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「ナイフ」×「火打石」

 今日もダンジョンでゴブリンを狩る。


 ゴブリンは人間を見つけると、必ず一直線に向かってきて、飛び上がって攻撃してくる。

 この単純な攻撃のおかげで、最初の攻撃を防ぎ、カウンターを決めるという戦法が成り立つ。


 僕が今日まで命を落とさずに済んでいるのは、このゴブリンの単純さのおかげだ。


 以前までは、カウンターを決めた後もしばらく戦闘が続いていたが、今は違う。

 ゴブリンソードのおかげで、カウンターの一撃でほとんど勝負が決まる。


 本日、18体目のゴブリンを倒す。

 ドロップはナイフ。

 今日はナイフが3本も落ちた。


 運がいい。

 ナイフはゴブリンを10体倒して1本出るかどうか。

 それ以外のドロップは、ほとんど牙か棍棒だ。


 今日は、ナイフを素材に使ってもいいかもしれない。


 バックパックもいっぱいになってきたし、そろそろ引き上げよう。


 帰り道、ふと考える。

 そもそも、自分でドロップしたアイテム以外を使ってもいいんじゃないか?


 ギルドは買い取りだけでなく、日用品として使えるドロップアイテムも販売している。

 ギルド以外にも、迷宮都市のあちこちでドロップアイテムを取り扱っている露店や商店はある。


 今日は、何かひとつ試しに買ってみよう。


 あまり高いものはやめておこう。

 部屋に置いてあるウッドスピアを思い出す。

 高値で買って、使い道のない置物になったら困る。


 いっそ売ってしまおうかとも思ったが、鑑定結果には「ユニス以外が装備すると破損」とあった。


 本当に他人が装備して壊れるのなら、売り物にはできない。

 いつか誰かに試してもらうしかない。


 そう考えたとき、ほんの少しだけ仲間がいないことが寂しく感じた。


 ギルドに到着し、ナイフ、棍棒、ゴブリンの牙をそれぞれ1つずつ残して、他の素材を売却する。

 今日はナイフを融合に使うつもりだが、他のアイテムも使うかもしれない。念のためだ。


 本日の収入は170ゴルド。


 そのままギルドの売店をのぞく。


「岩塩」、「胡椒」、「麻布」、「ナイフ」などが並んでいる。

 ナイフはゴブリンが落とすのと同じ物で、販売価格は30ゴルド。


 岩塩と胡椒も鑑定してみたが、できなかった。

 どちらもダンジョンでドロップするらしいが、小分けにされているためか、鑑定できないらしい。

 麻布は鑑定できたが、素材としては微妙な印象だ。


 そんな中、火打石が売っていることに気づく。

 価格は40ゴルド。

 鑑定すると、《火打石:道具》と出た。


 これは……使えるかもしれない。

 購入することに決めた。


 その後はいつも通り。

 宿屋に戻って食事をとり、部屋に戻って眠る。

 明日が待ち遠しい。


 翌朝。

「火打石」と「ナイフ」を手に取り、融合スキルを発動する。


「融合」


 光があふれ、ふたつのアイテムが一体化していく。


 《火花の短剣:片手剣 攻撃力4 炎ダメージ+1 ※ユニス以外が使用すると破損》


「おおっ……」


 声が漏れる。

 ナイフよりひとまわり大きな短剣。

 刃の根本に赤く輝く文様が刻まれていた。


 ちょっとテンションが上がる。


 昨日残しておいた棍棒を左手に持ち、火花の短剣で軽く斬りつけてみる。


 ボッ。


 棍棒が一瞬で燃え上がった。


「うわっ!」


 慌てて床に落とし、足で何度も踏みつけて鎮火する。


 焦った。


 床を見ると、うっすら焦げた跡ができている。

 靴でこすってごまかすが、ちょっとだけ焦げ跡は目立っている。


 部屋を出るとき、宿屋の人に怒られないといいけど――

 しばらくはこの宿に泊まる予定だし、一旦忘れることにしよう。


 準備を整え、今日もゴブリンダンジョンへ。


 宿を出るとき、食堂の掃き掃除をしているネルコと鉢合わせる。


「いってらっしゃい、気を付けてね!」

 ネルコが元気よく言う。


「い、いってきます」

 僕は少しだけ詰まりながら答えた。


 ネルコは特に気にしていないようで再び掃き掃除に戻った。


 大丈夫、あんな小さな焦げ跡、誰も気にしないはず。

 僕はそう自分に言い聞かせた。

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