表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Joker oF Way  作者: 相野里緒
16/27

第一部 定義(15)




     #




 倫とアリサが対面しているベランダが伺える。森の境目辺りから村上ともう一人の男が二人を見上げていた。ベランダの二人には気づかれていないようだ。

「まったく……。あれが貴様の妹とはな」村上が近くの木に寄り掛かりながら言った。「兄妹揃ってなんとも恐ろしい」

「そう? オレにはわかりえない事かな」男は村上の正面に背を向けるようにして立ち、ベランダの倫とアリサを眺めながら言う。「あんたはそこで何をしてんの、村上翔人? そんな奥では見えるものも見えないと思うけど?」

 村上は目の前の男の背中を睨みつけた。「ここからでもあそこの二人はよく見える。それと本音を漏らすと、霊である貴様に近づくことが躊躇われてな。寿命が縮むやもしれん」

 男が笑った。「するとお前の姉弟子は酷いな。今ではどれほどの命が削られているのか。考えただけでゾッとするね。あの集落のやつらなんて見捨てればいいのに」

 村上のこめかみがピクリと痙攣した。「ほお。お前はそんな知ったような口を叩けるのか」

「おお!? 短絡的だなあ。ちょっと待てよ」男は村上に背中を向けたまま両手を上げた。「ここでやったらばれちゃうよ?」

 村上が右腕を男に向けた。一筋の電流がその腕を走る。「ばれない程度にやるさ。で、彼女がどうしたって?」

 村上の腕から電流が飛び出し、男の膝から下を吹き飛ばした。男の体が地面に落ちる。「くははは! どうしたもこうしたも、あいつは自ら命を削ってんだぜ? やってらんねえよ。人生長生きしなきゃ―――」

 男の頭がまるごと消し飛んだ。村上は残った男の体に近づく。「貴様に訂正を求めた私が馬鹿だった。貴様がまともな回答をするわけもない。それに貴様に頼る必要など元々ないのだ。いい加減、成仏するんだな」

 村上は男の真上に手を翳す。

 そのとき、地面に倒れ伏している男が立ち上がった。ないはずの両足が生えている。

「な……っ」村上は目をみはった。使い魔でもない男が、それと同じかそれ以上の早さで回復を行っている。このような霊が存在するなど、聞いたことがなかった。

 頭がない男の体は機敏に動き、村上の喉を掴むと、そのまま木に叩きつけてより喉を掴む手に力を入れる。

「……っ、……!」村上の顔が一気に青白くなっていく。息が出来ていないから、というだけではないだろう。

 男の頭部が復元した。現れた顔は笑みを浮かべている。「頭を狙うのはグットだが、心臓を狙わなかったのはバッドだな」至近距離で男は言った。「どうだ。苦しいか? だろうな。それが死の苦しみと冷たさだ」

 男は村上の喉から手を離した。村上の体が崩れ落ち、木の根本に座り込んだ。

 村上は痛む喉を抑えながら顔を上げて男を睨む。「貴様、本当に霊なのか……? どんな体している……。一体何なんだ貴様」

 男は首に手を当て、骨を鳴らしながら言った。「化け物だよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ