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【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第二章

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溶岩の一撃

 融合が終わり、手元に残されたのは一振りの片手斧だった。


 半月型の刃が左右に広がり、黒曜石特有の光沢を帯びた漆黒の刃に、赤い炎の紋様が縁を這うように走っている。まるで灼熱の血が脈動し――斧なのに生きているような不思議な迫力があった。


 鑑定。


 《黒溶の戦斧(こくようのせんぷ):片手斧 攻撃力15 溶岩ダメージ+4 ※ユニス以外が使用すると破損》


 溶岩ダメージ…?


「どうだったのだ?」


 リリエットが、斧を覗き込むようにして訊ねてくる。


「黒溶の戦斧っていうみたい。攻撃力が前より上がってるし、新しく“溶岩ダメージ”ってのが付いてるね。前は“炎ダメージ”だったけど、今回の融合で変わったみたいだね。」


「溶岩ってなに?」


 マリィが小首を傾げて聞いてきた。


「高温で溶けた岩のことだな。火山の噴火のときに見られる現象だ。……まあ、私も本で読んだだけだが」


 リリエットが淡々と答える、流石は貴族のお嬢様だ。


「ふーん……火山って見たことないけど、なんだかすごそうね」


 マリィは斧を覗き込みながら、何だか嬉しそうに笑った。


「強いのかしら?」


「きっとね。でも、それは――明日のお楽しみかな」


 僕はそう言って、にっこりと笑った。正直、僕も溶岩というのがどのようなものなのかは想像がつかない。


「ふーん、まあ使ってみないとわからないわよね。楽しみだわ」


 マリィは斧をもう一度覗き込んでから、くるりと身を翻した。


「じゃあ、あたしはそろそろ帰るわ。融合がどんなのかも見れたしね」


 そう言って部屋の出口に向かおうとしたところで――


「せっかくなら、ご飯を一緒に食べていかないか?」


 リリエットが声をかけた。

 この宿の食堂は、宿泊客でなくても食事ができるようになっていて、夕食時には外から来た客も少なくない。


「ありがと。でも、夕食の時間はいつもバタバタするの。小さい子も多いし、シスターひとりじゃ大変だから」


「そうか。マリィにはたくさんの兄弟がいたのだったな」


 リリエットの声に、ほんの少し寂しさが混じっていた気がする。


「じゃあさ、いつか僕たちがそっちにお邪魔してもいいかな?

 トレントのダンジョンに行ってさ、果物をたくさん集めて、お土産に持っていくよ」


「いいわね、それ!

 みんな喜ぶわよ!」


「おお、それは楽しそうだな」


「じゃあ……サハギンのダンジョンを討伐したら、そうしよう」


「ええ、約束よ」


 マリィは笑顔でそう言い、そのまま孤児院へと帰っていった。


   * * *


 翌日。

 昨日と同じように南門でマリィと合流した僕たちは、再びサハギンのダンジョンを目指して歩き出した。


「さて、じゃあいよいよその斧がどんな効果なのかわかるわね」


 ダンジョンの入り口で、マリィが楽しそうに言った。


「そうだね。僕もちょっとわくわくしてきたよ」


 マリィに向かって頷き返しながら、気持ちを引き締める。


「でも、油断しないで。今日は本格的に四階層の探索をする。目標は――五階層への階段の発見だね」


「おー!」


「ああ」


 マリィとリリエットが、それぞれ気合のこもった声で応えてくれた。


 そして、階段を下り、ダンジョンへ。


   * * *


 しばらく進むと、単独のサハギンと遭遇した。


「じゃあ……斧の効果、試してみるね」


 僕は半歩前へ出る。

 サハギンがこちらに向かって突進してくる。走り込みながら、骨の棍棒を振りかぶった。


 その攻撃を、盾でしっかりと受け止める。


 そして――反撃。


 黒溶の戦斧を胴体めがけて叩き込むと、鋭い切れ味とともに斧から炎が噴き出した。


 ここまでは、今までの炎蜥蜴の斧と同じだ。

 だが――


 斧を振り抜いたあと、サハギンの傷口に赤く輝く泥のような物体が残っていた。

 それはぼんやりと光を放ち、じゅう、と音を立ててサハギンの体を焼いていた。


 ……これが、溶岩?


 サハギンは悲痛な叫びを上げ、傷口からは煙が上がっている。

 どうやら継続的にダメージを与えているようだ。


 このまま追撃をすれば簡単にとどめを刺せそうだったが――僕はあえて動かなかった。

 黒溶の戦斧の効果を、もっと確かめたかった。


 溶岩は2、3秒のあいだ赤く輝き続け、その後は霧のようにすっと消えた。


 サハギンが再び棍棒を振って攻撃してきたが、これも盾で防ぎ、反撃でとどめをさした。骨棍棒がドロップアイテムとしてその場に残った。


「ふむ、継続でダメージを与えているようだな。」


 リリエットの分析は、僕と同じだった。


「そうだね。でも、残る時間はそこまで長くないね」


「ああ、そのようだ」


 と、そのとき。


「ねえ、これってかなり凶悪じゃない?」


 マリィが少し身を乗り出しながら、眉をひそめた。


「傷口がそのまま燃え続けるなんて……こわいんだけど」


 そう言いながら、マリィは両腕で自分の体を抱くようにして身をすくめた。猫のような耳もぴくぴくと動いた。


 確かに敵の身になってみると恐ろしい効果だ。

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