表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/112

木にはキかぬ

「ナズカ、君の雷魔法も本当にすごかったよ」


 そう言いつつ、僕はマリィとリリエットに視線を送り、周囲の警戒を任せる。ナズカに僕自身のスキルについて説明するつもりだったが、まだ階層の入り口とはいえ油断は禁物だ。不意打ちがないとも限らない。


「ただ、実は僕もスキルを持っているんだ。『融合』っていうスキルなんだけど――」


 僕は軽く自分の斧を掲げ、刃に走る赤い炎の紋様を見せた。


「二つのアイテムを組み合わせて武器や防具を作れるんだ。この斧は火の追加効果を持っているし、リリエットの剣は冷気を纏っている。口で説明するより、実際の戦闘を見てもらった方が早いと思ってね」


「そんなスキルが……なるほど、それで剣の攻撃が効きづらいトレントを、あんなに簡単に倒せたんだね……」


 ナズカは感嘆の声を漏らしつつ、僕の黒溶の戦斧をじっと観察した。


「色々と制限はあるんだ。いつでも何でもできるわけじゃないし、詳しいことはまた今度。ここはダンジョン内だしね」


 僕は念のため周囲を見渡し、一旦話を区切る。


「でも、必要ならいつでも説明するよ。これから一緒に冒険するんだから、知っておいてくれると嬉しい」


「……ふふ、なるほど、大体はわかったよ。いや、それでこそ“偉大な魔法使い”の仲間に相応しいよ!」


 ナズカは驚きの色を残しつつも、いつもの調子を取り戻したようだ。


「そうね。偉大な魔法使いの足を引っ張らないように頑張るわ」


 周囲を警戒していたマリィが軽口を返す。


 その言葉に僕は思わず微笑んだ。

 ナズカの独特な自信家ぶりに、一番うまく合わせているのは今のところマリィかもしれない。

 そう思ってナズカの方を見ると――


 一瞬だけ、彼女の表情が曇った。

 ひきつった、と言った方が正しいかもしれない。


 だが、すぐにナズカはいつものような笑みを取り戻し、明るい声で答えた。


「ああ、頼むよ」


 気のせいだろうか。

 少しだけ気になったが、深く考えずに話題を切り替える。


「そうだ、マリィの短剣も融合でできた武器なんだ。麻痺の効果がある」


「そうね、でも効き目は魔物ごとに違うのよ。ユニス、次は私の番よね」


「うん、トレントに試すのは初めてだからね。効き目を試そう。僕とリリエットで正面を受け持つから、マリィは隙を見て攻撃してね。ナズカは悪いけど、今度もお休みだね」


 仲間を見渡すと、みんな異論はないようで軽く頷いてくれた。


   * * *


 探索を続け、間もなくして通路の先に一体のトレントが現れる。


 作戦通り、僕とリリエットが盾を構えて正面から突っ込む。

 トレントの太い腕を受け止め、体勢を崩させる。

 その隙を突いて、マリィが素早く側面から滑り込んだ。


 手にした短剣――パラライズファングが、樹皮にかすかに切り込む。

 だが、トレントは特に反応を示さない。

 麻痺の兆候もなく、動きは鈍らなかった。


「リリエット、マリィ――倒すよ」


 即座に切り替え、僕とリリエットが畳みかける。

 斧と剣が一閃し、トレントは光の粒子と化して崩れ落ちた。


「効かなかったわね」


 マリィがあっさりと言い、短剣を腰に戻した。


「うーん、そうみたいだね。実は、ちょっとそんな気もしてたんだ」


 僕は苦笑しながら答える。


「そうよね。私も実は少しだけそんな気がしてたわ」


 マリィが肩をすくめる。


 麻痺自体が効かないのか、それとも短剣の一撃が浅かっただけなのか――

 そこははっきりしないが、一旦「トレントには麻痺は効かない」と考えていいだろう。


「まあ、木が麻痺するってのも変な話よね」


 マリィが軽く笑いながら言う。


「それを言ったら、木が歩いてる時点でおかしいかもね」


 ……まあ、魔物相手に常識で考えても仕方がない。

 これからも魔物ごとに試していくしかなさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ