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【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第二章

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誰かのための《融合》

 マリィとは、明日の朝にギルドの前で待ち合わせる約束をして別れた。


 僕とリリエットは、いつものように宿へ戻る。

 部屋に入って最初にしたのは、今日の融合だ。


 今日は、黄色スライムの靴とリザードマンの琥珀鱗を融合する。

 これでようやく――全身の融合が完了した。


 あの日から、僕は黙々と防具の融合を進めてきた。


 色合いの派手さが気になっていた琥珀色の防具たちも、使い込むうちに自然と色がくすみ、今ではいくらか落ち着いた印象になっていた。


 ……いや、単に泥やほこりで汚れてきただけかもしれないけれど。


   * * *


 融合を終え、それぞれの部屋で着替えた僕たちは一階の食堂へと降りた。


 食事を取ろうと席に着いた僕たちに、ネルコが声をかけてくる。


「二人とも聞いたかしら?

 サハギンのダンジョン、討伐されたって」


 「うん、それなら知ってるよ」


 つい先ほどギルドでその知らせを見てきたばかりだ。


「あら、じゃあこっちは知ってる?

 そのパーティ、炎を使ってリザードマンを混乱させたらしいの。

 何日か前にギルドで、リザードマンが炎や熱に反応するって話をした冒険者がいたらしくてね。どうも、その情報を使ったんだって」


 ネルコは意味ありげに僕を見た。


「せっかくの情報を漏らすなんて、ずいぶん間抜けな冒険者もいたもんだね」


「そうかしら。私は――その冒険者は、間抜けなんかじゃなくて。お人よしだったんだと思ってるけど?」


 ネルコは、すでにすべてを察しているような目をしていた。


 どうやら、反撃の余地はなさそうなので、僕はただ肩をすくめた。


 ネルコは僕の表情を見ると、それ以上何も言わず、ふっと笑って厨房へと戻っていく。


 「お人よし、だってさ」


 「……ああ、そうだな。ユニスはお人よしだ」


 リリエットが、ぽつりと呟く。


 「もう、リリエットまで……」


 僕はからかわれたような気がして、すねたように言った。


 「褒めているのだぞ」


 リリエットは意外なほど真剣な声で言った。


 「え……」


 驚いて顔を向けると、リリエットはまっすぐこちらを見ていた。


 「ユニスはずっといつだって優しい心を持っていた」


 思いがけない言葉に、僕は思わず言い返してしまった。


 「それは……違うよ。マリィを誘ったのは、トレントのダンジョンが残ってくれた方が、僕たちにとっても都合がよかったからだし。リリエットのときだって、ソロの限界を感じてたから、ちょうど良かっただけで……」


 リリエットは少し首をかしげて、それから小さく息を吐いた。


 「そうかもしれない。だが、私にはすべて逆に見えた」


 その声には静かだが芯のある強さが宿っていた。


 「ユニスは、マリィを助けたいと思った。だから、後から自分にも得があるように理屈をつけたんだ。私のときも同じ。本当は自分のことを後回しにして、誰かを助けようとする。私から見たあなたは、そういう人物だ」


 真っすぐに向けられるまなざしに、目をそらしたくなる。


 「そんなふうに言われても……正直、自分じゃよくわからないよ」


 テーブルに視線を落としながら呟いた僕に、リリエットは言葉を続けた。


 「だが、あのとき――ユニスは、リザードマンの性質をギルドで広めた。

 自ら道化となり、せっかく手に入れた情報を手放した。

 あれは……私には到底、思いつきもしなかった。

 けれど、ユニスはマリィのためになると信じて、ためらいなく実行した」


 「そんな大げさな話じゃないと思うけど……」


 そう否定しながらも、胸の奥が少しだけざわついていた。


 「いいや、これは――とても大事なことだと思う」


 その声は、穏やかでありながら、これまでにない熱を帯びていた。


 「ユニスの優しさは、ユニスの強さだ。その優しさが、マリィや私を結びつけた。モノとモノを融合するスキルよりも、人と人を繋いだその心こそ、本当に価値のある力なんじゃないかと……私は、そう思う」


  リリエットの言葉が、静かに、けれど力強く胸に響いた。


 「やさしさが……力、か」


 少し照れくさくて、でも不思議と胸の奥が温かくなる。


 「そうだとしたら、嬉しいな。リリエットにそう言ってもらえたのは、とにかく嬉しいよ」


 「ふっ……ただ、たまに心配にもなるけどな」


 リリエットがいたずらっぽく微笑んだ。


 「え、何が?」


 「ユニスは、女の子には無条件に優しいのではないかと」


 「そ、そんなことないよ! ちゃんと考えて行動してるつもりだよ!」


 慌てて否定すると、リリエットは珍しく、声を立てて笑った。


   * * *


 食事を終えて、僕たちは部屋へ戻った。


 寝る前、ふとリリエットの言葉を思い出す。

 ――優しさは、強さだ。人と人を繋ぐ、価値ある力。


 胸の奥がじんわりと温かくなった。

 毛布をかぶって目を閉じる。明日からは、また三人でダンジョンに挑むのだ。

 そう思うと、不思議と穏やかな気持ちになって、意識がゆるやかに遠のいていった。


 そして、眠りに落ちる寸前――


 『条件を達成し、スキル《献身融合》を獲得しました』


 あの日に聞いた、あの声が、静かに頭に響いた。


『献身融合:スキル《融合》の使用時に“対象となる一人”を指定することで、その人物専用の装備を生成できる。指定された人物以外が使用すると破損し、融合した本人も例外ではない。』



***************


【あとがき】


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。


今回のエピソードで第二章はひと区切りとなりますが、もちろんユニスたちの冒険はまだまだ続いていきます。


《《これからも変わらず、毎日更新を続けていく予定です》》。


もし少しでも「面白いな」と感じていただけたなら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです。何よりの励みになります。


これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

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