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2-2

2.

 石碑に刻まれた文字を読み終わると、アルパスは複雑な顔をした。その微妙な空気を読み取ってリーゼは少し笑って、幸せを声ににじませて言った。


「これはね、光の使者、ファロ様がお書きになったものなのよ。あの方は、いつでもこの島を心配されていたわ。なぜかは分からないけど、でも、ファロ様が来ると、島のみんなは励まされるの。あの方は本当に、あたたかい人……」


 そこまで言ってから、リーゼは少し悲しそうな顔をした。

「どうしていらっしゃらなくなったのかしら。もう随分経つの。私のことをまだちいさな子供と思っているわ」


 アルパスは当惑して石を見ていたが、リーゼが今にも泣きそうになったので、持ってきた花を石の花瓶に生けた。その音にリーゼは顔をあげて微笑んだ。


「きっと、なんか忙しいんだよ。だってさ、光の使者なんだろう? 他のところの方がずっと大変だから、そっちを直してるんだ」


「そうかしら?」

「うん」


 岬からは遠くの海岸線まで見渡せた。 

 風が耳元に鳴り、潮騒が近く遠く押し寄せる音が響いている。見事な夕日は徐々に暮れはじめた。海岸線にひとすじの光を残しながら沈んでいる。


「さ、行こう。もう暗くなるよ」

「アルパス、ありがとう」


 目の見えない彼女の手をとり、岬から村へと急いだ。

 この島の透明な優しさの根源に触れた気がして、アルパスは長くこの言葉を忘れることはなかった。


 三日ほどしてから、アルパスはこの居心地のいい島を出ることにした。ノーマンの母親は無事に天に召され、葬儀に参加してから船に乗り込んだのだ。


「さよなら、リーゼ。また、いつか会いたいな」

「うん、アルパスも元気でね!」


 懸命に手を伸ばす彼女の手を安心させるように取って、手をつなぐ。マシューがさみしそうにうなだれていた。けれど、つよく視線を上げてアルパスを見る。


「にぃちゃん、きっと帰ってきてね。島へ」

「ああ、そうだな」


 島の者たちは、みな親切で優しかった。性格はそれぞれだから、優しさにもこんなに個性が現れるものなんだとおかしく笑った夜もあった。


「みんな、ありがとう! 元気でな」

 アルパスは船が出発する合図に船へ乗り込んだ。


 これからアルパスは地図をブッケル国へと持って行かなければならない。ブッケル国に行く船は、シンサー国の港から出ている。一度戻らねばならなかった。


「またな!」

 リーゼの姿がぼんやりとして見える。目の見えない彼女が、必死になって聞いているのはアルパスの声だろう。


「また来るからな。約束だよ」

 声限り叫んで、アルパスはみんなの見送りに応えた。


 島から出るのが、本当にさみしかった。こんな場所は他にはないだろうと、心から思うのだ。絶対に戻ってくる。アルパスはこの島に住みたいと痛切に思った。



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