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ペーペイトさんの出したラーちゃんの名前に私は驚いた。だってラーちゃんは私にとって天使のような女の子で、優しい子なのだ。
まさか、私に対する態度などが全て演技だとでもいうのだろうか。ううん、そんなことは考えられない。
ラーちゃんが自分の意志でそんなことを起こしているとは思えないし、思いたくもない。本当にラーちゃんがそんなことを自分の意志で起こしているのならば私の見る目がないって話になるけれども。
「ラーちゃんがそんなことをするとは思えないんだけど……」
「俺も、ラーニャの事は昔から知っているけど、人を操るとかそういうのを出来るやつではない」
私のつぶやきにペーペイトさんも言う。
ペーペイトさんはラーちゃんのこと好きだし、ラーちゃんと私よりも長い付き合いだ。ペーペイトさんにとってもラーちゃんからもらったものにそんな変な効果がついているなんて青天の霹靂だろう。私もペーペイトさんもラーちゃんの演技に騙されてしまったという可能性がないわけではないけれども、私はラーちゃんのことを信じて居たいと思う。
信じると決めた人、友達だって思える人――ならば、本当にそういうことを起こしているという確証が持てない限り、信じていたい。
「そうか……、ならば、本当はどういうことを考えているのかは調べる必要があるだろう。操られているだけだとしても、それを解除しなければならないしな」
「うん。そうだよね!! ヴァル、私に任せて。私が頑張る。そしてラーちゃんのことを絶対に助けるの」
「まて、ノーヴィス、それなら俺も――」
「そうだね、ペーペイトさんにも手伝ってもらいたいです。ヴァル、いい?」
「ああ。構わない。こちらでもこのぬいぐるみを預かり、調べよう。少し預かるが、良いか?」
ヴァルはペーペイトさんが私の手伝いをすることを了承すると、ペーペイトさんに問いかけた。
「はい。それは構いません。ただ終わったら返していただければと思います」
「ああ。それは当然だ。それとぺーペイト自身のことも調べた方がいいだろう。これから信頼できる医療魔法師に見てもらう。俺が医療系の魔法が得意だったら良かったんだが……。ヴィーもそういうのは得意ではないしな」
「私が得意なのは隠れたり、こそこそするのだけだしね」
医療系の魔法は正直言って得意ではない。私が得意なのはこそこそするだけで、他の事は得意ではないのだ。特化型なのだ、私は。万能に全て出来るわけでもないし。ヴァルは色々な事は出来るけれども、医療は無理なんだよね。
ペーペイトさんはヴァルが信頼している魔法師に見てもらうことになった。私は目立ちたくないし、あんまり周りにヴァルと仲良しって知られても面倒だからついていきたくなかったんだけど……、ヴァルが来てくれていうからついてくことになった。
ちなみにこの面子で移動すると目立つから、隠密魔法を使って移動する。ヴァルの部屋へと向かってから、ヴァルが人を呼び出した。医療魔法師の男の人がペーペイトさんのことを診てくれた。
ペーペイトさんには、やはり意識を奪う系の魔法が使われていたようだ。なんて恐ろしい魔法を使うんだろうかって考えてしまう。
そしてぬいぐるみについてもこちらは、ヴァルが詳しい人に回すとのことだった。うん、それが良い。こちらでは分からないし。
「それでサラガントの幼馴染か、この娘は」
「ああ。俺の幼馴染のヴィーアだ。ヴィーアは隠密系の魔法がとても得意なんだ。ペーペイトのこともヴィーアが見つけてきた。ヴィーアが見つけなければそのまま行方不明に陥っていたかもしれない」
「それは……問題だな」
「そうだ。その関係で、ヴィーアとペーペイトには動いてもらう予定なんだ。ヴィーアたちのことを手伝ってもらえればと思う」
「それは構わない。俺に頼むということは、医務室にも問題があるのか?」
「ああ。その可能性もある。現状、味方が誰かというのは分からない。だから、君に頼んでいるんだ」
「ふぅん。まぁ、いい。なら、手伝ってやろう」
……この先輩、結構偉そうだな。でもヴァルが信頼しているってことは、信頼しても構わないだろう。それにしても魔法師団って、一筋縄ではないし、大変だ。
あーもう、こういう面倒なことに関わるのって元日本人としては、ややこしいなぁ、うわーと思うけれども魔法師団の一員として働いているわけだし、きっちり原因を突き止めなければ。
それにしてもラーちゃんへの疑惑は本当にさっさとどうにかしたい。ラーちゃんは天使で、私の友達。だから、何かに巻き込まれているっていうのならば、その疑惑をどうにかしないと。
それにこれは、魔法師団自体の問題でもあるわけだし。
ぬいぐるみを調べるのはすぐには終わらない。私は私が出来ることをやって、魔法師団のために頑張るんだ。私はそう、決意した。




