プロローグ:神の頼みと不敵な条件1
暇を持て余す現代人が、異世界の神からの依頼で、探偵事務所を開業。
霧の都は、異世界探偵を受け入れられるか
タワーマンションの最上階。下界の喧騒を置き去りにした静寂の中で、俺――天城 蓮は、琥珀色のグラスを傾けていた。
二十代にして、ITコンサルと投資で一生遊んで暮らせるだけの資産を築いた。世間は俺を時代の寵児と呼ぶが、実態はただの「飽き性」だ。この世界の謎も、ビジネスの駆け引きも、既に答えが見えすぎていて退屈で仕方がない。
「……何か、面白いことでも起きないもんかね」
独り言が空気に溶けたその時、部屋の照明が不自然に明滅した。
空間が歪み、視界が真っ白な光に包まれる。光の中から現れたのは、透き通るような銀髪をなびかせた、現実離れした美貌の女性――女神だった。
「初めまして、天城蓮。退屈を愛する賢者よ。私の管理する世界を救ってくれませんか?」
女神が語ったのは、かつて剣と魔法が支配し、今は文明の黎明期にある異世界『アステリア』の窮状だった。
魔法が衰退し、蒸気機関と科学が芽生え始めたその世界は、現在、我々の世界の1870年代……いわゆるヴィクトリア朝時代に近い発展を遂げているという。
だが、文明の発達は「知能犯罪」という副産物を生んだ。
「動機は怨恨から利権へ、凶器は魔法から毒薬や巧妙なトリックへ。人々の悪意は複雑化し、既存の憲兵組織では太刀打ちできません。このまま未解決事件が増えれば、疑心暗鬼が種族間戦争を呼び、文明は滅びるでしょう。どうか、あなたのその知恵で事件を解決してほしいのです」
女神は悲痛な面持ちで頭を下げた。
異世界。文明の過渡期。そして迷宮入り事件。……悪くない。
「いいだろう。受けてやるよ。どうせこっちの世界には飽きていたところだ」
俺が不敵に笑うと、女神の顔がパッと輝いた。だが、俺は指を一本立てて制止する。
「ただし、だ。神様。タダで働くほどお人好しじゃない。俺を動かしたいなら、以下の条件を全て呑んでもらう」
当面は、定期的な更新ですが、章がかわると、少し更新が遅れます。




