表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/112

「パラライズフィンダガー」×「リザードマンの牙」

 朝、目を覚ました瞬間、僕は跳ね起きた。


 「……あれって、スキルポーションのときの……!」


 昨日の夜、眠りに落ちる寸前に聞こえたあの声。あれは、間違いない。スキル《融合》を得たときと同じだった。


 慌てて服を着替え、階段を駆け下りて一階の食堂へ向かう。


 「リリエット!」


 いつもより少し早い時間だったが、彼女はすでにテーブルについて、パンをちぎっていた。


 「どうしたんだ、そんなに慌てて」


 僕は辺りを見回し、近くに人がいないのを確認してから小声で告げた。


 「スキル、多分、強化されたんだ。他人が使っても壊れない装備を作れるようになった」


 リリエットの瞳が驚きに揺れる。


 「本当か!」


 「うん、厳密には一人を指定して、その人専用の装備にできるって感じだけど」


 「なるほどな……それは、すごいことだな」


 「うん、そうだよね。何を融合しようかな……」


 「確かに悩ましいな……」


 リリエットの聖銀の剣と盾は、まずは避けたほうがいい。元の性能が高すぎるし、変に融合してしまうと、かえって性能を損ねてしまうかもしれない。。となると、防具だろうか。


 みんなでスライム狩りに行って素材を集めるというのもありかもしれない。今ならもっと下の階に潜れるはずだ。そうなれば当然、素材もより希少で効果の高いものになるはずだ。


 「ふむ、マリィに貸している、あのパラライズフィンダガーに何か融合して、マリィ専用にするのはどうだろうか?」


 「えっ?」


 思わず間抜けな声を出してしまった。


 「む、どうかしたか?」


 「いや……その、てっきり最初はリリエットの装備を作ると思ってたから」


 「なぜだ?」


 素っ気ない返答。しかし、目をぱちくりさせている。


 「なぜって言われても……特に理由はないかも。なんとなく最初はリリエットがいいかなって」


 言ってから、少しだけ恥ずかしくなった。理由なんて、本当にない。ただ、自然にそう思っていただけだ。


 「そ、それは……」


 リリエットは急に黙り込む。そして、ちらりとこちらを見て、なぜか顔を赤らめたと思うと下を向いてしまった。


 なんだか変な空気にしちゃった気がする。


 「でも、確かにマリィが麻痺効果のある武器を使ってくれたら戦略に幅が出るね。すごく良いアイディアかも」


 気を取り直して、リリエットの意見に賛同する。確かに麻痺効果は強力だ。弱い敵なら一瞬でも動きを止めてくれたら、今の僕らならそれだけで勝負がつくはずだ。


 「そ、そうだろう! だいたい、装備の話なのだから、最初だとか二番目だとか関係ないではないか!」


 なぜか語気が強くなっていくリリエット。


 「なんで怒ってるの?」


 「……バカ」


 リリエットは顔を背け、パンを大きくちぎった。


 なんだか少しだけ気まずい空気になってしまったが、その後は朝食を取りながら、パラライズフィンダガーに何を融合するかについて、リリエットと相談した。


 以前、欲しいと思っていたサハギンの毒ヒレは、その後も手に入っていない。あれがあれば理想的だったが、主が討伐されたダンジョンでは新たな魔物が湧かないため、今から狙うのは現実的ではない。


 結局、手元にある素材の中では、リザードマンの牙が最も適しているだろうという結論に落ち着いた。


   * * *


 朝食を終え、僕たちは宿を出てギルドへと向かう。


 ギルドの前では、すでにマリィが待っていた。僕たちの姿を見つけると、パッと表情を明るくして手を振ってくる。


 「おはよう! ユニス、リリエット! 今日から新しい冒険ね! どのダンジョンに行くの?」


 「おはよう、マリィ。その話もあとでみんなでしたいけど……まずは、ちょっとだけついてきてくれる?」


 「え、なによ。急に」


 怪訝そうな顔をしながらも、マリィは素直についてきてくれた。


 ギルドから少し離れた、路地裏のような場所に足を運ぶ。ここなら、他の冒険者の視線を気にせずに済む。


 「実はね、昨夜スキルが強化されたみたいなんだ。融合で、他の人の装備も作れるようになった」


 「えっ、それって――つまり、私たちのための装備も作れるってこと?」


 「うん。ただし、作れるのはその人専用の装備で、他の人が使おうとすると壊れちゃうらしい」


 「つまり、使い回しはできないのね」


「うん、そういうことだね。

 それで、朝リリエットと話してたんだけど――今、マリィに持ってもらってるパラライズフィンダガーに、リザードマンの牙を融合して、マリィ専用の武器にしようかって考えてるんだけど……どうかな?」


「いいの? もちろん賛成よ!」


 マリィはわくわくした様子で腰に下げていたパラライズフィンダガーを取り外し、僕に差し出してくれた。


 「これ、融合しちゃって!」


 「うん、やってみるよ」


 僕はバックパックの中から、リザードマンの牙を取り出し、手に持つ。


 リリエットも横で興味深そうに、静かに見守っている。


 「じゃあ、いくね」


 そこまで言ったところで、ふと気づいた。


 ――指定って、どうやるんだ?


 これまでの融合は、ただアイテムを手に持ち、強く念じるだけでよかった。ということは今回も、心の中で“誰のための装備か”を明確に念じればいいのだろう。


 僕は意識を集中する。


 マリィのための装備を――融合!


 パラライズフィンダガーとリザードマンの牙が、手の中でふわりと光に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ