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【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第三章

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雷魔法

「今日は初めて組むから、まずはお互いのことを知っていこうと思うんだ」


 迷宮都市を出てダンジョンへ向かう道中、僕はみんなに声をかけた。


「特に、ナズカ。君の魔法を最初に見せてもらいたいんだけど、いいかな?」


「もちろんだとも!」


 ナズカは胸を張り、誇らしげに言う。


「きっと驚くよ、だって――僕の雷魔法は最強だからね!」


 僕は苦笑しつつうなずき、具体的な段取りを確認する。


「僕とリリエットがトレントを抑えるから、その隙に撃てるかな?」


「お安い御用さ! ……でも、一応、注意事項だ。偉大なる魔法使いにも段取りというものがあるからね」


 ナズカが少し真剣な顔つきになる。


「まず、僕が魔法を使うには、だいたい5〜6秒間、完全に無防備になる。いわゆる“集中”ってやつだ。目を閉じて精神を集中させる必要がある。でも心配いらないさ――なにせ、そのあとに放たれる雷魔法は最強だから!」


 昨日ネルコが説明してくれた魔法の性質のことだ。


「それから……」


 ナズカが手にした杖を軽く振りながら続ける。


「僕が“撃つ”と言ったら、なるべく敵から距離を取ってくれるとありがたい。もちろん君たちに当てる気はないし、そんなことをする初心者じゃないけど、その方が撃ちやすいからね」


「味方に当たることも……あるんだ?」


 僕が確認すると、ナズカは即座に胸を張る。


「いやいや、そんなの滅多にない! あくまで形式的なお願いだと思ってくれ! だって、雷魔法は最強なんだから!」


「……でも場合によっては当たることがあるんだよね?」


 重要なので念を押す。するとナズカは早口で説明を始めた。


「杖から放たれた雷は、敵に向かって一直線に進む。多少の角度調整はできるけど、大きく曲げることはできない。状況次第で撃てないなら、僕は撃たない。僕は偉大な魔法使いだから、そこはちゃんと判断するよ! でも撃たなかった場合でも、魔力は消費するからね」


 その説明を聞きながら、ふと疑問が浮かぶ。


「魔力を消費するってことは……ナズカの魔法は、一日に使える回数に限りがあるのかな?」


 僕の融合スキルは一日に一度しか使えない。リリエットの連撃は回数に制限はないが、ナズカの魔法はどうなのだろう。


「無限ってわけにはいかないね。だいたい20回くらいだよ。正確には“集中”できる回数だ。撃たなくても集中だけで魔力を消費するし、魔力は一晩ぐっすり寝れば回復する」


 そう言った後で、また胸を張り、明るく宣言する。


「でもまあ、20回も撃てば、どんな相手だって倒せる! 雷魔法は最強だからね!」


 マリィが少し呆れたように笑う。


「なんだか、最強ってわりには制約が多い気がするけど……」


 僕は慌ててマリィの言葉をさえぎる。


「いやいや、ありがとうナズカ。だいたいわかったよ。あとは実戦を通してお互い慣れていこう。みんなもそれでいいかな?」


 リリエットとマリィに視線を送ると、二人は頷いてくれた。


 ナズカも、どこかホッとしたような表情を浮かべている。


 僕はそんなナズカに軽く笑いかけた。


 スキルに制約が多いことは、ナズカ自身が一番よくわかっているはずだ。


 それでもこうして、リスクをきちんと説明しようとしてくれる。少し誇張気味なのは、彼女なりの理由があるのだろう。


「よし、じゃあ一戦目はナズカの魔法を見せてもらおう。二戦目は逆にナズカに僕らの戦い方を見てもらう形にしよう。ナズカの魔法ほどじゃないかもしれないけど、僕らにも少し説明が必要なことがあるんだ。見てもらった方が早いと思うから」


「へえ、それは興味深いね」


 ナズカは挑発的な笑みを浮かべてみせた。


 * * *


 トレントのダンジョン入り口、第一階層へと続く階段を降りながら、僕はパーティに改めて声をかけた。


「僕とリリエットが前を歩くから、マリィとナズカは少し後ろを歩いていこう。戦闘になったら僕とリリエットが前に出るから、ナズカは魔法の準備をお願い。マリィは念のためナズカの横で待機してて」


 三人とも異論はないようだった。


 しばらく進むと、通路の奥から一匹のトレントがゆっくりと歩いてきた。


「行くよ!」


 僕とリリエットは即座に盾を構え、駆け出す。目的はトレントを倒すことではなく、時間を稼ぐことだ。


 トレントの大きな拳を僕が受け止め、力を逃がす。かつては強敵だった相手だが、今では落ち着いて対応できる。


 リリエットとタイミングを合わせながら、2度、3度と攻撃を受け流す。


 その時、後方から鋭い声が響いた。


「撃つよ!」


 ナズカの声だ。僕とリリエットはほぼ反射的に半歩下がる。


 一瞬の静寂。


 思わずナズカの方を振り向くと――ナズカの杖の先から白い線が伸び、トレントの胸元に繋がった。


 次の瞬間、「パン!」という乾いた音が響き、雷光が一直線にトレントを貫いた。


 トレントはその場に立ったまま動きを止めた――が、数秒後、表面から細い煙が立ち上り、ゆっくりと傾いで崩れ落ちた。


「……一撃……!」


 僕は思わず呟く。横を見るとリリエットも瞳を見開き、マリィは口元を手で押さえて驚いていた。


「これが雷魔法だよ――最強だって言っただろ?」


 ナズカが得意げに胸を張り、誇らしげに微笑んだ。

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