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第二章 第4話

最上階にある「星の間」は、八角形の奇妙な構造をしていた。天井は高く、中心にはミラー家令が言っていた通り、巨大で精巧な水晶のシャンデリアが、埃を被りながらも不気味な威容を湛えて吊るされている。

「ここだ……。だがヘムラー殿、ここはもう何十年も閉ざされたまま。父が言っていた『光が交わる』といっても、今はもう日が落ちかけている……。明日まで待たねばならないのでは?」

 バルトロメ男爵が焦燥に駆られた声を出す。窓の外では、ルンディニウム特有の夕霧が太陽を飲み込み始めていた。

「明日? 私の時給を無駄にする気か。……リリ、例の『疑似太陽』を」

「了解です、先生!」

 リリがアタッシュケースから取り出したのは、現代の撮影現場などで使われる超高輝度LED投光器だった。蓮はそれを三脚に固定し、計算機で割り出した精密な角度でシャンデリアへと向けた。

「いいか、男爵。先代当主は数学者だったと言ったな。ならば、彼が信じたのは神の慈悲ではなく、屈折率くっせつりつと反射角の絶対性だ」

 蓮がスイッチを入れると、部屋の中にこの世のものとは思えないほど純白で強烈な光が溢れた。その光はシャンデリアの巨大な水晶を通過し、数百の細い光の束へと分光される。

「眩しい! 何だ、この魔法のような光は……!」

 オズワルドが腕で顔を覆う。

「魔法じゃない。ただの指向性を持った光だ」

 蓮はタブレットを操作し、光の道筋をシミュレーションする。分光された光は壁に飾られた紋章や、床のタイルに埋め込まれた真鍮のプレートに次々と反射し、網の目のように部屋中を駆け巡った。

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