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第三章 第1話 真紅の空白(レッド・ブランク)

ルンディニウムの裏通りで小さな鍵屋を営む赤髪の男、ジャックは、その日の朝、目を疑うような号外を手にした。

「……赤髪の者、求む? ただの代筆作業で、週に金貨十枚だと?」

 それは、街中に貼られた奇妙な募集広告だった。

 ジャックは腕のいい職人だったが、最近は不況で生活は苦しい。おまけに、彼が管理しているのは王立魔導図書館の「裏門」の予備鍵という、名誉だけで実益のない仕事だ。

「これなら、一ヶ月で店を立て直せる……!」

 彼は期待に胸を膨らませ、指定されたボロビルの三階へと向かった。そこには、彼と同じように燃えるような赤い髪を持った男たちが、列をなして待っていた。

 面接官は、冷たい眼鏡をかけた知的な紳士――アロイトの部下である。

「採用だ。明日から、君にはこの住所の隠れ家で、古い台帳の書き写しをしてもらう。条件は一つ。勤務時間中、一歩も外に出ないこと。そして、この仕事のことを誰にも口外しないことだ」

 ジャックは二つ返事で承諾した。それが、自分という「社会の歯車」を抜き取られるための契約だとは知らずに。

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