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「ヴィーちゃん……? っていうか、ここは?」

 不思議そうに馬乗りになったままの私を見つめるラーちゃんはぽかんとした表情を浮かべていた。

 その目には光が宿っている。

 私はそのラーちゃんのことを見て、ラーちゃんが正気を取り戻したのだということを知った。そして嬉しくなって、

「ラーちゃん! よかったあああああ」

 とラーちゃんに思いっきり抱き着いた。

 ラーちゃんは急に抱き着いてきた私に驚いた様子を浮かべていた。だけど私が顔を破顔させているからか、ラーちゃんも抱きしめ返してくれた。

 私は嬉しくて仕方がなかった。

 そんな中で、声が響く。

「ヴィーア!」

 その声の主はシエル君である。私はシエル君の声のしたほうを見る。……シエル君はあの女性を捕えて、魔法が使えないように特別な魔法具で体を縛っている。

 おお、流石、シエル君だ。私がラーちゃんの対応をしている間にちゃんとあの女性を捕えてくれていたらしい。

「シエル君! 良かった、そっちも無事だったんだ」

 立ち上がりながら私がシエル君に駆けよれば、ラーちゃんは「え、エブレサック様?」と驚いた声をあげていた。シエル君はその美しさもさながら、有名人だもんね。

 それにしてもシエル君に何もなくて良かった。シエル君が強いことは分かっているけれど、あんな人を操ることに長けている相手と一対一で向き合って、大丈夫なんだろうかって思ってたから。シエル君なら大丈夫だという気持ちがあっても、無事なシエル君を見るとほっとした。

「ああ。こちらは大丈夫だ。それで、ヴィーアの友人は正気に戻ったか?」

「うん。大丈夫だった。ありがとう、シエル君。ラーちゃんと向き合わせてくれて」

「それなら良い。じゃあ、サラガント先輩の所に戻るぞ」

「うん」

 そんな会話をした後、ラーちゃんを立ち上がらせる。ラーちゃんは混乱しっぱなしだった。ラーちゃんも操られていた間の記憶はないらしく、どうしてこんな状況になっているかも、何で有名なシエル君がこの場にいるのかも全てが分からない状況のようだ。私はそんなラーちゃんを安心させるために笑いかけた。

 詳しい説明は此処では出来ないので、魔法師団の本部に戻ってからになった。はやくこの女性も引き渡さなきゃならないし。

 ……ああ、でもこの女性以外にも魔法師団に入り込んでいる人がいるかもしれない。そう考えるのならば本当に信頼できる人がどれだけいるかも考えないといけないのか……。ああ、大変だ。こんな陰謀にまみれた事、経験したことないから不安もある。でもまぁ、ヴァルならきっと、どうにかしてくれる。私の幼馴染は、ちゃんとそのあたりをどうにかできるだけの力を持っている。そのことを実感し、私、ヴァルのこと信頼しているんだなーって改めて思った。

 攻略対象だったから有能であるというのは知っていたけど、そういうの抜きにして幼馴染のヴァルのことを信頼しているのだ。

 とりあえず飛び出して行ってヴァルも心配しているだろうから、おかんみたいに心配性なヴァルの事を安心させるためにヴァルの所に顔を出さないと。

 私はそんなことを考えながら、ラーちゃんたちと魔法師団の本部に戻るのだった。




 ……戻ったら当たり前だけど、注目されていた。隠密系の魔法を使って、こそこそとヴァルの元へ戻りたい! っていう気持ちになった。けどシエル君に「あれだけバタバタ出て行ったのだからあきらめろ」と言われてしまった。

 それもそうだろう。

 ラーちゃんのためにって思って、なりふり構わず追いかけたのだから、それはもう目立つのも当然である。

 私はこんな注目されるの苦手なんだけどな……と思いながら諦めてヴァルの執務室に大人しく向かった。こうしてこそこそではなく堂々とヴァルの執務室に行くことってあまりないのに。凄く視線を感じて気まずかったので、さっさと執務室に入った。

「ヴィー、良かった。無事だったのか」

「ヴィーア、シエル、無事に帰ってきたのね。あら、その女性が内通者かしら?」

 そこにいたのはヴァルとリーラちゃん、そして魔法師団のお偉いさんの顔もある。というか、ヴァルの両親もいる。

「ヴィー、お疲れ様の所、悪いけれど報告をお願いしてもいいかしら? シエル様も」

「はい。分かりました」

 私はミミィさんに問われて、これまで起こった事の説明を行った。私が話している間にシエル君から女性が魔法師団に引き渡されていた。

 私が説明をしている間、ラーちゃんは「……私操られていたのか」とつぶやいて茫然としていた。

 私の話を聞いたアイドさんとミミィさんは難しい表情を浮かべていた。

「……此処に入り込んでいた者と、魔法師団のメンバーを操っていたもの。それはどうにか膿を出さなければならないわね」

「あの捕らえた女から話をどうにか聞き出そう」

 二人はそう言いながら、尋問するための指示を出した。

 次にラーちゃんのことを見て、二人はどのように女性と知り合ったのか、あのぬいぐるみのことも含めて問いかけた。

「はい。魔法師団の団員でありながら簡単に操られてしまい、申し訳ありません。私に話せることは何でも話させていただきます」

 ラーちゃんも魔法師団の団員として操られたことがショックだったようだ。先ほどまでの弱弱しい表情から打って変わって、ラーちゃんは力強い目でミミィさんたちを見て語り始めた。




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