18
魔法を使うのはやはり楽しい。命を奪う事は慣れないけれど、魔法を使うという感覚は本当にわくわくする。前世で魔法がなかったからこそ、魔法があるというだけでやっぱり私は興奮する。
……そういえばノノアンさんたちは沈黙している。ノノアンさんはどちらかというと困惑しているのだろうか。私はその様子を後ろから見ている。私は存在感を出来るだけ薄めている。味方であるノノアンさんたちや先輩にも悟られることさえもないぐらいに影を薄くしている。
ノノアンさんはやっぱり美人で、どんな顔をしていても様になる。見ているだけでも幸せな気持ちになる美男美女はやっぱりすごい。うんうん、やっぱりノノアンさんと私は仲良くなりたいなぁと思ってならない。だってやばくない? 綺麗な人に笑いかけられたり、名前を呼ばれたりしたら本当幸せだと思うんだよね。
「……ノーヴィスさんの気配がしないわ」
「本当に近くにいるの? 逃げたとかじゃなくて?」
ノノアンさんはともかく他の子達酷い。流石に私も逃げないよー。そう思いながらも出ていくタイミングが中々つかめなくて私はじーっと見ている。
どうしようかなぁ、とりあえず出る?
そんな思いで私は一旦姿を現す。
「ひどいですねー。流石に私も逃げないですよ?」
そういいながら姿を現したらびっくりした顔をしていた。
そもそもそんな逃げる必要も何もないし。んー、私への悪印象が強すぎるのが問題なのかな。このあたりもう少しどうにかしていかないとね。
「……ノーヴィスさん」
「はい、何ですか。ノノアンさん」
「貴方は、とても気配を消すのが得意なのね」
「はい。そういうことは大得意なのです!」
ノノアンさんが私の事をちゃんと見て言葉を交わしてくれている。ノノアンさんは私の事をちゃんと見ようとしてくれている。それだけでも私には嬉しかった。
他の人たちは相変わらず不服そうな顔をしているけれど、それでもいいんだ。少しでも状況が好転していくのならば。
「私は単体の攻撃力は凄く低いだろうけど、そういうことは得意なのですからね!!」
ノノアンさんが私の言葉を聞いてくれている。そのことが嬉しくて、自信満々にそんな事を言ってしまった。
「ふふ……そうなのね。ごめんなさいね」
ノノアンさんは私の様子にどこかおかしかったのか、笑って、そして謝罪をした。
他二人はどうして謝るのかと相変わらず訝しそうだ。うーん、もっと自分の力を見せつけるという私にとって不得意な事をどんどんやっていかなければならないのか。ちょっと苦手だけど頑張りますか。
だってね、正直私の魔法って目立たないんだよ。私が補助していたとしても、それを分からなかったりもするかもしれない。ならば、もっと活躍するだけだよ。私は同じ職場の人たちにはどうせなら嫌われるよりも好かれたい。
「私、サラガント様とのコネで入団したとばかり思っていたから……」
「ノノアン、こんな人に謝る必要はないでしょう!!」
「そうよ、先ほどだって本当に役に立ったか分からないでしょう」
「……貴方たちは分からなかったのね。まぁ、いいわ。貴方たちもいずれわかるでしょう。ひとまず私はノーヴィスさんに謝罪をしたいの。私は見る目がなかったみたいだわ。ごめんなさい」
ノノアンさん、私が補助していたことちゃんとわかってくれたんだ。良かった。それだけでも私凄い嬉しいから。
「わかってくれたなら嬉しいです」
「ごめんなさいね、この二人は分かってないみたいで……」
「いいんです。わかってくれる人が少しでも増えたらそれだけでも嬉しいですから!!」
本当に一人でも私の事をわかってくれているっていうその事実があるだけでも私は嬉しくて仕方がないんだ。少しでも状態が良くなっていくっていうのはそれだけで良いことだから。というか、綺麗な人がちゃんと私を見てくれたこと。それだけでも私はにやけそうだよ。だって綺麗な人は申し訳なさそうな顔をしていても、凄く見ていてニヤニヤしそうなんだもん。
とりあえず他の二人にもわかってもらえるように、私は精一杯頑張るぞー!
というかさ、ヴァルってそういうコネ入団とか嫌いなのにさ、ヴァルに失礼だよね、その考え方。うーん、ヴァルのそういう誤解も解きたいな。ヴァルがそういう誤解されてるのも嫌だしね。
まぁ、あとひとまずの目標は今一緒に動いている残り二人にも私自身の事を知ってもらって、まずは自分の誤解を解く所からだよね。
ヴァルと仲が良い先輩は私たちの様子を黙ってみていた。なんかヴァルに私の話行きそうだな。別に色々報告はするつもりだったからいいんだけどさ。ヴァルって結構過保護なんだよね。私の事心配しているから、私にも魔物退治終わったら何があったか教えるように言ってたし。
そう思いながらも私は頑張ろうと気合いを入れた。
もっと活躍して、私の事知ってもらうんだ!




