#03冒険都市エルテリア
すいません><
少し微調整したものじゃなくて、修正前のファイルでUPしてました・・・
そして修正したものはなくなっていた・・・
覚えてる範囲で直しました。
宜しくお願い致します。
僕の目の前には、活気づいた人々で埋め尽くされた、大きな街が広がっていた。
僕の住んでいた村じゃ、村人は皆合わせても五十人もいないし、この街にくるときに便乗させてもらった隊商の方が、村の総数より多いくらいだった。
初めて村からでた僕には、この街に来る途中に立ち寄った街や村も、衝撃の連続だったけど、でもこの街はそれとも比べ物にならないくらいだ。
街を取り囲む大きな城壁は物々しいけど、城門を一度潜れば、小さい頃から行商のおじさんに何度もせがんで聞いた、憧れ通りの光景が目の前に広がっている。
街の中心に向かう大きな道の脇には、屋台が所狭しと並んで、道行く人々への店主からの威勢の良い声の心地よさと笑顔が眩しい。
喧騒の中を歩く人のほとんどは、見るからに冒険者という感じで、自分より大きな剣を背負った人、ローブに身を包み杖を持った人、軽装鎧を付けて弓を背負った人、ひと目で冒険者と分かるような雰囲気をしている人達ばかりだ。
世界の中心。
冒険者の聖地。
無限の夢が眠る街。
僕がずっとずっと憧れ続けて、夢に見ていた場所。
「世界の中心、ダンジョン都市エルテリア」
何もかもが新鮮なその街への好奇心に身を任せて、僕は行き先も決めないまま駆け出した。
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「全くやってらんねえなおい!」
街の中心にあるダンジョンの入り口から出てきた五人組の冒険者の一人から発せられた大声に、辺りの人は振り返った。
「あんたがとちるからボス討伐から逃げるはめになったんでしょうが! 反省しろ反省!」
「うっせえなレチル! そもそも後衛の火力不足で時間かかったから前衛の俺が支えきれなかったんだろうが!」
「うっさいのはあんたでしょうがライオス!! そもそも前衛って言ったってほとんど攻撃はレティアとカイ団長がやってたじゃない! あんたは時々相手を引き付けてただけでしょ!!」
「なんだと!? んなことねえだろ! なぁレティア、俺すげえ役に立ってたよな?」
「ふふっ。二十点かな」
「ほら見なさいな! あんたは二十点なのよ!」
「んな馬鹿なー!!」
「元気だなぁ君たちは、俺はもうヘトヘトだよ……」
「カイ団長。ご冗談は止めてください」
「冗談じゃないってシエル……、まぁみんな良くやってくれた、今度は絶対に討伐しよう。特にレティア、君には本当に助けられてばかりだ、ありがとう」
「そんなことないですよ。真面目に戦えば私より団長の方が強いでしょう? カイ団長」
「はははっ。お世辞が上手くなったなぁレティア。ともかく今日は残念会として、飲みに行くぞ!!!」
『よっしゃああ! 待ってました!!』
周囲の目など気にすることなく、大通りの真ん中を五人は歩いて行く。
五人の並ぶ姿は、はしゃいでいる様子だったが、やはり強者という名のオーラを醸し出していた。
周りの人々は自然と道を開け、彼らの背が見えなくなるまで見つめていた。
「この街三本指に入るギルド、<とある冒険団>の最強パーティ、やっぱり強そうだなおい」
「ああ、今九十人位の大ギルドになってるんだっけか? それにしてもやっぱ見惚れるなぁ……」
「流麗のレティア。やっぱいいよなぁ……。美しい……、いやもう神々しいな」
「俺はシエルさん派だな。あの冷たい目で睨んで欲しい……」
「え……、お前そっちの性癖だったの?」
「えっ、あっ、いや、なんでもない」
「全くあんた達最低ね。やっぱりカイ・アスランみたいにかっこよくて、強くて、柔らかい優しい雰囲気の男が理想だわ!」
『お前じゃ相手にされねーよ!』
「うっさいわね!」
彼らが通った大通りでは、大勢の冒険者パーティから同じような会話が、繰り返されるのだった。
「んでカイ団長今日はどの店に行く?」
「んーどうしようかな、皆何が食べたいかな、ん? レティアどうした?」
「今、裏街に歩いて行った子がいたの」
「裏街の奴じゃねえのか? あんな奴ら気にしなくていいだろ」
「そんな雰囲気の子じゃなかった、私行ってくる」
「あっ! おい!」
「しょうがないですね、私達も追いますか」
『了解団長』
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「あれれ……、迷っちゃったかな……」
おかしいな、街の中を散策してたはずなのに、いつの間にか路地に入って迷ってしまったみたいだ。
同じような細い道ばっかりだし、どんどん薄暗くなってきたし、とにかく早く大通りに出ないと。
しばらく違いのわからないような、細い道をぐるぐると歩いて、ようやく少し開けた場所に出た、先ほどまでと違い、少し明るいその場所を見回していると、ふと後ろに違和感を感じて僕はすぐさま振り返った、そこには目つきの鋭い男が一人立っていた。
ニヤニヤと悪い笑みを浮かべるその男を警戒し、僕は一歩後ろに下がる。
「お兄ちゃん、こんなとこで何してんだ?」
「あ、いや、えっと迷っちゃったみたいで……」
「そうかそうか、んじゃあ迷ったついでに金目のもん置いてとっとと消えな」
「えっと……、お金に困ってるんですか?」
「そうそう、お兄さんめっちゃ困ってるんだよー」
「すみません……、僕もあまり持ちあわせがないのでお渡しできないです」
「あーめんどくせえなぁ、グダグダ言ってねえで、さっさと金渡せや!」
「申し訳ないです、僕も困るので……」
「ッチ……。じゃあ痛い目見て後悔しろや!!」
短剣を抜いた男を見て、すぐに後ろに飛び、ローブの中の二本の短剣を抜く。
以前使っていた魔法を封印されたとはいえ、身についた技術には自信がある。
明らかに魔法での自己強化がないのろまな自分に焦りを感じつつも、襲いかかってきた男の短剣の軌道に合わせて自分の短剣を振り抜く。
男の遥か後方に刃が落ち、柄だけになった短剣を呆然と見つめる男から距離を取る。
「すいません! 失礼します!」
「待てやコラ! ただで返すと思ってんのかオイ!!」
男の声に合わせるように、四方の路地から次々とガラの悪い男たちがぞろぞろと出てきた。
う~ん……。魔法使えないけど、皆が皆さっきくらいの実力ならなんとかはなりそうなんだけど、力はなるべく隠しておけって父さんに言われてるんだよなぁ……。
状況が状況だし、ちゃんと戦っても大丈夫……、かな……。
悩んでる時間もあんまりなさそうだし、一か八か最低限の戦闘に抑えれるように、一番数が少ない後方の道に切り込んで走り抜けよう。
僕は軽く深呼吸し、膝を曲げ、一気に走り抜ける体勢を取る。
「君、大丈夫かい?」
透き通った声が、物々しい空気の中をするりと通り抜ける。
僕を含めたすべての男達が声の方向に顔を向け、まるで時間が止まったように、彼女に釘付けになっていた。
彼女は銀の長い髪をふわりと揺らしながら、白い騎士服のような服の上に、磨き上げられた銀色の軽装防具を付け、まるで真っ白な雪のように美しい姿で、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
「おい……なんで流麗のレティアがこんなとこに……」
「知るかよ……こっちが聞きてえよ……」
僕は辺りの男達のざわつきに気を留めることなどできなかった。
目の前の彼女があまりに美しかったから。
男達が後退り開いた道を進み、僕の目の前で止まった。
近い! 近い! 近い!
「君? 大丈夫?」
「ちかっ! あっ、えっ、いえ! 大丈夫です!」
彼女は覗きこむように顔を近づけてきたので、咄嗟に近いと言ってしまった……。
とりあえず少し後ろに下がろう。うん、そうしよう。
「そう。間に合って良かった」
「おい……どうするよこの状況……」
「んーむ……そうだな……。相手はレティアとはいえ一人。あとはわかるな?」
「さすが親分……俺親分についてきて本当に良かったっす! 一生付いていきます!」
「んじゃあ野郎ども!! 解散! 解散だ!! 撤収ー!!」
「え!?」
「何やってんだ、すぐに撤収するぞ、一生付いてくんだろ? ここでレティアに痛い目みさせられたいなら別だけどな」
「ま、待ってください、おやぶーん!!」
僕はまだ状況に頭が着いていかなくて、思考停止していた。
「君、裏街に何しに来たの?」
「えっ!? えっと……その……道に迷ってしまって……、気がついたらここに来ちゃいまして……」
「もしかして、この街に来たばかりの人?」
「は、はい、今日ついたばかりです」
「そっか、それじゃあ仕方ないね。間に合って良かった」
「あ、あの、危ないところをありがとうございます。あれだけの男達が逃げるなんて、あなたは強いんですね」
「それほどでもないよ。良かったらこの街を案内しようか? 初めての人にこの街は広すぎるし」
「ええ!? さすがに助けてもらった上に、街の案内までお願いできません!!」
「いいから気にしないで、困った時はお互い様だよ」
「あ、ありがとうございます……、お言葉に甘えていいなら、まだ冒険者登録してないので冒険者ギルドに行きたいです。あといい宿ありましたら教えていただけるとありがたいです」
「うん。分かった」
「大丈夫ですかレティアー!」
急に上がった声の方向に目を向けると、彼女が来た道から四人の男女が走ってくる。
彼女の仲間かな、纏う雰囲気や豪華な装備、あの人達もすごく強そうだ。
「皆も来てくれたんだ。とりあえずここを出よう、それじゃあ行こうか。私はレティア、君の名前は?」
「ぼ、僕の名前は、センです」
「行こうかセン君」
そう言って僕に背を向け歩き出した彼女はやっぱりカッコ良くて、綺麗で、僕の心臓を鷲掴みにするようだった。