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【祝・書籍化!】融合スキルで武器無双!ゴブリンソードから伝説へ  作者: 田中ゆうひ
第四章

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ストーンゴーレム

 翌朝。

 ゴーレムのダンジョンの入り口に、僕らは集まっていた。


「さて、今日の目標は――二階層、だね」


 僕が言うと、三人がうなずいた。


「二階層からはストーンゴーレムが出てくるんだろ?」

 ナズカが杖を軽く叩きながら言う。


「うん。クレイゴーレムよりも硬くて、打撃も重いらしいよ」


「でも、僕の魔法なら問題ないさ」

 ナズカが自信ありげに笑う。


「そうだね。だから一階層ではナズカの魔法は温存しておこう。

 できるだけ消耗を抑えて、二階層で本命の戦いに備えたい」


「了解。じゃあ、今日は私の鞭の出番ね」


 マリィが腰の《ウッドゴーレムウィップ》を軽く叩いて言った。

 昨日の少し残念そうな表情はもうない。

 新しい武器を試す機会が来たのが嬉しいのだろう。


 その姿を見て、リリエットがふっと微笑む。

 彼女の表情もいつも通りで――それが何より安心だった。


 僕たちは短く頷き合い、ダンジョンへと足を踏み入れた。


 * * *


 一階層は昨日と同じく、湿った土の匂いが立ち込めている。

 階段を降りてすぐの通路を進み、十字路を曲がると早くもクレイゴーレムの姿が見えた。


「行こう」

 僕が構えると、マリィが右斜め前方に飛び出し鞭を振り上げた。


 鞭がしなり、クレイゴーレムの胴体に絡みつく。


 マリィは鞭を引いて、クレイゴーレムの動きを封じようとした。

 だが、巨体はまったく動じない。


「……ちょっと大きすぎるわね!」


 焦り気味に言いながらも、マリィはなおも力を込めて鞭を引く。

 けれど、やはりマリィの腕力では動きを止めるのは難しそうだ。


「無理はしないで。ここは僕とリリエットに任せて!」


 リリエットと並んで前へ出る。

 僕が盾で拳を受け止め、リリエットの剣がクレイゴーレムの腕を切り裂く。

 重い衝撃が腕に響くが、昨日よりも冷静に対処できている。


 そうしている間にマリィは鞭を手元に引き戻し、短剣を抜いて背後へ回り込んだ。

 そこからはいつもの連携だ。

 慎重に攻撃を重ね、少しずつクレイゴーレムを削っていく。


 やがてクレイゴーレムは倒れ、光の粒となって消え、ドロップアイテムの粘土だけが残った。


 少し時間はかかったが、危なげなく最初の戦闘を終えることができた。


「動きを止めようと思ったけど、なかなか難しいわね」


 マリィが鞭を巻き取り、腰に戻しながら肩をすくめる。


「でも、感じは悪くなかったと思うよ。動きを完全に止めなくても、阻害できれば十分だから、次は狙いを変えてみよう。手とか足とかさ」


「そうね。やってみましょう」

 その提案に、マリィがうなずいた。


 * * *


 二体目のクレイゴーレムとの戦い。

 今度はマリィが先に動いた。鞭が地を這うように伸び、ゴーレムの脚へ絡みつく。


「今度は足よ!」

 鞭が締まり、粘土の脚がきしむ。

 ゴーレムは踏ん張って転倒までは至らないが、動きが鈍った。


「いいね、今だ!」

 僕とリリエットが同時に踏み込み、攻撃を浴びせる。


 渾身の力で振り抜いた斧が、クレイゴーレムの左腕を切り飛ばした。


 こうなると戦闘はぐっと楽になる。

 その勢いのまま、あっという間にクレイゴーレムを討ち倒した。


 マリィが息を吐き、満足そうに笑う。


「ふふ、今度は上手くいったわね」


「うん。狙いを変えて一発で成功なんて流石だね」


 この調子なら魔法を温存しながら探索できそうだ。


 順調な滑り出しだった。


 昨日の探索で一階層の地形はほとんど把握していたこともあり、その後もスムーズに進行できた。


 数度の戦闘を経て、通路の奥に続く石段を見つけた。


「……あったね。これが二階層への階段だ」


 * * *


 二階層に降りると、空気がひんやりと乾いていた。一階層と何も変わらないはずだが空気が冷たく感じるのは、緊張によるものだろうか。


一度、大きく深呼吸をして、探索を始める。


 最初に出会った敵は、一階層と同じクレイゴーレムだった。

 二階層ではまだこの種が多いという話だったので、順当なところだ。


 マリィの鞭で先制し、動きを止める――そんな流れが形になってきていた。


 もちろん、毎回上手く足に鞭を絡められるわけではない。

 初撃が上手くいかなかった場合、マリィはいさぎよく鞭を捨て、短剣に持ち替えて援護に回る。


 鞭の軌道を制御するには慣れが必要だ。


 僕やリリエットが前に出てしまうと、まだ不慣れなマリィでは誤って僕らに当ててしまう可能性もある。


 だから、うまくいかない時は潔く切り替える――それが彼女の良いところだ。

 きっとそのうち慣れて、戦い方の幅も広がっていくはずだ。


 そうして二階層でも順当にクレイゴーレムを倒していく。


 階段からそれほど離れずに探索を続けていると、

 やがて、今までのものとは明らかに違う気配を感じた。


「……いたね」


 視界の奥、通路の影からゆっくりと巨体が姿を現す。

 灰色の岩のような肌。クレイゴーレムよりも一回り大きく、

 丸みを帯びていた粘土の体とは違い、角ばった輪郭が力強さを際立たせている。

 動くたびに、細かな石片がぽろぽろとこぼれ落ちた。


「これが……ストーンゴーレム」

 リリエットが小さくつぶやく。


 巨体は、ゆっくりと、だが確実にこちらへと歩を進めてくる。


 粘土のゴーレムとは違う――重く、冷たい威圧感。


 これからが、二階層の本番だ。

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