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 ヴァルと他の魔法師団の面々も含めて、共に交渉の場と指定された場所に向かう。

 その指定された場所は国境である。相手側から指定された場所で、交渉を行うというのは危険だ。相手が魔法師団の団員たちを捕えてさえいなければもう少しこちらに優位な交渉場所を指定することが出来たのだが、仕方がないと言える。

 ……っていうか、今回は交渉ということであの捕らえた女性もこの場には連れてきていない。連れて行って、女性を奪われて交渉のカードをわざわざ減らす真似はしたくなかったから。

 ……しかし、どうもドキドキする。魔法師団に入団して、こういう危険な任務するにしてももっと年数経ってからだと思っていたのだけど。アイドさんとミミィさんが私のことを信用してくれて、一緒に行ってほしいと言われたのだから。

 ヴァルと魔法師団の先輩たちと一緒にその交渉場所へと向かっている。

 ヴァルは何で涼しい顔しているんだか。こういう所は凄いと思う。うーん、魔法師団の団員として私よりもずっと動いてきたから?

 なんというか、ヴァルって私の前でただの幼馴染としている時とは違う表情を今しているっていうか、なんか不思議な気持ちになる。

 そもそも私は学園時代、魔法師団に入る予定なんてまったくなかった。今はもう魔法師団にすっかりなじんでしまっているけど、もし魔法師団に入らなかったら私は今、こんな風にヴァルと一緒にはいないんだなとは思った。

 社会に出て、仕事場が違ったら幼馴染とはいえ、話さなくなったかもしれない。距離が離れて、そのまま疎遠になっていたかもしれない。私が他の仕事について普通に過ごしている間に、ヴァルはきっと魔法師団で頭角を現していったのだろう。……目立ちたくないなとばかり考えていて、そういうこと考えていなかったけれど、魔法師団に入ったのもまぁ、ありだったのかなっては思った。

「ヴィー、いつもより口数が少ないな。緊張しているのか?」

「……そりゃあ、するよ。私、こういう任務初めてだし」

「大丈夫だろ。あくまでこれは交渉だ。滅多なことではヴィーが心配するようなことは起こらない」

「それは分かってるけど!! 私は超、緊張してるの!!」

 ヴァルとそんな会話を交わしていれば、周りの先輩たちに笑われてしまった。ああ、他に人がいる前で、ヴァルといつも通りに会話をしてしまった! やっぱり私は緊張して仕方がないのかもしれない。

 というかさ、ヴァルってば緊張した私を見て笑いすぎじゃない? なんなの? もっと緊張感もとうよって思ってしまうよ。

 これで緊張感がないままに、ヴァルが油断して死んでしまうとか嫌だよ? でもヴァルの表情を見る限り、本当に油断しきっているわけではないんだろうなっていうのは分かる。

 ヴァルってなんだかんだでやる時はやる人だからね!!

 しかし、なんだろう、私がこんなに緊張しているのに、ヴァルがこれだけ飄々としているとなんだか面白くない。よし、とりあえず、緊張しているなら緊張しているってことで緊張感をもってヴァルの助けになれるように頑張ろう。

 それにしても向こうでどれだけの人数が控えているかとかも不安だ。

 互いにどれだけの人数を向かわせるかという申告はしているけれど、それをちゃんと守るのか。開戦派を戦闘反対派がどれだけ抑えられるかにもよるけど。

 もう考えていたらどんどん不安になってきた。これで大量に敵がいたりしたらどうしよう? それに対して何が出来るっていうと、こそこそ行動するぐらいしか私には出来ない。

 直接対峙するのは無理だから、脇から行動不能にしていくことだね。もしそういう可能性が起こった時は私はそれを心がけよう。

 そう思いながらヴァルたちと一緒に進んでいった。

 近くに近づいた時に、様子見に先に行ってほしいと頼まれた。私の隠密魔法があれば、おそらく気づかれずに確認を出来るからって。ヴァルは少し心配そうにしていたけれど、こういう仕事をするためにここにいるんだから。

「ヴァル、大丈夫だよ。行ってくるね」

 私はヴァルを安心させるためにそう言って、偵察に向かった。

 


 それで偵察に向かって思うんだけど、思ったよりは人がいるイメージ。交渉の場に来ている人数は申告された人数と一緒みたいだけど、護衛の人みたいなのが少なからずいる。会話とか聞けないかなとこそこそしながらゆっくり近づく。

 今の所、気づかれていないっぽい。

 乙女ゲームの世界を覗き見するためだけに、磨いた隠密魔法だけど、磨いてきて良かったと本当に思う。

「――良いか、くれぐれも開戦派に好き勝手はさせぬように」

「分かっております。しかし、開戦派の手の者も此処にまぎれているでしょう」

「ああ」

 そんな会話が聞こえてきた。ふーん、なるほどなるほど、こうして人が増えているのは開戦派がまぎれたからというのもあるのか。

 そう考えていたらこちらに一人が視線を向けた。おお、やばいやばい! 気づかれるとやばいので私はそのままヴァルの元へと戻るのだった。



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