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2-1.

「ファロ様、光の人……」

「見えている? ファロでいいですよ。君は?」

「リーゼ」


 柔らかな声音は、リーゼにとって宝物となった。

「リーゼちゃんか、いい名前だね。とってもよい子だね」

 やさしい光に満ちた人なのだ。見えない目で見える唯一の人。


 島は貧しくて、魚はそんなに捕れなかった。けれど、ヒュー様はどんどん島を豊かに変えていったの。島の人たちは協力をして農業をしはじめた。野菜を取り、きのこや山菜を増やしていった。何度も船で大陸へ行ったりもしたらしい。


 反発もあり、島は分裂の危機に面したこともある。リーゼには分からなかったが、島を出て行こうとする者すらあった。


 しかし、ファロが来れば分裂はすぐになくなった。

「なんでファロ様が来るとみんな、優しくなるの? 魔法なの?」


「魔法? リーゼ、魔法なんて使わないんだよ、みんなね、自分の心と対話をして自分で決めているんだ。自分がどうしたらいいか。すると、みんな知らないうちに優しくなるんだ」

「何で? どうして?」


 ファロは自分のローブのすそを掴んで離さない子供に、丁寧に話した。

「だって、みんな幸せになりたいでしょう? 『幸せ』というものは、『自分だけ幸せ』になっても、本当にはしあわせと思えないんです。とても不思議ですが、みんなの喜んだ顔を見ると、ずっと幸せは増えていくんですよ。リーゼは、どう思いますか?」


 ファロはゆっくりと歩く癖があった。

 リーゼを思ってなのか、それが普通なのかは分からない。ただ、ファロはけして焦らずに、けっして声を荒げたりもせず、いつもおだやかでぽかぽかしていた。


「うーん、よく分かんない」

「じゃあさ、簡単に言うとね。たとえば、とっても美味しい食べ物があったとするね、それはそんなに大きくないけど、本当に美味しくて、幸せが口いっぱいに広がる食べ物なんだ。リーゼは全部一人で食べるかな?」


「うん、美味しいの好き!」

 ファロはリーゼの頭をなでてくれた。

「お母さんに分けてあげたらどうかな?」


 リーゼははっとした。きっと、お母さんはとっても喜ぶだろう。リーゼの美味しい食べ物を半分にしたら、どんなに喜んでくれるだろう。

「お母さんに分けてあげる!」


 リーゼはファロの手を取って、つないでもらってから跳ねた。

「そっちの方が、リーゼは嬉しそうだね」

「うん! 母さんが喜ぶの、すっごく嬉しいの」


 ファロはうんうんとうなずいてから、もう一度頭をなでた。リーゼは頭をなでるファロのあたたかな手が大好きだった。


「ほらね、幸せを分けると、みんなもっと幸せになるんだ」

 まるで笑顔が見えるような声。やわらかな口調で、本当にやさしい男の人の声なのだ。

 手をつないでいると、世界で一番幸せな気がした。


「リーゼだって、ほらね、すぐに分かるでしょ? みんなだって、同じなんだよ」

 うれしくて、幸せで、永遠の中にいる気分だった。


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