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1/13 二話目
さて、魔法師団の本部に無事帰還出来た。
ちょっと予想外のことは色々と起こってしまったけれど、無事に魔法師団に戻ってこれてほっとした。それにしても、ほっとして、帰ってきたという気持ちになって――私、ちゃんと魔法師団の本部を帰る場所として認識しているのだなと自分で驚いてしまった。正直言って、そんな気持ちは最初は全くなかったから。
だけど、いつの間にかちゃんと帰る場所になっていて、魔法師団の一員であるということを私はちゃんと誇りに思っている。
誤解を解きたい、ぼっちは嫌だって思ってたけど、交渉から帰ってくるとますます私は目立ってしまっていた。確かに交渉の場で私は魔力を感知して開戦派を捕えたりはしたよ!! したけれども、私以上に頑張ったのはヴァルじゃん。私は確かに頑張ったかもしれないけど、ヴァルとか、あと他の魔法師団の皆がいたからこそなんだよ。私があそこで隠密魔法を使って好き勝手出来たのも、一人ではきっと難しかっただろうし。だから、私だけ凄いみたいに急に注目されてもなんというか、納得が全く出来ない!! というのが正直な感想なんだよね。
そもそも私は目立つこと得意じゃないから、相変わらずこそこそしてしまうんだけどね。
コネ入団ではないと認めてもらえるのは嬉しいし、魔法師団の一員として活躍できることはもちろん嬉しいことなのだけど!!
「ねー、ヴァル、急に凄い注目度MAXな感じなんだけど!!」
「それはそうだろ。ヴィーは活躍したからな。というか、今までのコネ入団疑惑が不当な評価だっただけで、ヴィーはちゃんと有能で、魔法師団で活躍できると俺も母さんたちも知っていたからな。今の方が正当な評価だ」
「むー、そうかもだけど!! コネ入団疑惑が色々起こって完全になくなったのは嬉しいけどー!! でもそれでもさ、急に注目浴びすぎじゃない? 私ってば、注目浴びるのとか大嫌いなんだよ? こそこそ見て回るが好きな感じなんだよ? それなのに急に有名人とか、人気者みたいに囲まれるとか私のガラじゃないっていうか」
「落ち着かないか?」
「そう、それ!!」
私の容量を得ない言葉をヴァルは流石幼馴染と言うべきか、私の言いたいことをきちんと理解してくれていた。
さすが、私のおかん!! みたいな気分だよ、私は。
「……ヴィー、また変なこと考えていないか?」
「考えてないよ!!」
おかんと考えてしまったことも見破られてしまったかと慌てて私は否定の言葉を告げた。危ない危ない。下手に気を抜くとヴァルには私が考えていることなんて簡単にバレてしまうからな。
「そうか……。まぁ、いい。それよりヴィー。こんな風に注目されて人気者というのが嫌ならばもっと目立って活躍したほうがいいと思うが」
「え、なんで?」
活躍したからこそ、こんなに目立ってしまったのならばこそこそと頑張った方がいいのかと思っていたので私はヴァルの言葉に不思議に思う。
「何でも何も、これからもヴィーは何だかんだで活躍していくことだろう。その比類ない隠密魔法によって魔法師団に貢献するだろう。なら、貢献し続ければその活躍がいつしか当たり前にはなるだろう? 目立つことには変わりないかもしれないが、その方がもっと落ち着いた暮らしが出来るだろう」
「……うーん、それもそうかな? たまに活躍するとその時にスポットライトが当たるみたいな感じだもんね!! その時だけ主役になるみたいな。ずっと活躍しとけば、目立ちはするけどいちいち活躍した時に下手に騒がれないってことか! でもそんな活躍できるかな?」
ヴァルの言いたいことは分かったが、自分がそれだけ活躍し続けることが出来るだろうかと不安に思う。
私は乙女ゲームを間近でみたいというとても不純な動機で魔法を学んだ。その結果、隠密魔法はそれなりの腕にはなっているけれども、そんな魔法師団で活躍し続けるって難しくない? と思ってしまう。
「大丈夫だ。ヴィーは問題を見つける能力も高いし、その隠密魔法は十分この魔法師団で活躍できる。ちゃんと活躍し続けることが出来るさ」
でもまぁ、幼馴染がこんな風に断言してくれていると、出来る気がした。単純なのは百も承知だけど、ずっと一緒に居た幼馴染の言葉だからこそ重い言葉なんだ。ヴァルの言葉だからこそ、余計に響いて、私は魔法師団で活躍できるのだとそう思えた。
うん、過ごした時間ってやっぱり大事だと思う。一緒に過ごして、色んな経験をしているからこそ互いのことが分かって、互いの事をよく理解しているからこそこうして言葉に重みがあるのだ。
目立つのは嫌だけど、こんないちいち騒がれるよりはずっと活躍し続けそれが当たり前にする方がいい。
「よし、ヴァル!! 私、今より頑張る。ずっと活躍できるようにする」
「ああ。でも無理はしないように。ちゃんと目に見えて活躍するように動くのは良いことだが、功を焦って失敗したら元も子もないからな」
「ふふ、もちろんだよ!!」
私は心配性なヴァルにそう返事して笑うのだった。




