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ep1

 夏の空は高い。

 太陽はじりじり焼き付けるようにアスファルトを照らし、幼子の手を引く母親の背中を焼いていた。

 もう三時を過ぎているというのにまだ暑い。

 帽子を被っているのにだらだらと汗が流れ、繋いでいる小さな手を離したくなる。

 小さな娘は暑いはずなのに私の手をしっかり握り、時折顔を上げては目を合わせて嬉しそうに笑う。

 何がそんなに楽しいのか、暑さのせいなのか優しい気持ちすら消えうせていた。

 少しくらい雨が降ればいいのに。

 ちらりと視線を上げてみるも雲が集まる様子もない。

 暗くなることもなく、ただ青い空ばかりが続いている。

 もう一駅以上は歩いている。

 今朝から娘と二人で動物園へ行っていた。

 二人で出かけるのは初めてで、いつもなら夫と私、そして娘の三人で出かけていたから娘は出かける前からはしゃいで仕方がなかった。

 よそ行きの服を着せて、歩きやすいようにいつも履いている靴を選んだ。

 ピンク色が好きな娘のためにクリスマスに選んだものだ。

 動物園では小さな狐を見て、大きな象、ゴリラと娘が選んで周って行った。

 どこにそんな元気があるのか私の手を引いて、「お母さん、見て」「お母さん、可愛いね」そう言って笑顔を向けてくれる。

 なんて可愛らしいんだろう、なんて愛しいんだろう、そう思わずには居られなかった。

 最後のサル山に行く途中で、小さなアイスクリームのワゴンを見つけて娘は手を引いて走り出す。

 私はバニラアイス、娘はストロベリーアイス。

「溶け出す前に食べようね?」

 そう言って笑うと娘は蕩けそうな顔でアイスを頬張った。

「美味しいね」

 何度も繰り返す言葉は自分の小さな頃の記憶を思い返させる。

 私の母は優しく厳しい人だった。

 どこへ行くにも私の手を必ず繋いでいた。

 小学生になる頃には手を繋がなくなり、母と出かけることなどはなくなったけど。

 アイスが溶けて手が汚れてしまった娘はペロリとそれを舐める。

 アイスを食べ終わるとサル山に向かう前にトイレで手を洗い用を済ませてまた歩きだす。

 サル山の前で娘は本当に弾けるような笑顔で「見て、お母さん。親子がいるよ」「可愛いね。仲良しだね」と笑っていた。

 ふとさっきまでの想い出に浸っていた私の耳に娘の呼ぶ声が聞こえた。

「お母さん、足が痛いよ」

 小さな控えめの声、娘は私が何か考え事をしていることを気にして聞こえたらいい、くらいの音量で話していた。

「あ、足が痛い?ごめんね。もう少しだからね」

 私の言葉に娘が大きく頷いて私と同じ歩幅で歩く。

 もう少しなんて嘘だ、行くあてもなくただ歩いている。

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