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【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第二章

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「ユニス」×「マリィ」×「リリエット」

 リザードマンが熱に反応するという情報を公表してから、五日が経った。


 僕たちはその間もサハギンのダンジョンの探索を続け、今日は八階層の探索を終えたばかりだった。


 ギルドに戻り、いつものように素材を売却しようと入り口へ向かうと――そこに、見慣れない立て看板が立っていた。

 

 『サハギンのダンジョン討伐が確認されました。

 懸賞金は、討伐したパーティに支給されます。

 トレントのダンジョンに対する懸賞金は、取り下げとなりました。』


 立て看板にはそう書かれていた。


 「とうとう……間に合わなかったか」


 リリエットが静かに言った。


 「そうだね」


 僕も、同じように看板を見つめながら頷く。


 あの日から僕たちも探索を続けてきた。そして、今日はようやく九階層への階段を発見したところだった。


 だが、不思議と胸に広がったのは悔しさではなかった。

 むしろ、どこか安堵に似た気持ちがあった。


 ――これで、マリィの守りたかったものは守られたのだ。


 「……あ、だから帰り道、やけに魔物が少なかったんだ」


 主を討たれたダンジョンは、新たな魔物が湧かなくなる。知識としては知っていたが、実際の出来事とこうして結びつけて実感するのは初めてだった。


 多分、今日の朝から昼過ぎの間に、討伐が達成されたのだろう。


 「…………」


 マリィは立て看板をじっと見つめていた。


 きっと、どこかで自分たちの手で討伐したかった、そんな気持ちもあったのだろう。けれど、やがて息を吐き、僕たちを順に見て――


 「ユニス、リリエット。ありがとう。……私が守りたかったもの、あなたたちが守ってくれたわ」


 マリィは、まっすぐな目でそう言った。

 本心からの感謝の言葉だった。


 「僕たちも、君にずいぶん助けられたんだよ。だから――ありがとう」


 僕は一拍置いて、少し迷ってこう続けた。


 「それと、こんなこと言うのも変だけど……おめでとう」


 結局、僕たちはダンジョンを討伐できなかった。


 けれど、これはこれで――ある種の勝利だ。


 「そうね、ちょっと変かも」


 マリィが笑った。その笑顔につられるように、リリエットも微笑んだ。


 僕たちはギルドでの売却を済ませて、表へ出た。


 リザードマンの素材は、今後手に入らなくなる可能性が高い。

 念のため、少し多めに手元に残しておくことにした。


 ギルドから少し歩き、人通りが少なくなった通りで、マリィがくるりと振り返った。


 「ユニス、リリエット。……あたし、決めたわ」


 マリィの声は、はっきりとしていた。


 「これからは、本気で冒険者を目指す。いつかダンジョンを討伐して、ギルドなんかに左右されない、そんな冒険者になる」


 その瞳は、まっすぐに未来を見据えていた。


 「そうしたら、自分の守りたいものは、なんでも自分の力で守るの。たとえトレントのダンジョンがいつか消えちゃったとしても――それでも子供たちを長く守っていけるような、そんな存在になる。あたし、そう決めたの」


 トレントのダンジョンの懸賞金は取り下げられた。


 懸賞金がなければ、冒険者たちは無理に主に挑むことはないだろう。

 リスクを冒すより、深層を周回して安定して稼ぐ方を選ぶ。けれど――


 ギルドの方針次第で、またいつ懸賞金がかけられるとも限らない。

 それに懸賞金がなくなったからといって、討伐自体が禁止されたわけでもない。


 何かの拍子に、ダンジョンの主が討たれる可能性は、ゼロではなかった。


 「だから――ユニス、リリエット。改めて、私を仲間にしてくれる?」


 マリィはそう言って、まっすぐに手を差し出した。


 「もちろん、歓迎するよ」


 僕はその手をしっかりと握り返す。


 「ああ。改めて、よろしく頼む」


 リリエットもその手を包み込むように重ねた。


 こうして――僕たちは、改めて三人で、次の冒険へと向かう決意を固めたのだった。


 けれどその夜、もう一つの転機が僕を待っていることに、このときの僕はまだ気づいていなかった。

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