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改稿することになりました。
休止します。
「もしよろしければ、天帝の塔に喜捨していただければと思いますが。エルウィンド州は、とても豊かで貧困とは程遠いですが、それでも生きていくのに精一杯の人もいます」
ファロはありがたいなと思いながら、果実水を手に取った。
「それは名案だな」
「提案に感謝を、乾杯」
アスターが許可すると、ミハイルが乾杯の音頭を取ってくれた。和やかに食事がはじまる。
これだけの料理だ、部下など呼べば良さそうだが、誰を呼ぶかで統率に問題が起きることもある。呼ばないのが賢明だ。
煮込んだ肉をよそってもらい、トマトのスープをいただき、野菜が盛られたパンを取る。煮込みは口の中でほどけるほど柔らかく、パンも食べやすい大きさだった。スープもコクがあり、さっぱりもしており、ファロは久しぶりに懸命に食べた。
三人ともあまり話すこともなく、つぎつぎと口に物を運んでいた。
「はぁ、お腹がいっぱいです。お二人とも、本日の報告だけさせてください」
最近の不摂生は、陸軍のトップの二人も苛んでいたため、栄養たっぷりの食事は、殊の外おいしかったらしい。食後はくつろいで、ゆったりとした気分だ。
アスターがに手を上げた。
「お茶を頼む。ファロ、報告をお願いするよ。」
二人の女性は嬉しそうにすると、てきぱきとお茶の準備をしてくれた。
「どんな報告なんだい?」
今にも眠りに落ちそうなミハイルが、聞いてくる。
寝不足の上、二度目の食事で満腹なファロも、ふらつくほどの眠気と戦いつつ話す。さすがにゆっくりな口調になってしまう。
「シンサー国の第二首都ですが、賊の手は入っていないそうです。潜入している賊の洗い出しの協力もしてくれると言っていました。首都ヘイの状況は悪いです、天帝の塔の社守が心配しているほどでした」
「シンサー国には第二首都があるのか。王族が管理しているのか?」
アスターが興味をそそられたようだ。
「王弟が治めている土地です。首都からは山脈を超えた先でして、砂漠の先にある場所で、過去に指導者の目が届かずに賊が跋扈していたのを整定したのがはじまりで」
ファロが眠すぎて呂律がまわらくなっているのに気付いたアスターが、席を立ってくれた。
「よく休んでくれ。報告をありがとう」
「うん……」
はいと返事をするはずが、声が出なかった。今すぐにも休みたい。移動にも力を使うし、緊張もした一日だった。本当であれば、王女の行方を捜すための仕込みもしたかったが、社にも寄れていない。
「大丈夫か、段差があるぞ」
いつの間にか、アスター大将が横にいて、腕を支えてくれていた。
「ん? は、段……」
段だ、段を上がらなければならない。
「そうだ、無理のし過ぎだぞ。我々も人のことは言えないがな」
アスターも顔を背けながら欠伸をした。
段を上がると少し意識が戻ってきた。急速に恥ずかしさが込み上げてくる。天帝の塔でもこんな失敗はしない。おいしいご飯の威力たるや、あなどれない。
ファロは目をこじ開けると、アスターに頷きかけた。
「大丈夫です、すみません」
「ならいいが、気を付けて。……あ、ミハイル、また応接室で眠るのか、個室に行かないと」
応接室の前だった。ミハイル参謀長は、ソファに寝転がって寝息を立てていた。アスターが入っていき、たたき起こされている。
「おい、いいかげんにしろ。ここじゃ休めないだろう」
お兄さんか、お母さんのようだ。
「いやいいよ、ここでぇ。もう無理、うごけないってば」
初夏とは言え、夜は冷える。背後でのやりとりを聞きながら、ファロは自室を目指して歩いていた。風呂に入りたいが、すぐに眠りたい。
自室にたどり着くと、ファロは浴室に飛び込んで水で体を清めた。目が覚めたので、きちんとお祈りをする。
祈りが終わると、ようやく寝床に入った。




