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【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第三章

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「大百足の毒牙」×「アメジストダガー」

 ナズカがパーティではなく、一人でいた理由――それが自分の行動のせいなのではないかという不安が、胸の奥に重く沈んでいた。


 ナズカは宿賃が払えず、宿屋を追い出されていた。元のパーティと円満に別れたとは、どうしても考えにくい。何か事情があって急にパーティを抜けることになり、一人ではダンジョンで稼げず、とうとう宿からも追い出された……。


 そして、その原因が自分にあるのかもしれない。


 気がつくと、いつの間にか足が止まっていた。

 横を見ると、マリィが心配そうに僕を見つめている。


 マリィが僕にルミナスクローバーの話をしたのは、きっと彼女も僕と同じ予想をしているからだろう。


「大丈夫だよ。マリィが心配することじゃないよ」


 根拠もないのに、僕はそう言って笑ってみせた。


   * * *


 マリィを孤児院まで送り届けたあと、宿の自分の部屋へ戻る。

 ベッドに横になり、さっきのマリィの言葉が頭の中をぐるぐる回った。


 やはり、僕の取った行動がナズカのパーティに不和をもたらしたのだろうか。

 いや……僕らの行動は関係ないかもしれない。それに、ダンジョンが討伐できるかどうかは、結局はそのパーティの実力の問題のはずだ。


 でも――ナズカに話しておくべきだろうか。

 話したところで何が変わる? 

 ただ関係をこじらせるだけかもしれない。


 色々な考えが頭の中を巡っては消えていった。


 そうしているうちに、意識は遠のいていった。


   * * *


 気づけば、朝になっていた。昨日は考え事をしながら、そのまま眠ってしまったらしい。


 軽く身支度を整えて食堂に降りると、リリエットとナズカがすでにテーブルについていた。


 ナズカの姿を見た瞬間、一瞬だけ緊張が走る。


「やあ、おはよう。昨日は醜態を晒してしまったね。だが、偉大なる魔法使いがパーティに加入した祝いの席だからね。君たちの浮かれた空気に、僕もほだされてしまったのさ」


「一杯飲んで、そのまま眠っただけだろう。大げさだな」


 リリエットが肩をすくめる。そのやり取りから、二人の距離感が昨日よりも近くなったように感じられた。


「二人ともおはよう」


 なんとなくナズカに何か言わなければと思っていたが、いつも通りの調子で話す彼女を前にすると、言葉は喉の奥で引っかかった。


 今はまだ、その時じゃない――そう思った。


 その後も、三人で賑やかに朝食をとるうちに――

 わざわざこの空気を壊してまで話すことではない気がしてきた。


 まだ、僕らは知り合ったばかりだ。

 少しずつ打ち解けてきている今は、言わない方がパーティにとっても良いのかもしれない。


   * * *


 朝食をとった僕らは装備を整え、トレントのダンジョンへ向かった。

 いつものように、マリィとは街の門で合流する。


 マリィは合流してすぐ、意味ありげに僕へ視線を送ってきた。

 ――あの後、何か話したのか? 聞いたのか?

 そう問いかけるような目だ。


 僕は小さく首を振る。


 マリィはほんの一瞬だけ目を細めたが、それ以上は何も言わず、すぐに前を向いた。

 そのまま僕らは、何事もなかったかのようにダンジョンへ向けて歩き出す。

 リリエットとナズカは、僕らのやり取りには気づいていないようだった。


 やがて、空気は自然と日常のものに戻っていく。


 マリィは気持ちを切り替えたのか、いつものように明るい調子で色々と話題を振ってくれる。


 ナズカとリリエットも和やかに会話していて、昨日の食事会のおかげかパーティ全体の空気が前よりも柔らかくなっている気がした。


「ところで、今日も“アレ”をするんだろう? 昨日の話だと、マリィの武器に――」


 ダンジョンへの道中、ナズカが周囲を見回しながら切り出した。

 周りに他の冒険者はいない。“アレ”――つまり融合のことだ。


「そうだね。今日はマリィのダガーに“大百足の毒牙”を融合する予定だよ」


 僕は足を止めながらそう答えた。


 ダンジョンに近づくと、逆に準備をする冒険者で人影が増える。

 だから今、この辺りで融合してしまうのがちょうどいい。


 今日の融合の組み合わせについては昨日、ナズカが酔いつぶれる前に話をしていた。ちゃんと覚えていたらしい。


「そうだったわね。きっとすごい効果の短剣になるわ」


 マリィも明るく言いながら、腰のアメジストダガーを外して僕に差し出す。


 以前、アメジストリンゴと融合して作ったダガーだ。

 刀身が鮮やかな紫色をしていること以外は、性能は普通のダガーと変わらない。


「こっちのダガーでいいんだね?」


 一応、確認する。マリィはパラライズファングとアメジストダガーのほかに、何も融合していないダガーも持っているはずだ。


「ええ、だって大百足の素材を融合するんでしょ? 見た目がグロテスクになったら嫌だもの。まだこっちのダガーの方が、きれいな色味になる可能性が高いわ」


 ――意外な理由だが、ちゃんと考えがあったようだ。


 僕はバックパックから、宿から持ってきた“大百足の毒牙”を取り出す。

 黒く光沢を帯びた、ギザギザの牙。確かに優雅とは言いがたい見た目だ。


「それじゃあ、やるね」


 片手に短剣、片手に毒牙を持つ。


「ちゃんと“カッコいい短剣”をイメージしてね」


 マリィが念を押すように言った。


 融合の結果は、融合時のイメージに少なからず影響される。

 今回のパターンでどれほど変わるかは分からないが――。


 しかし、難しい注文だ。僕からすれば、このギザギザの牙にも一種のカッコよさがあるし、毒もこの形状のほうが効きそうな気がする。

 けれど、マリィはとにかく“虫っぽさ”を嫌っているのだろう。


「わかったよ」


 とりあえず短く返事をし、精神を集中させる。


 アメジスト色の、鋭利な短剣をイメージする。


 対象はマリィ。


 融合。



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