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「どうしたんだ?」
「それが……例のぬいぐるみの分析をしている方々の所へ向かったのだけど、そのぬいぐるみがありませんでしたの」
「……魔法が使われていたようだ。ぬいぐるみの事はまだ分かっていないとサラガントさんに報告し、行動を鈍らせていたようだな」
ヴァルの言葉に二人はそう答えた。
私はその言葉に驚いて思わず声をあげてしまう。
「えええ!? ぬいぐるみがなかったって……。それやばくない?」
「そうね。問題大ありだわ。分析している魔法師団の者達も知らない間に魔法をかけられていたみたいで、ぬいぐるみがなくなっていることも把握していなかったわ。ぬいぐるみが存在しないと思い込まされていたみたいね」
「それだけ大きな魔法を起こすのは、ぬいぐるみ経由では難しいだろう。おそらく魔法をかけた本人が出向いているだろう」
私の言葉に、リーラちゃんとシエル君がそれぞれいう。
って、魔法を行っている本人が魔法師団に出向いているってやばいじゃないか。大問題だよ!! 関係者以外入ることが出来ないってなっているし、セキュリティーだって高いはずなのに。
っていうか、関係者として潜り込んでいるのか、ただ忍び込んでいるのかっていうのも調べなきゃだよね。もし関係者として潜り込んでいるっていうのならば情報抜きだし放題だし、大問題だよ。
ぬいぐるみを私たちが手にして、何かが探られているってことは敵にも知られているってことだよね?
あと何で二人ともそんなに冷静なの? 私はこんな事態だというのに冷静すぎる二人にもびっくりだよ。もっとこう焦ったりしないの? 私は焦りまくりだよ?
これからどうしたらいいんだろう。ぬいぐるみ取られちゃったけどどうしよう。あのぬいぐるみは結局どういうものだったんだろうとか、頭の中がごちゃごちゃだよ!!
というか……、
「ラーちゃん!!」
ラーちゃんもやばいことになってたりするんじゃないかと思わず声が出る。
だって、ラーちゃんはもしかしたら関係しているかもしれないんだもん。ラーちゃん自身がその魔法を行ったって可能性もあるけど、私はそうではないと思う。ラーちゃんはぼっちだった私に話しかけてくれて、とっても優しい天使だもん。
ラーちゃんがそうではないとしても、ラーちゃんは何かしら接触されているはずだ。ならば……、この場合、ラーちゃんが危険なんじゃないかって焦ってしまう。
「ラーちゃんって?」
「ヴィーアの友人か?」
「うん。私の大天使で、優しい友達!! ラーちゃん、その魔法使った人に接触されている可能性があるの。だから私ラーちゃんのために動きたいって思って。それでヴァルの所に来てたんだけど。ぬいぐるみが奪取されているっていうなら、ラーちゃんも危険なのかなって思うと、いてもたってもいられない!! ヴァル、私、行っていい!?」
ラーちゃんに何かあったらって思うと私はそれだけで悲しい。魔法師団でヴァルと仲良しだからってぼっちだった私に話しかけてくれた天使。私の大事な友達。
その友達がどういう状況か分からないっていうのに、このままじっとなってしていられない。
「……ああ。この状況だとなるべくはやく事情を知るべきだろう。ただヴィー、ラーニャが敵だというなら、敵対できるか?」
「……うん。それなら問題ないよ。私はラーちゃんが敵ではないって信じているけど、もし魔法師団の本当の敵だっていうんだったらそれなら魔法師団の一員としてちゃんと行動するから」
ヴァルは私を心配そうに見ていた。私の幼馴染は本当に私に対してびっくりするぐらい過保護で、私の事を心配している。
でも私は大丈夫。
ちゃんと魔法師団の一員としてここにいるのだから、いざっていうときは動く。
「その怪しい子の所に行くなら私も行くわ。ヴィーアだけじゃ心配だし」
「なら俺も行こう。ヴィーアの友人が敵であるかははやく確認したほうがいい。それにもし敵じゃなかったにしても接触されているのならば何かしら分かるだろう。そのぬいぐるみ自体もあるかもしれない。なら、ちゃんと確認しないといけないしな」
「……それなら頼みたい」
「任せてもらってよろしいですわ。私とシエルがいるなら、人を操る魔法などどうにでもできますし」
「ヴィーアが操られたら困るからな」
リーラちゃんとシエル君は私がラーちゃんの元へ行くのについてきてくれるらしい。その方が心強いから私も助かる。ヴァルは魔法師団でもそれなりに地位が高いから私のように自由には動けないしね。
よーし、リーラちゃんとシエル君と一緒にラーちゃんの無実を証明するぞ。ラーちゃんが操られているっていうならどうにかしてあげたいし!! と私は気合を入れて二人を連れてラーちゃんの元へと向かうのだった。




