「ユニス」×「ナズカ」×「リリエット」 ×「マリィ」
僕たちはその後もスライムを倒していった。
成り行きで始まった探索だったが、あらためて考えてみれば――僕らのパーティはスライムと相性が抜群にいい。
僕の《黒溶の戦斧》、リリエットの《アイスブランド》。どちらも追加効果がスライムによく効く。さらにマリィの短剣による状態異常も通じる。
そして、言うまでもなくナズカの雷魔法がある。
――正直、これほどスライム相手に有利な組み合わせは珍しいかもしれない。普通の武器で斬ったり叩いたりしても手こずる相手なのに、僕らにとってはほとんど障害にならなかった。
とはいえ、今日は急に始まった探索だったので、ほどほどのところで切り上げることにした。
それでも大量のスライムゼリーと魔石を集めることができ、前回ここを訪れたときとは比べものにならないほど効率がよかった。
ナズカが加わってからは、僕たちは再びトレントのダンジョンを中心に探索していたが――こうしてみると、別のダンジョンでも十分やっていけるのかもしれない。
最初はお互い勝手を知っている場所の方がいいだろうと思っていたが、今の僕らなら、まだ手をつけていない場所にも挑める気がした。
そんなことをぼんやりと考えながら探索を終える。
ダンジョンを出て、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。
今日はいつも以上に空気が爽やかに感じられた。――きっと気分のせいだ。
僕らは都市へ向けて歩き出した。
「ねえ、これからはどうするの」
マリィが尋ねた。
「どうするって、いつも通りギルドに行って換金して――」
「もう、そうじゃないでしょ」
確かにそんな当たり前のことは聞くわけがないか。
「今後のダンジョンのことか?」
リリエットが言う。やはりリリエットも、今のパーティならもっと難しいダンジョンに挑めると感じているのだろう。
「それもあるけど、パーティ名のことよ!」
「パーティ名?」
ナズカが少し驚いたようにつぶやいた。
「ふむ」
リリエットが意味深に頷く。
マリィは以前もこの話を持ち出したが、そのときは決まらなかった。
「そうよ、今日はみんなで“これから頑張っていこう”って決めた日でしょ!」
「まあ、間違ってはいないね」
「なら、名前を決めるにはぴったりじゃない」
マリィがそう言うと
「実は私もあの後、考えた案がある」
意外なことにリリエットが口を開いた。
「え、どんな案なの?」
マリィが興味津々だ
「――“炎と氷の詩”だ」
やけに情緒のある名前だった。リリエットは言い終えると、少し気恥ずかしくなったのか、はにかむような笑みを浮かべる。
その表情は、今まで見たことがなくて――少しドキリとした。
「悪くないけど、でもそれってユニスとリリエットのことだけだよね。僕とマリィは入ってないじゃないか」
ナズカが苦笑しながら言う。リリエットはハッとしたように頬をわずかに赤らめた。その反応を見て、なぜか僕まで少し気恥ずかしくなる。
「そうね、それなら“炎と氷と麻痺と雷の詩”ね。……さすがに長すぎるわ」
マリィが冗談めかして笑った。
そもそも、僕らの武器は融合によってコロコロ変わるので、武器をもとに名づけるのは少し難しい気がする。
「僕の案もあるよ!」
ナズカが得意げに胸を張った。
「――“雷鳴の支配者たち”!」
「支配者たちって……雷を使うのはナズカだけじゃない」
マリィが半眼で冷静に突っ込む。
「実は僕も、考えていた案があるんだ」
少し控えめに切り出す。――以前パーティ名の話が出たときから、ずっと頭の片隅で温めていた案だ。
「ユニスの案? 聞きたい聞きたい!」
マリィが目を輝かせて身を乗り出した。
「……“融和”って名前はどうかな」
いざ口にしてみると、少し気恥ずかしさが込み上げてくる。
「“融和”……」
リリエットが小さくつぶやいた。
「融和か……何かと何かを繋げてひとつにする、って意味よね」
マリィが少し考えるように言う。
「やっぱり《融合》スキルが、このパーティの核だからだね」
ナズカが腕を組み、納得したようにうんうんと頷いた。
「それもあるけど――」
僕は息を整え、みんなの視線を受け止める。
「融合って、武器や道具をひとつにするだけじゃなくて……僕たち自身もそうだと思うんだ。力や役割は違っても、ひとつに溶け合って、補い合って――だから“融和”って名前を考えたんだ。仲間の形を、そのまま表している気がして」
言い終えると、どこかむず痒くて肩をすくめた。
「……なるほど。良い名前だ」
リリエットが真っ先に頷いてくれた。
「なかなか素敵じゃないか」
ナズカも笑みを浮かべる。
「融和のリーダー、ユニス。結構いい響きね」
マリィも笑顔を見せ、反対ではなさそうだ。
僕は改めてみんなの顔を見渡した。
――誰も否定しない。みんなの表情に、自然と胸が温かくなる。
「じゃあ、僕らは今日から――“融和”だね」
「じゃあ、融和のリーダー、ユニス。我々は明日からどのダンジョンに挑むのかな。トレントのダンジョンなのかな?」
ナズカが芝居がかった調子で問いかけてくる。その口ぶりからして、彼女自身も別のダンジョンを期待しているらしい。
「実は、考えていたダンジョンがあるんだ」
僕はわざと少し間を置いて、みんなの注目を集める。
「――“ゴーレムのダンジョン”だよ」
****************
【あとがき】
本日発表の 「第13回ネット小説大賞」 にて、
本作が 入賞 し、書籍化が決定しました!
ここまで物語を追いかけ、応援し続けてくださった皆さまのおかげです。
本当にありがとうございます。心から感謝いたします。
本を出すことは子供の頃からの夢でした。
その夢がこうして形になろうとしていることに、胸がいっぱいです。
書籍化については、これから刊行時期や詳細が決まっていく予定です。
新しい情報をお伝えできるようになりましたら、この場で真っ先にお知らせいたしますので、よろしければ今のうちにブックマークしていただけると嬉しいです。
これからも、ユニスたちの物語をどうぞよろしくお願いいたします。
【あとがき】
本日発表の 「第13回ネット小説大賞」 にて、
本作が 入賞 し、書籍化が決定しました!
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本を出すことは子供の頃からの夢でした。
その夢がこうして形になろうとしていることに、胸がいっぱいです。
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