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第2話

翌日から、ルンディニウムの街に小さな、しかし致命的な「異変」が起こり始めた。

 王立魔導図書館の警備主任が、顔をしかめて裏門を叩く。

「おかしい。いつもならジャックが朝一番に鍵を開けているはずだが……。病気か?」

 同じ頃、王宮の厨房では料理長が激怒していた。

「肉が届いていない! 赤髪のビリーの野郎、どこで油を売っていやがる!」

 さらに、水道局の流量計を監視していた赤髪の技師も、港の信号機を操っていた赤髪の操縦士も、忽然と姿を消していた。

 彼らは皆、教授が用意した「快適な密室」で、必死に無意味な文字を書き写していた。彼らにとってそれは「高額なバイト」だが、街にとっては**「神経網の切断」**に他ならない。

 被害者であるジャックは、三日目の昼、ふと違和感を覚えた。

 自分が書き写しているのは、ただの無意味な数字の羅列だ。なぜこんなことに、金貨十枚もの価値があるのか。

「……なぁ、あんた。これ、一体何の意味が――」

 隣で同じく筆を走らせていた男に声をかけようとした時、部屋の扉が外から施錠されていることに気づいた。窓は塗り潰され、外の様子は一切わからない。

「おい、開けろ! 出してくれ!」

 ジャックが扉を叩くが、返事はない。

 その時、彼は初めて気づいた。自分たちがここに集められたのは、髪の色が珍しいからではない。自分たちが**「その場にいないこと」**に意味があるのだと。

「……誰か、助けてくれ……!」

 彼らの叫びは、厚い石壁に遮られ、誰にも届かない。

 そしてその頃、王立図書館の「開かない裏門」の前に、黒いマントを羽織った一団が、巨大な削岩魔法を用意して静かに立っていた。

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