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と、そんな風に意気込んだものの相変わらず私は距離を置かれているという悲しい事実!
学園を卒業した私は、魔法師団に入団して、それに伴って寮で生活をしている。実家は遠いし、魔法師団の本拠地まで通うのは大変だったしね。元々学園生活も寮暮らしだったし、あんまり生活が変わった感じはしない。
お父様とお母様とお姉様とお兄様は、私があまり実家に帰らないし、卒業してすぐにこうして魔法師団に入団したから「たまには帰っておいで、ヴィー」って手紙が良く来る。私は末っ子だからそれなりに家族に可愛がられている。私としては次に帰るのは、魔法師団の夏季休暇の時かなって思っているんだけど、家族としてはもっとはやくに帰ってきて欲しいみたい。
それで、魔法師団の寮で暮らしている私はその食堂に居るわけだけど、ぼっちなんだよ! 一人寂しく食事をとっているなんてなんか悲しすぎるけど、事実そうなっているっていうね。
なんていうの、私はぶられ中。しかもあれだ、女子寮と男子寮分かれているわけで、女子寮だとさ、私とヴァルが仲良いのが気に食わないっていうのは先輩のお姉様方も思っていたりするわけで。私がこれで絶世の美少女とかなら「この人なら許せる」的な発言で終わるだろうけれども、生憎私はそんなものではない。見た目に関して言えばどこにでも混じる事が出来るぐらいの清々しいほどの平凡ぶりっていうね。
そんなことを嘆きながらも食事をとる。でもまぁ、寮の食事は凄いおいしいんだよね。学園ではさ、節約のために自分で作っていたのを思うと、此処の料理は美味しい。しかもね、魔法師団に入っているならただなんだよ!? ただでこんなおいしい料理にありつけるとかやばくない? って正直思うよ。もう、この食事だけは、魔法師団に入ってよかったなーって心の底から思える事なんだよね。
おいしいなぁーっとにこにこしていたら先輩のお姉様方ににらまれてしまった。うぅ、私は魔法師団に入団できるような実力のあるお姉様方に嫌われるなんて嫌なのにっ。だって怖いじゃないか。なんかね、学園の生徒たちから「気に食わない」って嫌がらせされるのはどうにでもできたけど、魔法師団に入団出来るってそれだけでプロって事なんだよ? そんな方々ににらまれるとか、もう本当に怖すぎるでしょ! うぅうう、ヴァルのせいだあああああああああああああああああってヴァルに今すぐ特攻したいような気分だよ。
っていうか、特攻しよう。うん、昼休み時間はまだまだある! ふふふっ、私は悲しい事に現在ぼっちであるから、お食事中に楽しくおしゃべりとか出来ないのである! あとゆっくり食べていると注目浴びるからおいしい料理をさっさと食べちゃっているっていうね! ああ、自分で考えていて悲しすぎるよぉおおおおおお。
なんていう思いは、この場で口に出したら絶対おかしいし、益々「なんだこいつ」となりそうなので自重している私なのです! でもヴァルへの特攻はするよ!
そういうわけで、私より二年早くに魔法師団に入り、それなりに良い地位に居るヴァルを突撃することにした。
食堂を出て、《姿隠し》の魔法を行使する。あと《気配遮断》も。これは私の得意分野である。観察とか大好きな私が、美男子美少女を観察するためだけに極めたものだけど、後ろで暗躍する存在ってなんかかっこいいと前世から思っている私なので、他の用途にも使う。
まずは、ヴァルの居る部屋まで誰にもばれずに移動する事が目標。学園では会長に見つかってしまって、それであんな注目される事になってしまったのだ。私の隠密系の魔法はまだまだということが、会長の手によって証明されてしまったということであるのだ。正直、それは悔しいしショックな事であった。だって私はバレないようにしたかったのに! そのために努力をしまくったのに!
そんなわけで、学園では注目される存在となってしまった私は、これからはもっと悟られないように頑張ろうと思って、魔法に磨きをかけた。前よりも見つかりにくくできている自信はある。流石にバレる時はバレるけどさ。
ヴァルの居る部屋は、魔法師団の分隊の隊長の部屋である。そう、我が幼馴染であり、私が魔法師団に入る原因になったヴァルは、魔法師団の十七番隊の隊長などという位置にいる。私? 私はまだ入ったばかりで見習いだよ。今後色々な研修を得て、どの班が適切か割り振られたりするらしいよ! 隊長には部屋が与えられたりするんだよねー。
途中ばれそうになりながらもがんばって部屋の前に到着!
あたりをきょろきょろと見渡して、人が居ない事を確認してからノックをする。
で、私は返事を待たずに扉を開けた。ヴァルは偉い人が座るような高級そうな椅子に腰かけていた。で、弁当を食べていた。あれはミミィさんお手製だな。
「ヴァルウウウウウウ」
「ヴィーか」
扉を閉めて、叫ぶ。ここは防音になっているため、外には声は漏れないはずだから問題はない。
「ヴァルのせいで私はぼっちだよ!」
「……俺のせいではないと思うが」
「いや、ヴァルのせいだよ!」
思わず叫んだ。こやつは、自分のせいではないなどと何をぬかすのか! ヴァルのせいじゃなければ誰のせいなんだよと私は叫びたい気持ちになった。
「何故、俺のせいなんだ?」
「何故って、ヴァルが私をここに居れたじゃないかああ」
「……最終的に入るって決めたのはヴィーだろう」
「そう、だけど!」
それでも全体的に考えてさ、ヴァルのせいだと思う。ヴァルのせい以外ありえないと思う。
「ぼっちとか寂しいんだよぉおおお。一人で食事とか」
「そうかそうか。俺と一緒に食べるか?」
「それは悪化するよ、ばかあああああああ」
ヴァルが原因でもあるのに、ヴァルと一緒に食事をとるとか、先輩のお姉様方にまた敵視されるよぉおおおおおおおおお。
結局叫び声を上げた私はヴァルに、「ここは誰も来ないからここで食べればいいだろう」って言われたけど、文句だけいってとりあえずその場を後にした。