと簡単に対応しちゃうんだろうけど。それだけヴァルは強いし、私を知っているから。
「ヴィーの記事だよ。頑張ってるな、ヴィー」
「私頑張ってるんだよ!! 目立たないようにしようって思ってるんだよ!! でも視線凄いよ!!」
「そりゃ、そうだろう。これだけ素晴らしい活躍を見せれば目立つだろう」
「……活躍が当たり前になればって言ってたじゃん」
「それはまだまだだろ。継続してこれだけの活躍をずっと続けてこそ、ヴィーが活躍するの当たり前となるんだから。それにヴィーが目立って、注目を浴びているのはヴィーがこそこそしているからというのもあるからな?」
「え」
「ヴィーが任務中は姿を現すのに、活躍を終えるとすぐ隠密魔法で消えるからだろう。魔法師団でも落ち着かないとかいって、姿を現す気が全くないわけだし」
ヴァルにそんなことを言われる。確かに私は目に見える形で目立つように任務中は行動を起こしている。だけど、それ以外は隠密魔法を使ってこそこそとしている。だって行動した後に、ずっと注目を浴びつづけるなんて嫌だもの。褒められるのは嬉しいことだけど、囲まれるのは恥ずかしいから!!
「だからな。目立つと決めたのならば、とことん開き直って目立てばいいのに。それをしないでこそこそするから余計に目立つんだろうが」
「えー……」
そんな風に言われたとしても、ずっと注目を浴び続けられるなんて絶対に嫌だもん。
……うーん、でもこうして適度にこそこそしていたとしても、そのうち私という存在が当たり前になって注目されなくなったりするだろうか。
結局、こうして魔法師団に所属しているだけでも目立つことは当たり前と言えば当たり前だけど……、うーんとなってしまう。
「ヴィーはな、いい加減諦めて注目されて目立つことを受け入れればいいのに」
「いや、うーん、私ってそういうキャラじゃないじゃんか。ヴァルとかはこう……物語とかでも主役キャラ感じだろうけど、私は脇役って感じだよ? 私よりも美男美女が活躍したほうが芽生えいいしなぁ」
「ヴィーは昔からそうだよな。なんというか自分のことを脇役と思っているというか……。ヴィーは脇役などではないだろう。昔から目立つし、凄く個性的だろ」
「うーん」
そう言って此処は乙女ゲームの世界で、ヴァルたちは乙女ゲームの主要人物だし。私は欠片も出てこない存在だしなぁ。
そういう気持ちを当たり前のように考えてしまうのは、私は此処が乙女ゲームの世界だという認識を前提に考えているからと言えるだろう。
「まぁ、ヴィーが何でそんな思考をしているのかは分からないが、ヴィーだって十分主役になれるよ。というより、誰だって見方次第では人は主役だろう」
ヴァルにそんなことを言われる。誰だって主役かぁ……。とはいってもなぁ……、とヴァルを見る。ヴァルは乙女ゲームの攻略対象だっただけあって綺麗な顔をしている。女の私よりもずっと綺麗な顔をしていて、顔面格差を感じる。
「うーん……でも目立つの落ち着かない。……けど、魔法師団で頑張っていくって決めたし少しずつ慣れていかなきゃかぁ」
あーあ、目立ちたくはないって、落ち着かないってそんなことはもう言っていられないか。もう目立ってしまっているし。その辺もどうしていくか考えて行かないと。まだまだ、私は目立つことに慣れてはないけど、それでも少しずつ慣れた方がいいかもね。
そんなことを考えながらヴァルと話していた。そのあと、寮に戻ったら実家から手紙が届いていた。
その手紙には驚く事が書いてあった。それは私に縁談が来ているということだった。




