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ステータス

僕のステータス

作者: うんこマン

「これが僕のステータスか」


 今、僕が居るのは不思議な空間だ。

 いや、ふざけてるんじゃなくて、マジに不思議な空間なのだ。

 どの位の広さがあるのかも不明、天井の有無も不明、床すらも存在しない。

 浮遊感は無く、地に立ってる印象だが、足を台に乗せるように意識を持たせればそう出来るし、その台の上に立つこともできるのだが上下に動いた気もしない。

 さらに、何も無いところから踏み出して着地態勢をとれば一瞬の浮遊感の後、着地したような感触を持つことすら出来るが、やっぱりよくわからないような空間なのだ。

 まぁ口で説明しても分かるまい。今この空間にいる僕本人すら、何が何やらサッパリなのだから。


 で、僕が何ゆえここにいるのかだが……まぁ、ゆえあって、ね。難儀なことだ。

 僕は今から異世界へと転生する事になったのだ。


 で、異世界に行くに当たって、ただ転生するだけじゃなくて、僕は色々と『択ぶ』事が許されるらしい。

 何が、と言うと自分の能力を、だ。


 異世界に行くに当たって、自分のステータスを決めなさい、ポイントは100ポイントあたえます。

 そう言われた。


 すごい気前の良さだ。

 普通の生物は生まれるに当たって、どこに生まれるか、どんな生物に生まれるか、どんな才能を持って生まれるかすら、決めることは出来ないというのに。

 僕は今から自分がどうあるかを決める権利があるのだという。

 しかしこれは恐ろしい事だと思う。

 普通の才能の無い人間なら、才能の無さ、生まれの悪さ、経済状況の悪さを言い訳に出来るが、僕は自分で決めてそうなるのだから、これから先の生涯に一切の言い訳が許されなくなるということなのだから。


 どうやら僕以外にも沢山の人間が同時に転生するらしいが、出来ればその人たちと相談して決めたいものだけど、こう言われた。


『だめよ』


 と。


 ここは神様的な空間と思うが、あの超えは神様だったのかなぁ? ま、いいか。

 早速ステータスチェックだ。

 これが僕のステータスか、へー、ほー、ふーん……泣ける。

 なんか、こうやって自分を数字だけで表されると、自分の人生は数字で表現できるくらいの薄っぺらいモノだと言われた気分だ。

 数字の高い低いより、数字だけで自分が決定されるというのが何とも泣けることだよ。

 でもまぁ、何だかんだで数字に表れない部分の方にこそ、その人の価値はあると思って良いよね? たぶん。




「ま、こんな感じで良いかな」


 それから少しの間、あーじゃない、こーじゃないと試行錯誤して僕は僕なりに自分のステータスを完成させた。

 中々の出来じゃないだろうか?


 僕と同じように転生する人たちの事も気になるけど、まぁ大丈夫だろう。

 最初から自分の存在を択べる以上は、皆悔いの無い人生を過ごせるに違いないからさ。


「出来ました、これで良いですよ」

『お疲れ様です。今一度、自分自身のステータスを見て、不備は無い事を確認されましたか?』

「うん、大丈夫平気」

『では、これからの異世界生活を頑張っておくんなまし』


 こうして僕は、異世界へ転生した。




 あれから50年の月日が流れた。

 言葉にすれば一言だけど、時間にすれば長い時間だったと思う。

 色々あった。

 転生の時に弄ったステータス、上手く作用してくれたようで僕の生涯は大成功の連続だったといっても良いと思う。

 男の夢、ハーレムも経験した。

 それもハーレム面子がギスギスしてお互いを牽制しあう胃痛ハーレムなんかじゃなく、お互いが尊重しあい愛し合う事の出来る素晴らしいハーレムだったよ。

 生まれた子供達も仲が良く、また健やかに育ってくれた。

 孫もひ孫も出来て、僕の血の入った一族は中々に優秀で、異性にモテモテで見ていて微笑ましいよ。

 ああ幸せだなぁ。


 おっと、まだ言ってなかったね。

 転生の際、色々と自分を択ぶことができるけど、種族の変更も出来る事を知れたのが良かった。

 この世界にも人間は居るけど、僕は自分の種族に人間を択ばなかったんだ。

 人間ってこの世界じゃ特にピラミッドの頂点じゃ無さそうだしさ。


 僕の択んだ種族は『皇帝猫』という、この世界独自の種族。

 なんとも大仰な名前だけど、体のサイズは手の平サイズ。ひよこ並みさ。

 なんでも、皇室に住む女性がペットとして可愛がりたい愛玩動物らしく、品種改良を重ねて、成体でも子猫並のサイズで寿命は10年前後、身体能力は寝返りが出来るようになった人間の赤ん坊より弱い種族だってさ。

 ただその分、人間の……いや、権力者の加護を一身に受けることが出来る種族であり、基本的に可愛いのが仕事と言うお気楽な種族らしい。


 この種族を択んだ理由は、単体での性能が弱い分、ボーナスポイントが沢山付くという理由だった。


 種族変更、これは人間がデフォルトだったけど、人間より弱い種族を択べば最初のボーナス100ポイントに追加でいくらか入り、逆に人間より強い種族を択ぶにはポイントを消費しないといけないというシステムだっ た。

 僕はこのシステムを使い、あえて最弱クラスの生物を択ぶことで、ボーナスポイントを沢山得られるようにしようと考えた。


 それは上手くいったお陰で、僕は弱い皇帝猫でありながら、その単体の戦闘力は大型モンスターを遥かに越えるレベルとなった。

 特殊能力も幾つか取得した。


 そのお陰で寿命が延びて……っていうか、半不老不死のようになってしまったけど、まぁ仕方ないことだろう。

 愛した妻達が先に逝く事は辛く、子供達すらも僕を置いて逝ってしまったのは胸が張り裂けるほどに哀しい出来事だったけど、今はその思い出を背負っていけるだけの強さも僕は持っている。


 で、僕は今、とある帝国の皇室に居る。

 だが飼われている訳ではない。

 この皇室、すでに僕が乗っ取っているのだ。特殊能力でちょちょいと、ね。

 で、僕が操った皇帝や国の重臣達を使い、周辺国を平らげ国を大きくしまくった。

 その際に種族繁栄の為に、他国の皇室にいた皇帝猫も引き取りまくって、今や僕の住処はちょっとした町の様相を呈しちゃっている。

 国と言っても良いかも知れない。

 人間の国と猫の国、二つの国を支配する僕は自分がとてもすごい存在なんじゃないかとすら錯覚してしまうよ。


 僕は自分の子孫達の生活を見ながら、こんなノンビリとした日がこれからも続けばよいなぁと思うのだった。

 人間の国自体はどうなっても良いと思う部分もあったけど、多少は真面目に操作してたら国家が繁栄してるみたいで、まぁ僕たち皇帝猫の一族がこれからも安寧な暮らしを送れるようにがんばってくれってなもんだ。

 元は人間だったのに、種族が変わったからか人間に対する扱いが大雑把になったのを自分でも認識するけど、まぁどうでも良い事だよね。

 下等動物が僕達皇帝猫に仕える事が出来る幸せを噛み締めてくれ、ってなもんだ。



 そんな緩やかな日々の中。


「みかど様」


 ある日、人間の皇帝役の男がやって来た。

 新しい妻との間に出来た息子とのスキンシップで忙しいというのに。

 何の用だよ。


 そう聞くと、どうやら戦争が終わった事を報告しに来たらしい。

 つまらない事を……と、一瞬だけムカッと来たけど、そういえば今戦ってる国……いや、戦っていた国、か。その国には僕のような転生者と思しき人間が10人以上居て、中々に強い国だったと覚えている。

 そして、その国の王が確か転生者っぽいから可能なら生け捕りにしろって命令してたわ。

 そして生け捕りに成功した報告だったらしい。

 流石に僕が支配してる国だけあって、中々に優秀だ。


 僕は人間の皇帝の男に対し、そいつと会って話がしたいから用意しろと命令を出す。

 長い事生きたけど、何気に自分以外の転生者と接触するのは初めてだからちょっとだけ興味あったんだよね。



『ごきげんよう、僕の言葉はわかるかな?』

「ね……猫? 何だよこいつ」


 僕の前に居るのは、十分な処置をされて動けなくなった転生者。

 見た目は人間の子供のようだが、僕たちの異世界転生が50年も前の事だけに、こいつを見た目と同じ子供とは思わないでおく。

 パッと見の線は細く、肌も白いし顔の作りがどこと無く中性的で、人間の視点で見たら男でも女でも容姿には好意をもてるんじゃないかな。

 僕にとっては人間の個性の一つだけど。

 線は細く弱そうだが、これでこいつも転生者らしくて高い戦闘力を持ってて、たしか素手でも岩を砕いたり出来て、その上で強力な魔法も使えるんだったか。今はそれら全てを封じさせてもらっているが。


 ま、それは兎も角。


『僕は君と同じ、転生者だよ』

「はぁ!?」


 敗北と拘束で混乱しているのだと思っておく。僕が言った事がすぐに飲み込めないでいるみたいだ。

 とりあえず色々と説明してやる。


 僕は転生の際に皇帝猫になったことと、この国を僕が乗っ取っているという事を。

 混乱だけが原因ではなく、素で頭が悪いんじゃないかと疑いを持つくらいに察しの悪い相手に、説明はすこし時間がかかった。

 おなかがすいたから途中でご飯を食べたよ。皇帝猫は体が小さいから食事のサイクルも短いんだ。


『とまぁ、そういう事なんだよ』

「ふーん、お前が転生者だったとはなぁ」


 僕が自分の背景を説明するのと、彼からも話を聞くのを同時進行していたから、話に時間がかかったとは思うが、それなりに実のある話になったとは思う。


 どうやら彼は、転生して最初は強い自分に酔っていたけど、彼の転生したポイントの治安、政治に文句があったらしく、クーデターを敢行したようだ。

 自分ではクーデターではなく革命だと言い張っていたが、今の僕には違いがわからない。人間だったら別ったのかなぁ?

 で、彼と同じような志の仲間の中には転生者も数人居て、クーデター軍団の中心の最強軍団、そのリーダーの彼はその国の王位を見事に簒奪したそうで。

 その後、彼の政治に興味を持った他の転生者も彼の国に集まって、12人の転生者の将軍を十二神将とか呼称したり、彼自身は神王とか名乗るようになったそうだ。

 で、彼らは自分が上に立つことで国は豊かになると思ってたが、上手くいったりいかなかったりの半々。

 土地が悪いんだとか色々と理由をつけて、他国への侵略活動を活発にしだしたらしい。

 その範囲の一つに、僕の国が入って戦争状態に入ったらしいね。

 たしか突然、支配してやるから土地を明け渡せ、みたいな意味の事を言われて戦争が始まったけど、そういう事情があったんだ。

 彼らは僕の国を見て転生者が居るとは思ってなかったらしい。

 突出した戦力を持つ英雄が居ない事と、政治の方向性でたまにこの世界らしからぬ物もあったけど、それは自分たちの国を模倣したからだろうと思ったらしいね。


 そう思って舐めてかかって戦力を小出しにしてたら徐々に追い込まれ、十二神将さまも全滅、最後は神王さま本人が直接前線に出たけど負けちゃった結果が今だそうだ。


 僕が人間だったらかわいそうだなー、とか思ったのかもしれないけど、以外と何とも思えなかった。


「なぁ、所でいい加減拘束を解いてくれよ。お前が猫なのはわかったけど、同じ転生者だろ。この国の王様は俺がやってやるから仲良くやっていこうぜ」


 ただでさえ何とも思ってなかったけど、身の程知らずな彼の発言で彼に対する評価を僕は更に数段下げる。

 上がってても彼の運命は一つだけどね。


『バカを言うなよ。君は敗戦国の王だ、それも戦争を仕掛けたほうの、ね。いくら飾りの国とは言え、君の死体を痛めつけて晒し者にしないと国民は納得しないよ。人間ってそんな所あるだろ?』

「はぁ!? な、何言ってんだよ!」


 何って、常識じゃないの?

 って思ったけどどうなんだろう。もはや猫の僕が人の常識を語っても良い物かどうか……

 まぁ良いや。

 ギャースカわめく神王くんはうるさいけど超能力で顎間接を固定して自力じゃ口を開けなくすれば良いだけだし。

 用は済んだから、兵士に命令して神王くんを下げさせて僕は僕の国に戻る。


 と、その時、扉の裏に女性が居た。猫の。

 彼女は僕の妻の一人で、まぁだいぶ遠いけど僕の血を少し引いてる女性だ。

 近親相姦チックな気分もするが、まぁだいぶ血も薄くなってると思うし大丈夫だよねと自分に言い訳をして、彼女を口説いたことは記憶に新しい。

 彼女は皇帝猫一族の中でも中々に賢い才女で、そういう所がかわいいと思って好きになったんだよね。


 そんな彼女はさっきの僕の会話を聞いていたらしい。

 転生者やら何やら、どういう事ですかと聞いてきた。

 愛する妻に隠し事しない主義の僕は説明したが、神王さまより賢いんじゃないかと思える飲み込みのよさで、僕の言葉を簡単に理解してくれる。

 すごい賢いなぁ、この子の子供もきっと凄く賢くなりそうだと思うと嬉しくなってくるよ。


『なるほど、みかど様は「転生者」という存在だったのですか』

『そう、僕の能力はまぁ……努力した部分もあれど、所詮は前もって用意された、ずるい能力だよ。……軽蔑しちゃったかな?』


 考えなくても判ることだけど、最初から自分の才能を知ってるというのは本当にずるいよなぁと思う。

 同じ条件なら自分だって、って思う者はきっといくらでも居るだろう。

 自分で告白しておいて、その事を彼女に責められると少し辛いかも、って思ったけど


『軽蔑なんてとんでもない。例え元から用意された能力でも、それを使いこなし伸ばしたのはみかど様の器量ではないですか。先の人族の王のように、能力を用意されて尚、敗北した者も居る事を考えればみかと様は素晴らしい方と思います』


 彼女はそんな事は言わずに、僕を肯定してくれる。皇帝猫だけに。なんつって。

 ……ちょっと寒いね。


『……いや、まぁそう言ってくれると嬉しいよ。さ、少し冷えるし部屋に戻ろう。ついでに暖めあってニャンニャンしよう』

『はてな? 今は5月中旬、初夏に差し掛かって暑いくらいですが』

『いいからいいから』


 誤魔化すように彼女を押し進める僕。

 良い腰つきしてて、この場でムラムラしちゃうけど我慢できるのはステータスで精神力も強化してるからさ。


『所で……ステータス、ですか? その数字、私でしたらどのくらいになっていたりするのでしょうか?』

『んあ? あぁ、皇帝猫ってのは基本ステータスがオール1って種族だからね、普通の皇帝猫じゃ足が速い力が強いと言っても、1の中の誤差で済まされちゃうから、君も数字の上だとオール1になっちゃうと思うよ? まぁ精神に関しては神王くんよりは高いんじゃないかと睨んでるけどね』


 ステータスの数字、その中でも精神の数値はその者の本質に当たるらしく、数字を弄るのはかなりの覚悟が居るようだった。

 僕は元の数値に対して30ポイント分も精神にプラスしたけど。人間だった頃と性格が変わった気がするのはひょっとしたら、猫の体より30ポイント振った精神が原因なのかも知れないと思う部分もあるくらい。


『オール1ですか……何気にショックです』


 精神は高いじゃない? とフォローしても他の数字が低いと思われる事に彼女はしょんぼりした様子。

 気持ちはわかるよ。


 ちなみに僕達転生者は、自分のステータスはいつでも見れるけど、他人のステータスは見れないようになってるみたい。

 だから他人のステータスに関しては、多分このくらいと言う大雑把な数字しか言えないんだ。


『私はオール1だそうですけど、みかど様は違うのですよね? 一体どれ程の数値なのでしょうか?』

『うん? 僕の数値?』


 転生直後に比べ、いくらか努力したこともあって、僕のステータスはかなり高くなっている。

 数字を言えば彼女はビックリするかも知れないけど、まぁ隠し事はしたくないし、言っちゃおうか。


『僕の今のステータスはこうだ』

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