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【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第二章

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双剣の冒険者

 晴れてパーティを組むことになった僕らは、まず最初に武器屋へと向かった。


 マリィが仲間として同行するには、最低限の装備が必要だ。まずは武器選びからだ。


「マリィは、どんな武器を使ってみたい?」


 店に入ってすぐ、僕はそう尋ねた。


 マリィは少し考えるように視線を店内に巡らせてから、はっきりと答えた。


「あたし、短剣がいいわ」


 なるほど、短剣か。マリィのあの身のこなしなら、相性は悪くなさそうだ。


 軽くて取り回しがよく、力がなくても側面や背後から急所を狙えば大ダメージが期待できる。


 店売りの品の中では、最も基本的なものが《ダガー》だった。値段も手頃で、初めての一本としては悪くない。


「すみません、このダガーを試しに持たせてもらってもいいですか?」


 店主に声をかけて許可をもらい、一本のダガーを取り出す。


 マリィがそれを受け取り、手にしたとたん、自然と構えを取った。その手つきは、ぎこちなさこそあるものの、どこか馴染んでいるように見える。


 だが──


「あの、もう一本借りてもいい?」


 マリィはそう言うと、もう片方の手にもダガーを握った。


 二本の短剣を構え、足を半歩引いて腰を落とす。


 その瞬間、空気がピンと張り詰めたように感じた。


 黒髪のショートヘアがふわりと揺れ、鋭く前を見据える瞳。その頭にある猫のような耳がぴくりと動いたとき、僕にはまるで──密林の中、獲物を狙う野生の捕食者のように見えた。


「……様になってるね」


 僕が思わずそう呟くと、マリィは照れたように笑った。


「あたしのお母さんも、短剣使いだったの。いつも、お父さんのサポートをしてたんだって。小さいころ、お母さんがどんなふうに戦うのか、真似して見せてくれたことがあったの。……すっごく、かっこよかったわ」


 その言葉に込められた想いに、僕はすぐには返す言葉を見つけられなかった。


 マリィの表情には、母を想う誇らしさと、その面影を追いかけるような寂しさが入り混じっていた。


 彼女の両親はダンジョンから帰ってこなかった。


 十年も孤児院で暮らしていると言っていたから、戦いの様子を真似して見せてくれたのも、本当に幼い頃の思い出だろう。それでも、母が見せてくれた短剣の構えを、ずっと大切に心に残してきたのだ


「これ、気に入ったわ。あたし、これにする。二本でも大丈夫よね?」


 そう言って、マリィは二本のダガーを一旦鞘に収めて、店のカウンターに置いた。


「もちろん」


 僕は頷いた。


 ダガーは一本150ゴルド。合計で300ゴルドだ。十日間の無償同行を思えば、安いくらいだが最初は、防具にこそお金をかけるべきだろう。


「二刀流か。頼もしいな」


 リリエットが屈託なく笑いながら声をかける。


「ありがとう。あたし、お母さんみたいに、立派な冒険者になるわ」


 マリィの瞳は、まっすぐに輝いていた。


 こうして武器を購入した僕らは、次に防具を揃えるため、防具屋へと向かった。


   * * *


 店に入ると、マリィは物珍しそうに店内を見回した。


 欲を言えば、マリィには全身を狼革で覆った防具を用意してあげたかった。だが、さすがに予算的にそれは厳しい。まずは必要な部位を重点的に固めることにした。


 最終的に選んだのは、頭と胴体部分だけを狼革製にした構成だ。あとは一般的な皮の防具で揃えた。


「あの、獣人用の兜ってありますか?」


 店頭に並んでいる兜だと、マリィの場合、耳が邪魔になって上手く付けられない。店主に尋ねると、彼はすぐに奥の棚からひとつの兜を持ってきてくれた。


「もちろんあるさ。これなんかどうだ。耳の部分にちゃんと通し穴が空いてる。獣人向けの定番だよ」


 受け取ったマリィがさっそく試着すると、頭の上からぴょこんと猫耳が飛び出した。


「え、でもこれじゃあ耳の部分は無防備じゃ……」


 僕が思わずそう言うと、マリィはくすっと笑って、耳をぴくぴくと動かしてみせた。


「なに言ってるの、耳をふさぐ方がずっと危ないわ。これなら、どこから攻撃が来てもちゃんとわかるわ」


「な?こいつらは、みんなそういうんだよ」

 店主が自慢げに言った。


 マリィは満足げに他の部位の防具も順に試着する。


 その間にリリエットが店主に声をかける。


「リザードマンの鱗でできた鎧があると聞いたが」


「ああ、あるとも」

 店主は目を細めてうなずく。


「前は注文を受けてから作ってたんだが、最近はサハギンのダンジョンに懸賞金がかかってるだろ?おかげで素材が余っててな。ちょうど今ならサイズが合いそうなのが在庫にあるぜ」


「それは僥倖だ。実は鎧だけでも、そろそろ良いものに変えたいと思っていたのだ」


「よし、ちょっと待ってろ」


 店主は巻き尺を取り出し、手早くリリエットの寸法を測ると、奥に引っ込んでいった。少しして、蜥蜴鱗の鎧を手に戻ってくる。


 こうして、マリィの装備だけでなく、リリエットの装備も新調することになった。


 マリィの防具が一式で1800ゴルド、リリエットの鎧が1200ゴルド。合計で3000ゴルド。


 最近の稼ぎがあっという間になくなってしまったが防具は命に関わる装備だ。ケチってはいけない。


 ただし、防具は一部サイズの調整が必要とのことで、仕上がりまで少し時間がかかるという。


 そのあいだに、僕たちはマリィ用のバックパックと、全員分の腰に取り付けれるポーチを買い揃えた。


 このポーチはポーションを収納しておけるもので、緊急時にすぐ取り出せるようにするためのものだ。いままではバックパックの奥に詰め込んでいたが、正直それでは対応が遅れる。前からこういうものが欲しいと思っていた。


 買い物を終えて再び防具屋に戻ると、調整済みの防具一式が用意されていた。


 これで冒険の準備は整った。


 いよいよダンジョンに向けて出発する。

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