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魔法師団の中で少しだけ私への誤解が減った事が私は嬉しくて仕方がなかった。
ラーちゃんもとても喜んでくれて、私は実家に喜びのあまり長文の手紙を送ってしまったぐらいだった。
そうそう、休みの日にはルビ先輩の所へ行ったの。
「ルビ先輩、私、脱ぼっちなのです!」
「良かったわね、ヴィー!」
ルビ先輩は、私が喜んで報告すると自分の事のように喜んでくれた。
ルビ先輩とお茶をしながら、ルビ先輩の赤ちゃんを見る。ルビ先輩も美人だし、会長とか超美形だし、絶対に美形に育つこと間違いなしだよね。まだ一歳にもならない男の子なんだけど、凄い可愛い。
私、結婚とか全然考えてないし、そもそもこの乙女ゲームの世界だからか美男美女率が高すぎて誰かと結婚するとか考えられないし。もしかして数十年後、一人寂しく独り身かもしれないっていう想像が具体的に出来てしまうぐらいだよ! まぁ、それでもいいんだけど。ひとまず、赤ちゃんは可愛いから愛でてしまう。
「それでですねー」
私はルビ先輩と会話を交わす事が好きだ。
乙女ゲームの期間中は唯一その話を出来る存在だったし、何より、ルビ先輩は優しい。
一緒に話していて安心するのだ。
そうして一心に魔法師団での出来事をルビ先輩に話す。とはいってももちろん口外してはいけない事は言わないけれど。誰と仲良くなったとかそういうのだけ言っているんだけど、ルビ先輩はにこにことしながら聞いてくれていて嬉しかった。
そんな風にしていたら、扉が開いた。
「ノーヴィス、久しぶりだな」
「会長、久しぶりですね!」
「……前々から思っていたんだが、もう卒業している俺を会長呼びはいい加減にやめないか?」
「えー、でも会長は会長ですよ」
なんというか、私の中では会長は会長としか言いようがないんだよね。会長呼び以外だとなんだろ?
「……アシュター公爵様とかですか?」
「ヴィー、もっと砕けた呼び方でいいと思うわよ?」
「そうだぞ、ノーヴィスと俺の仲だろう」
「……んー、フィル先輩?」
結局、会長の呼び方はフィル先輩になった。しかし、私、慣れないと会長会長って言いそう。
「それで、フィル、どうしたの?」
「ああ、ちょうどエブレサックの双子が来ているから会っていくかと思ってな」
「リーラちゃんとシエル君が?」
学園を卒業するまでの間にリーラ・エブレサックとシエル・エブレサックという同級生二人とは結果的にそれなりに話すぐらいには仲良くなっていた。リーラちゃんもサクシュアリ先輩と上手く行きだしてから私を恐ろしい目で見ることなくなったし。うん、ヤンデレは見ている分にはいいものだけどそういう目で見られると怖いと思った。
エブレサック家の双子は乙女ゲームの設定では家庭環境が崩壊しているヤンデレ双子だったのだけど、現実では母親であるリサ・エブレサック様の影響で家庭環境は良好なわけだけど。
ちなみにリーラちゃんはもうすぐ挙式予定なんだよ。もちろん、サクシュアリ先輩と。
それにしても王立魔法研究所という、王宮の中にある施設で働いている二人がここにきているのってどういう用件なんだろう? まぁ、公爵様とこの国で有名な双子の会話って仕事の会話なのだろうけど。
ルビ先輩とかいちょ……フィル先輩と一緒にリーラちゃんとシエル君の所へ向かった。
「ヴィーア、久しぶりね」
「ヴィーア、久しぶり」
リーラちゃんもシエル君も本当にびっくりするぐらい綺麗な顔をしている。人間じゃなくて人形だといわれても分からないぐらいに作り物のように美しい。王立魔法研究所の制服であるローブがとてもよく似合っている。
というか、私美男美女に囲まれている! と思うと何だか落ち着かない気分になった。
「リーラちゃん、シエル君、久しぶり!」
卒業以来、二人には会っていなかったから少しだけ久しぶりだった。
それにしても相変わらずの美しさ。これは色々と異性を惑わしているんだろうなーって思ってしまう。リーラちゃんはもうすぐ結婚するけど、シエル君はまだそんな予定ないみたいだし。
五人で机を囲んで、アシュター公爵の執事の入れてくれた紅茶を飲む。
「それでリーラちゃんとシエル君はどうしてここに? 私は遊びに来たんだけど」
「アシュター公爵家に軽々と遊びに来るのが流石ヴィーアよね」
「……共同で、魔法具を作ってる」
私の問いかけに二人はそんな風に答えてくれた。どうやらかいちょ……フィル先輩も共同という事で魔法具の作成をしているらしい。フィル先輩は公爵を継いだばかりで忙しいだろうに、そんなことまでやっているらしい。多忙だなぁ、私にはそこまで手が回らないと思う。
「そうなんだ。それにしてもその制服似合ってるね」
「ヴィーアは、魔法師団の制服着てないのね? 折角だから見せて欲しかったわ」
「非番なのできてないよ」
非番だから制服は着ていなかった。それにしてもリーラちゃんもシエル君も元気そうで良かった。
「そうそう、あとね、アイルアさんからお手紙が来ていたの」
リーラちゃんは笑みを零してそういった。




