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【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第二章

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再戦!リザードマン

 三階層から来た道を引き返し地上に出て、僕たちは一息ついた。


 初めてのダンジョン探索を終えたばかりだが、マリィは疲れも見せず、しっかりと両足で立っている。


「無事にダンジョンから帰ってこれたね。

 マリィ、初めてとは思えない活躍だったね」


 僕がそう声をかけると、マリィはちょっと照れくさそうに笑った。


「えへへ……ありがと。」


 入る前はずいぶん緊張していた様子だが、今ではすっかり問題なさそうだ。


 「でもね、あたし、ダンジョンってもっとお宝とか色々手に入ると思ってたのに、骨とヒレばっかりね」


「うん、それは否定できないな。サハギンって、あんまり“おいしい敵”じゃないんだよね」


「ギルドでの買い取り価格も低くてな、このダンジョンが人気がないのも頷ける」


 リリエットも、淡々とした口調で続ける。


「リザードマンだったら、もう少し良い素材が手に入るはずなんだけどね。あ、リリエットの鎧の素材とかもそうだよ」


 僕がそう言うと、マリィの視線がリリエットの鎧に向いた。


「そういえばそんなこと言ってたわね」


「ああ、軽くて頑丈だ。鍛冶屋も良い素材だと言っていた」


「でも、リザードマンってまだ見たことないわ。どこに出るの?」


「四階層から、だね。僕もまだ行ったことないけど」


「今日、三階層まで入ったんだからすぐ次の階層ね」


「そうだね。」


 以前、手負いのリザードマンと戦った時に苦戦したため、慎重に進んできたつもりだったが、そろそろ新しい階層を目指すべきタイミングかもしれない。


「……明日は、四階層を目指してみようか。僕とリリエットは一度、手負いのリザードマンと戦ったことがあるんだ。その時は結構苦戦したけど、装備も良くなったし、ポーションもある。それにマリィも増えた今なら行けると思うんだ」


 自分で言い出しておきながら、少し不安もあった。


 だけど、マリィは即答した。


「行こうよ。あたし、ちょっとワクワクしてるし!」


 その横で、リリエットも小さく頷く。


「マリィの動きがあれば、十分通用するはずだ。危険はあるが、ユニスの言う通りポーションもある」


「……うん。じゃあ、明日の目標は――リザードマンってことで」


 自然と、気持ちが引き締まった。


 そんなやり取りの後、マリィが思い出したように声を上げた。


「あ、そういえばさ。あの緑色のポーション、あれって結局なんだったの?」


「あれはね、僕のスキルの融合で作ったんだ。癒しの薬草と、空のポーション瓶を組み合わせて。」


「融合?なにそれ?」


 僕は簡単に融合スキルについて説明した。二つのアイテムを組み合わせて新しいアイテムを作れること、それで今まで武器や防具を作ってきたこと。


「そういえばユニスの装備、なんか他の人と違うなって思ってたけど……そんな事情があったのね。あ、リリエットの帽子も、そうなの?」


 リリエットは首を振った。


「これは違う。ダンジョン産の装備だ」


「僕が融合で作った装備は、ちょっと特殊でね。僕以外の人が使うと、壊れちゃうんだ」


「……それは不便ね」


 マリィが苦笑いしながら言った。


 確かに、共有できない装備は不便だ。いつかスキルが成長すればこの問題は解決するのだろうか…。


 そんな会話をしながら、僕らは迷宮都市へと戻った。

 素材をギルドに持ち込んで換金を済ませたあと、明日の約束をし、その場でマリィと別れた。


   * * *


 宿に戻ってから、僕は癒しの薬草と空のポーション瓶を融合し、もう一本の回復ポーションを作った。


 完成したポーションは、リリエットに持ってもらう。


「これで、全員が一本ずつ持つことになるね。不測の事態に備えておきたいから」


「助かる。万が一に備えておくのは、いい判断だ」


 明日の戦いは、これまでより厳しくなるかもしれない。

 けれど、三人で力を合わせれば――きっと、乗り越えられる。


   * * *


 翌日。

 

 今日はマリィと南門で待ち合わせていた。


 合流後、三人でサハギンのダンジョンへと向かって歩き出す。道中、僕は今日の主役とも言える魔物の話を切り出した。


「今日目指すリザードマンだけど、いくつか注意点があるんだ」


「注意点?」


 マリィが首を傾げる。


「まず、あいつらは尻尾で攻撃してくるんだ。範囲も広いし、振りが速い。油断してると、簡単に吹き飛ばされる」


「それと、噛みつき攻撃もある。顎の力が強くてな、まともに食らえば致命傷になりかねない」


 リリエットが補足するように続けた。


「ふたりとも、攻撃を受けたらすぐに判断してポーションを使って。出し惜しみはしないこと。生き残ることが一番大事だからね」


「了解!」


 マリィが軽く片手を挙げて応じた。僕はうなずいて、バックパックからあるものを取り出す。


「それとマリィ、これを預かってくれる?」


 僕が差し出したのは、パラライズフィンダガーだ。


「なにこれ?」


「僕が融合で作った武器なんだ。斬りつけた相手を短時間だけ麻痺させる効果がある。いざという時に使ってほしい」


 マリィは受け取ろうとして、少し手を止めた。


「でも、ユニス以外が使うと壊れちゃうんじゃ……?」


「うん。だけど、一度だけは使えるんだ。だから、本当に危ないときに使って」


 マリィは少し驚いた顔をしたあと、真剣に頷いた。


「……わかったわ。大事にする」


 もともとこのダガーは、僕自身が武器を投げてしまったときの緊急用として考えていたものだ。

 でも、今はいざというとき、僕よりもマリィが持っていた方が有効に使える気がした。


 その代わりに、僕はサブとしてバインドウィップを使う。

 動きを封じるこの鞭なら、リザードマン相手でも隙を生み出せるかもしれない。


   * * *

 

 サハギンのダンジョンに到着する。


 今日は昨日と違い、メモを頼りに最短ルートで三階層を目指すことにした。

 無駄な戦闘は避け、極力スムーズに行動する。


 三階層に到達してからは、まだ踏み込んでいなかった通路を潰していき、四階層へと続く階段を探す。


 昨日も探索を進めていたおかげで、意外と時間はかからなかった。


「ユニス、あれを」


 通路の奥に、下へと続く石の階段が現れた。

 周囲を確認し、僕たちはそこで一度呼吸を整える。


「よし……じゃあ、気を引き締めていこう」


「ああ」


「おーっ!」


 リリエットが頷き、マリィが拳を握りしめ、僕たちは一歩ずつ、慎重に階段を下りていった。


 四階層に足を踏み入れ、しばらく階段近くを警戒しながら探索していると――


 気配が動いた。


 通路の影から、一体のリザードマンが姿を現す。

 緑色の鱗に覆われた筋肉質の体。手には石の刃をくくりつけたような鉈を持っている。


 通路に緊張が走る中、僕とリリエットが前に出て構え、マリィはその少し後ろ構える。


 斧を握ったリザードマンが、咆哮とともにこちらへ突進してくる。


「来る……!」


 僕は半歩リリエットより前に出る。


 リザードマンは突進の勢いそのままに僕に向かって斧を振り下ろす。

 僕は盾を前に出して受け止めた。


 重い衝撃が腕に走る――が、それだけでは終わらない。


 力任せに、立て続けにもう一撃。

 金属がぶつかる甲高い音と共に、僕の身体が少し後退した。


「ぐっ……!」


 腕にびりびりと痺れが走る。だが、耐えられる。

 耐えた、その瞬間――


「今だ!」


 リリエットが横から踏み込み、聖銀の剣をリザードマンの脇腹へと振るった。

 甲高い音とともに、鱗が裂け、鈍い悲鳴が響いた。


「ギィィィアアァッ……!」


 リザードマンが吠え、斧を振り上げる。今度はリリエットを狙っている。

 だが――


「後ろ、もらった!」


 いつの間にか、マリィがその背後に回り込んでいた。


 閃く短剣が、鱗の隙間を正確に貫く。

 飛び散る鮮血に、リザードマンが怒りの咆哮を上げた。


「尻尾が来るよ!」


 僕が叫ぶより早く、リザードマンは体を半回転させながら、しなる尻尾をマリィに向けて叩きつけた。


 だが――マリィは警戒していた。


「遅い!」


 すぐに後ろに飛び、すかさず距離を取り、尻尾を回避する。


 その一瞬、リザードマンは僕とリリエットに無防備な背中を見せていた。


「今だ!」


 僕とリリエットが同時に動く。

 斧と剣が背中へと振り下ろされる。鱗が砕け、リザードマンがよろめいた。


 だが――まだ、倒れない。


 リザードマンは再びこちらを狙ってきた。振り向く勢いのまま、斧を横なぎに振り払ってきた。


 僕とリリエット、両方を巻き込むつもりだ!


「……っ!」


 僕は盾を構え、真正面からそれを受け止めた。

 重い衝撃とともに身体が数歩、後方へ押し流される。


 その間、リリエットは地を這うように低くしゃがみ、斧を回避。


 そして――


「はっ!」


 一瞬で立ち上がりざまに腹を切り裂く。

 すぐに剣を引くと、自らの額へ剣先を寄せ構え直した、次の瞬間――


 目にも留まらぬ速さで、突きを放つ。


 聖銀の剣が、下顎から上顎を縫い付けるように突き抜けた。


「ギィィィィ……!」


 リザードマンが大きく仰け反り、動きが止まる。


 その隙を逃さない。


「これで、終わりだ!」


 渾身の力を込めて斧を胴体に向かって振り抜く。

 

 炎が刃からほとばしり、リザードマンの体を内側から焼き尽くす。

 

 そして――とうとうリザードマンは崩れ落ち、光の粒となって消えた。


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