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私は嬉しくて仕方がなかった。というのも、ようやくタチークさんが私がコネ入団したという誤解を解いてくれたからだ。
魔法師団に入団してから、ずっとコネコネ言われて、ぼっち生活を続けていたことがとても悲しかった。そのぼっち生活からラーちゃんに出会って脱却出来たけれど、もっと誤解を解いて私は楽しく生きたいと思っていた。
元々魔法師団に入る気はなかったけれど、でも入ってしまったからには魔法師団は私の職場で、私にとって仲間とは仲良くしたいと思っていた。だからこそ、こうして少しずつでも近づいていけることが本当に嬉しいと思っていた。
嬉しくて嬉しくて仕方がなくて、私は浮かれてしまっていた。
ヴァルの元へと向かって早速報告をした。
タチークさんがわかってくれたんだ、仲良くなれそうなんだって。
「ね、ヴァルも喜んでよ! 私のぼっち生活が緩和されていってるんだよ!!」
「……そうか」
「あれ、ヴァル、ちょっと不機嫌?」
何だか喜んで報告しに行ったらヴァルがちょっと不機嫌だった。正直どうして喜んでくれないのかさっぱり分からない。
不思議な気分でヴァルを見る。
「……気にするな。それで?」
「タチークさんがね、私の誤解を解くの手伝ってくれるんだって。いやー、味方が増えるといいよね」
「俺も手伝う」
「ヴァルが手伝ったら益々あれじゃないか、色々言われそう。只でさえ、ヴァルが人気者だから大変なのにさ」
ヴァルが誤解を解くために手伝ってくれるのは助かるけれど、ヴァルと幼馴染で仲良いからこそコネ入団って言われているからなと思ってしまう。私が誤解を解くためにはヴァルの力ばかり借りるわけにもいかないのだ。
「……タチークのことでどのようにやっていくかは、俺に報告してくれ」
「タチークさん、多分裏切者とかじゃないよ?」
タチークさんのことを、報告してほしいなんて真剣な表情でいうヴァルに思わずそう口にしてしまう。ちゃんと情報収集して、タチークさんはスパイとかではなさそうなんだけどなー。まぁ、私の情報収集がうまくいってなくて実はスパイとかもあるのかもしれないけど。大丈夫そうな気がするんだけど。
そう思いながらヴァルを見る。ヴァルはため息を吐いた。何故に? 私は別にヴァルに溜息を吐かれるようなことは一切してないと思うんだけど。
「そういう意味じゃない。とりあえずタチークとか男と絡む時はちゃんと報告するんだぞ」
「えー、なにそれ。ヴァルってば私の貞操でも心配してるの? 私みたいな地味女にタチークさんとか凄い美少年が相手にするわけないじゃんかー」
「……はぁ」
溜息吐かれた。でも事実だと思うんだよね。というか、同じ魔法師団の仲間だし、そんな無理やりなことするような人いないだろうし。ヴァルは相変わらずお母さんみたいに心配性だなぁとそんな風に思ってしまう。
「ヴァルは本当心配症だね。大丈夫だって、私そもそもそういう暴漢とかいるなら自分で色々対処出来るし。というか、本当に無理だったらヴァル助けてくれるでしょ?」
「……もちろんだ」
「なら、何も心配いらないじゃん。ヴァルは私の味方だし、私が大変でも助けてくれるんでしょ。私一人でも対応できるだろうけど、ヴァルも味方だし、大丈夫だよ! 私の観察力甘くみないでね、大丈夫だから。というか、本当に無理そうならヴァルに頼るし」
うんうん、心配はいらないね。私自身でどうにでもできることもあるし、無理なら周りに助けてもらえばいいし。というか、とりあえずタチークさんに関しては、私の観察的に大丈夫だと確信してるし。そもそも本気でこそこそしている私に気づいてなかったっぽいからね、タチークさんは。それよりも魔法を使っている私に気づくレベルの人がどれだけいるか。気づいた上でのスパイがいたら大変なんだよね。
「そうだな。何かあったら助けるから、好きにやるといい。ただ、タチークとかのことはちゃんと報告しろよ。別にスパイとして疑っているわけではないからな。ただ個人的にちゃんと報告してほしいだけだ」
「そっか。んー、何でかわかんないけど、じゃあ報告するよ! 色々と報告するからちゃんとどうしたらいいか一緒に考えてね、ヴァル」
「ああ」
ヴァルのことは一切疑っていない。幼馴染として育ってきたから、ヴァルのことは信頼している。そう考えると同じ職場に信頼できる存在がいるってことはとても心強いことだよなぁと思ったりもする。
なんでそんなにタチークさんのこと報告してほしいのかは相変わらずわからないけど、ヴァルにも何かしら考えがあるだろうし、ヴァルは私より頭が良いしね。そんなわけで色々ヴァルに報告して意見を聞いていこうと思った私だった。




